実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第704回】女もつらいよの巻(『家売るオンナの逆襲』第7話)


左はテレビ朝日の貴島彩理プロデューサー。『オトナ高校』や『おっさんずラブ』といった話題作の仕掛け人。現在は金曜ナイトドラマ『私のおじさん』を手がける。右は日本テレビの小田玲奈プロデューサー。言わずと知れた『家売るオンナ』シリーズの生みの親。



 その『私のおじさん』は、バラエティを作っているテレビ制作会社のお話で、新人ADの岡田結実が主人公で、性格は悪いけど才能はあるディレクターを城田優が演じている。で、ごくごく一部の登場人物(岡田結実と城田優だけだったかな)に見える、不思議な「妖精のおじさん」が遠藤憲一。という説明で合ってるよね。わりとボーッと観ていてすみません。しかしボーッと観ていたら、第6話(2019年2月22日放送)に浦井健治が出てきて城田優と親しげに話し始めたので思わず正座した。





 浦井君は、城田優の才能を見込んで、もっと大きな舞台で活躍させようとヘッドハンティングする役である。なんかメディア界の寵児というか仕掛け人のような人。



 城田優と浦井健治の共演って、別に騒ぐほどのことはなくて、たとえば舞台では昨年も、福田雄一が演出を手がけた昨年のミュージカル『ブロードウェイと銃弾』なんかがあった。でもこういうふうに、何も知らないところへ突然テレビでツーショットを見かけて、「うおおおっ」とかバカみたいに唸ってしまった。まあ私のノスタルジーなのだな。ミュージカルの6代目と7代目。この二人は黒木マリナ時代の地場衛で、テレビでは実写版セーラームーンが始まり、名古屋にはまだ愛知厚生年金会館というちょうどよい感じの劇場があって、幼い娘と一緒に、テレビだミュージカルだとセーラームーン三昧だったころが懐かしく思いだされてくる。




 この『私のおじさん』の後に来る金曜ナイトドラマは、松岡昌宏主演『家政夫のミタゾノ』の第3シーズンだそうだ。『家政夫のミタゾノ』は最初のシーズンに沢井美優さんがちょっといい役をもらっていたんで、今度もなにか良いことがあるような気もする。



 『私のおじさん』のメイン監督は、MBSで北川景子主演のスペシャルドラマ『筆談ホステス』(2010年)や小池里奈が出ていた『オバチャン保険調査員 赤宮楓のマル秘事件簿』(2017年)などを演出し、その後テレビ朝日に移って昨年は丸山真哉と共に北川景子『指定弁護士』(2018年)を手がけた竹園元。というわけで、ようやく『指定弁護士』レビューを再開しようかなという気分になりつつありますが、でもまだ『家売るオンナの逆襲』が絶賛放映中だし、なんとなく中途半端な気分です。



 『家売るオンナの逆襲』第6話(2019年2月13日放送、日本テレビ、脚本:大石静/照明:安藤隆弘/撮影:二之宮行弘/演出:山田信義)は、まず武田航平と内山理名の夫婦が物件を探しに来る。この二人は仕事上も家庭生活の上でも良きパートナーで問題ないんだけど、男女の関係はもう終わっている。なので旦那の武田航平は外に恋人をつくっていて、それは妻の内山理名も公認している。武田航平は『仮面ライダーキバ』でもけっこうな色男で、髙橋ユウ(ネルケ版ミュージカル初代セーラージュピター)と何かと絡んでた。





 『仮面ライダーキバ』は2008年だからざっと10年前。髙橋ユウは当時17歳には見えないくらい大人びていたが、逆にその5年後ぐらいのセラミュの時は、20歳を越えていたのにバッチリ等身大のセーラージュピターに見えたなあ。一方『キバ』には小池里奈も出ていた。こっちは成長した。




 話を戻して、その武田航平は若い筧美和子と付き合っているんだが、でも奥さんの内山理名には恋人がいなくてちょっと寂しそう。それで北川景子はお相手を見つけてやる。それが橋爪淳の演じるロマンスグレー風の大学教授。実はこの橋爪淳の若い奥さんが筧美和子で、武田航平の恋愛相手なのだ。つまり、武田航平と内山理名、橋爪淳と筧美和子という二組の夫婦がいて、双方のパートナー同士が互いに恋愛中という四角関係。




 それで北川景子と松田翔太はこのそれぞれのカップルに同じ屋根の下の物件を紹介する。前に書いたように、今回のドラマは、北川景子と松田翔太の両方に物件の依頼人がいて、それが物語的にリンクしないとドラマが成立しないのでいろいろ大変である。



 しかしこの橋爪淳と筧美和子の夫婦は、とても長続きしそうにない。だって教え子の若さや子供っぽさに溺れていた大学教授の橋爪淳は、今ではもっと成熟した内山理名の魅力にそそられちゃっているわけだし、筧美和子は筧美和子で、オジサマの魅力だけではもの足りなくて若い武田航平と付き合い出したのである。すでに二人には、この先まだ夫婦を続けて行く必然性というか精神的パートナーシップらしきものが見えない。



 まあしかしこの回のポイントは、これまで三軒屋万智に留守堂謙治という「疑惑の男」が暗躍していたのに対して、今度は屋代課長に三郷楓(真飛聖)という「疑惑のオンナ」が登場して、三角関係が四角関係に発展するところにある。





 それを暗示するために不倫夫婦二組をゲストに出す、というアイデアが先行して、話そのものは後づけになっちゃったかもな、という気もする。
 そんなわけで第6話の感想はちょっとアレだったが、しかし続く第7話(2019年2月20日放送、日本テレビ、脚本:大石静/照明:大内一斎/撮影:藤井孝典/演出:猪又隆一)はなかなか気合いが入っていた。
 


 かつては屋代の部下だった朝倉(佐藤江梨子)は、いまはテーコー不動産企画開発課の屋台骨と目されるキャリアウーマン。



 インターネット推進部の宇佐見(佐津川愛美)は子育てと仕事の両立をめざすワーキングマザー。



この二人に伝説の家売るオンナ、三軒屋万智(北川景子)を加えた三人で、「輝く女性の活躍の場を広げる」ための「ウーマンプロジェクト」なる企画チームが組まれる。あと雑用係の庭野(工藤阿須加)もついている。




 だけど、子供は作らず仕事に邁進するサトエリと、何かというと子育ての大変さを強調し、会議が始まったばかりでも保育園にお迎の時間だからとさっさと帰る佐津川愛美はハナからウマが合わない。そんな二人がたまたま同じ物件をめぐってかち合う。



 サトエリは馴染みの鍼灸師の医院に近くて広々暮らせるところはないかと北川景子に相談し、佐津川愛美は保育園が近くて子供が騒いでも苦情をいわれないような家が欲しいと松田翔太に依頼していた。そして二人が辿り着いたのは同じ物件。



 意地の張り合いで互いに一歩も譲らず、なぜか北川景子と松田翔太がボウリングで勝負して、勝った方の顧客が購入権を得ることになったのだ。このへん観ていないと何だか分けがわからないだろうが、まあ観ていても分からない。



 とにかく二転三転の結果、物件購入の権利はサトエリに行く。北川景子と松田翔太は健闘を讚えあって握手するが、それでも佐津川愛美は納得いかず(まあ当然だ。ボウリングで決着なんて)ダダをこねる。そこへ北川景子が喝を入れる。




万 智「あなたは、育児を持ち出せば、周りがひれ伏すと思っていますね?」



サ キ「仕事しかしてない三軒家さんには、育児と仕事の両立が、どれだけ大変か分からないのよ」



万 智「両立は難しいです。ただ、本気で両立しようと思うのなら、やり方はあります」



万 智「あなたは16時に退社することが分かっていながら、30分で終わるはずのない会議を自ら15時半に設定し、中座しました」



サ キ「子供をほったらかせってこと? 親と子の信頼が壊れてもいいってこと?」



万 智「本気で両立しようと思うのなら、途中で抜け出さなくてもいいようにスケジューリングするか、事前に30分しかないことを説明しておかなければなりません」



万 智「本気で両立しようと思うのなら、自分の仕事量を把握して、どこまでできるかをコントロールしなければなりません!」




庭 野「まずいですよ。育児ハラスメントで訴えられますよ」



万 智「訴えたければ訴えればよい!」



 このドラマは原作なしのオリジナルで、実質的なクリエイターは日テレの小田玲奈プロデューサーである。脚本は大石静だが、基本設定、各エピソードの核となるプロットや物件のアイデアなどは、ほぼ小田プロデューサーがネタ出ししている。そんな小田プロデューサーの仕事ぶりが、今回のドラマの番宣をかねて、2019年1月14日に放送された『人生が変わる1分間の深イイ話』に「ヒット連発!敏腕ドラマプロデューサードタバタ生活」と題して紹介されていた。



 小田Pが既婚者で、すでにお子さんがひとりいるということは、インタビュー記事か何かで知っていたが、この『深イイ話』のなかでは、たまたま近くで収録中だった笑福亭鶴瓶(『帰ってきた家売るオンナ』にゲスト出演)を表敬訪問したときに「実はこのあいだ離婚していまはシングルマザー」と告白していた。返答に困る鶴瓶。



 なかなか大変そうだけど、でも(というのも変だけど)一戸建てに住んでいる。一作目の『家売るオンナ』のために不動産屋を取材している間に、口車に乗せられてローンを組んで家を買ってしまったそうである。仕事をしているときはその家にお母さんがやってきて、お子さんの面倒とかを見てもらっているんだそうである。



 借りれるものはお母さんの手を借りてもタフに頑張る、やっぱり子育てしながら仕事するってすごいなあ、とつくづく思う。つまり第7話のワーキングマザー設定は、プロデューサーの自分自身に対するエールでもある。でもそこで、まずワーキングマザーであることを安易に言い訳にしないよう、少々甘え気味の佐津川愛美に厳しい言葉で釘を刺すあたりが、この人の只者ではないところだ。とはいえ、その大変さは十分承知しているから、そこはちゃんと評価する。



万 智「庭野」
庭 野「はい!」



万 智「ウーマンプロジェクトとは何だ?」



庭 野「女性が活躍し、輝くためのプロジェクトです」



万 智「女性が輝くとは何だ!」



庭 野「そ……それは……女性が、 職場でも家庭でも生き生きするということです」



万 智「男性は輝こうが輝くまいが普通に仕事を続けられます」



万 智「一方、女性は輝くことを要求される。これはどういうことでしょう」



万 智「女性に仕事と家事を両立させるためのプロジェクトならば、そんなものはくたばってしまえばいいのです」



万 智「一度きりの人生、他人の担いだ神輿に乗る必要はありません!」



万 智「こちらのお宅は、あなたの旦那様の職場から徒歩3分の場所にあります」



万 智「旦那様の会社には、託児所が新設されます」



万 智「お子さんの送り迎えは 旦那様にお任せすればよいのです」



万 智「さらに、この家から旦那様の職場までは段差も少なく、バギーも楽々押してご通勤いただけます」



万 智「宇佐美サキ様」



万 智「二足のわらじを履くあなたが、専業主婦だったお母様と同じように、一人で家事から育児まで完璧にこなすことは、どだい無理な話です」



万 智「そもそも、共働き家庭である宇佐美家で、サキ様だけが 二足のわらじを履いていること自体、おかしな話なのです」



万 智「これからは男性も、仕事に家庭に輝けばよいのです」



万 智「サキさん、あなたは十分 輝いています」



サ キ「私、輝いてる?」



万 智「輝いています。これ以上輝けないほどに」



 小田プロデューサー自身は離婚しちゃっているらしいので、旦那様ではなくお母さんの手を借りている。まあそういう違いはあるが、二足のわらじを履きながら、プロデューサーとしてしっかり輝いている。ただの娯楽作品ではあっても、そういう自負が、三軒屋万智のセリフに力を与えているのだと思う。素晴らしい。ってことで、今回はここまで。