実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


最新記事〕 〔過去記事〕 〔サイト説明〕 〔管理人

【第698回】晦日だけど、裁判するわよ!の巻(北川景子『指定弁護士』)

 

 

武部直美・小林靖子・関俊彦・遊佐浩二・白倉伸一郎

 

 なんかもうお祭り状態の劇場版『仮面ライダー電王』じゃなくて『仮面ライダー 平成ジェネレーションズFOREVER』。初回上映まで佐藤建の出演を完全に伏せて(台本も二通り用意したらしい)してやったりの白倉伸一郎(笑)と、小林靖子先生。小林靖子さんは今度の劇場版ライダーにかかわっていたの? と思ったら、電王パートの「脚本監修」だったようだ。(この件に関して、まだ観ていない人にネタバレしてはいけないという声もあるが、公開翌日の『仮面ライダージオウ』放送中に流されたテレビCMで、すでに佐藤建の出演は明示されたので、当サイトでは問題ないと判断します。そもそもこれは、万難を排して初日に劇場に駆けつけた人だけのためのビッグサプライズだと思う。あっという間に拡散することは目に見えている。初日にさぼった人、残念ながら都合がつかなかった人は涙を飲むしかない。)

 


『仮面ライダー電王』をフィーチャーしたイベント“電王ナイト”が、12月27日に東京の新宿バルト9にて開催された。
『仮面ライダー平成ジェネレーションズ』シリーズの最新作である『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』が現在公開中。平成仮面ライダーの集大成と言える本作の中で、仮面ライダージオウ、仮面ライダービルドとともに、仮面ライダー電王は重要な役割を担っている。
 イベントには、怪人・イマジンの声を担当するモモタロス役・関俊彦さん、ウラタロス役・遊佐浩二さんに加えて、『仮面ライダー電王』テレビシリーズのメインライターを務め、『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』の電王出演パートで脚本監修を務めた小林靖子さん、本映画および『仮面ライダー電王』の番組プロデューサー白倉伸一郎さん、武部直美さんが登壇。11年前に放送され、今なお人気の作品や、本映画についてコメントした。(「電撃オンライン」2018年12月28日)


 『電王』も昔の作品になってしまったので少し解説しておくと、これは実写版セーラームーン全話の脚本を一人で書き切った小林靖子が、再び白倉伸一郎と組んだ、セーラームーンの姉妹編とも呼ぶべき作品である。実写版セーラームーンには小林靖子の多重人格テーマへの傾斜があらわれている。前半では亜美がダークマーキュリー化し、後半ではうさぎが、プリンセス・ムーンという「もうひとりの自分」に憑依される。そういう人格分裂を主人公がいかに克服するか、というテーマを、『仮面ライダー電王』はさらに「イマジンに憑依されて主人公の人格が七変化する」というポップなかたちで追求している。ついでに言えば、同じような姉妹編に『侍戦隊シンケンジャー』がある。こっちでは、やはり実写版で消化不良気味に終わった「チームリーダーのセーラーVが実は影武者」という設定が、ドラマ全体を通して最大限に活かされている。だから実写版セーラームーン、電王、シンケンジャーは三部作みたいに考えて良いと思う。
 そういうことを踏まえて言うと、アイデンティティを回復してあれから10年の歳月を経た良太郎が、またイマジンたちに支配され振り回される茶番はよろしくないし、といってイマジンに憑依されない電王もありえない、というこのあたりの「オトナになった良太郎」を「脚本監修」の小林靖子がどのように描き、それを佐藤建がどのように演じるのであろうか。私は最近、年々物語の破綻ぶりがきわだつ劇場版仮面ライダーを敬遠していましたが、今年は「行ってみようかな」とも思っている。

 

 

 閑話休題。『ドラマスペシャル 指定弁護士』(2018年9月23日放送、テレビ朝日・東映、脚本:櫻井武晴/照明:池本雄司/撮影:関照男/監督:竹園元)レビューの続きです。今年中に終わらせたかったんだけど、まあ無理だな。
 京都地検の橘検事(北村一輝)はへこんでいた。彼はもともと指定弁護士という制度にも、一ノ木唯(北川景子)個人にも否定的だった。しかし唯が骨のある正義派であることを知って、共に闘う気持ちを固めていった。ところがその矢先、事件の背後に途方もなく大きな権力が働いていることを知って、自分が怖じ気づいてしまい、その意気地なさから唯に見放されてしまったのである。

 

 

 そんなわけで橘は、以前、唯がメモ書きして押し付けてきたコースターをたよりに、彼女の行き付けの祗園のバー「よる屋」を捜しに来る。といっても、彼女がいたとして何を言いわけしようというのか。

 

 

 店の前で何となくためらっていたら、客を見送りながらマスターの筧田吾郎(松重豊)が登場。

 


吾 郎「あらいらっしゃい」
 橘 「えっ…?」
吾 郎「どうぞ」

╳    ╳    ╳


吾 郎「へえぇぇぇ。唯ちゃんとは どんな知り合い? 昔バカやって弁護してもらったとか?」
 橘 「(笑)まあそんなとこです」
吾 郎「そう。私もよ」
 橘 「えっ?」


吾 郎「じゃあ 犯罪者同士、乾杯」



 橘 「彼女、今夜来ますかね?」


吾 郎「きっと来ない」


 橘 「ああ、そうなんですか」


吾 郎「帰り方でわかる。またすぐ来るなとか、しばらく来ないなとか。……それに 今は忙しいでしょ」


 橘 「まあ。指定弁護士やってますからね」


吾 郎「だからかしら? おかしいのよあの子。このあいだ自分のことをね、正義の味方だなんて」


 橘 「正義の味方?」


吾 郎「私たち指定弁護士は必ず正義を味方するって」


 唯 (私たち指定弁護士は、必ず正義を味方するの!)


 橘 (俺たち検察官は必ず正義を味方する)


吾 郎「真実が隠されたままでいいはずないって」


 唯 (真実が隠されたままでいいはずないって!)


 橘 (だが真実が隠されたままでいいはずがない)


吾 郎「でね、このバッジの話もしたの」



吾 郎「弁護士バッジの意味、知ってる?」


 橘 「天秤は平等と公平。ヒマワリは自由と正義」
吾 郎「でしょ? 私もそう言ったのよ。ドラマでそう言ってたから。でも唯ちゃんは、違うって言うの」


 橘 「違う?」


吾 郎「うん。あのね この天秤はね、え〜」


吾 郎「……何とかっていう神話に出てくる、真実の羽を乗せる秤りなんだって」


 橘 「真実の羽……」

 


 古代エジプトの『死者の書』に登場する女神マアトは、地上を真実の光で照らす太陽神ラーの娘で、頭にダチョウの羽を刺している。この羽は「真実の羽」と呼ばれる。人は死ぬと、自分の心臓と、この「真実の羽」を天秤にかけられる。心正しく生きた者の心臓は羽よりも軽いが、悪人の心臓は重く傾き、怪物に食われて死後の楽園へ転生できなくなる。紀元前30年にエジプトがローマ帝国の属州になると、この女神はローマ神話のユースティティアと同一視されるようになったと言われる。ユースティティア、英語で言うと正義の女神ジャスティス、北川さんも第2シーズンに出ていたドラマ『HERO』で裁判所のエントランスのところにあった、目隠しをして右手に剣、左手に天秤を持っている女神像、あれね。

 


吾 郎「ひまわりは太陽に向かって咲く花。だから弁護士バッジの本当の意味は、真実に光を当てる」


 橘 「なるほど。真実に光を当てる、か」


吾 郎「だから弁護士は正義の味方なんだって」


 唯 (真実。真実が知りたい)


吾 郎「あら? あなたのバッジもお花?」


 橘 「ああ、菊の花です。でも夏の激しい日差しと、秋の冷たい霜にも見える」


吾 郎「どんな意味があるの?」


 橘 「激しい日差しと冷たい霜。そんな厳しい刑罰を人に求める仕事だから、誰よりも自らに厳しくなければならない」


吾 郎「へえ〜。じゃあ あなたも正義の味方じゃないの」


 橘 「えっ?」

 


 北村一輝と松重豊なんて、ヤクザもののVシネで何度も共演作がありそうだけど、意外と少ない。調べた限りでも、2003年の映画『Rodeo Drive ロデオドライブ』(2003年)があるくらいだ。北村さんがヤク中のチンピラで主演、松重さんが借金取りという。でも観ていないのでどういう話か分からない。

 

 

 それから同じ2003年に放送されたTBSドラマ『ひと夏のパパへ』では、母子家庭に育った女子高生が上戸彩で、母の死後に正体が判明した実の父親を北村一輝が演じていた。松重豊は北村一輝のご近所さんで、上戸彩がお金のために働くショーパブの常連ということだけれど、これも観ていないのでよく分からないや。上戸彩の友人役で沢尻エリカも出ているらしい。

 

 

 私が調べて見つけたのはこれだけ。ほかにもありそうなんだけどなあ。ほかにご存知の方はぜひコメント欄までお願いします。
 話を戻す。唯と同じように、吾郎のところで飲んでいるうちに自分の意志を固めた橘検事は、翌日、特別刑事部長の白井(相島一之)のところに戻って意思表示する。そんなことしなくてもいいのに。

 


 橘 「部長はご存じだったんですね。大阪地検特捜部が、田金を不起訴にした理由を。だからこそ、真実を隠そうとした」


白 井「公にする必要のない真実だからだ」


 橘 「検察官として、真実を公にしたいと思わないんですか?」
白 井「検察が負ける真実なんて真実じゃない」


 橘 「真実はひとつです」


白 井「検察が傷つく真実なんて真実じゃない!」

╳    ╳    ╳




 橘 「ここで何してる?」


 唯 「新しい検察官をつけてもらおうと思って。あなたじゃない検察官をね」
 橘 「真実を公にする裁判する気あるか?」


 唯 「えっ?」
 橘 「真実を公にする覚悟はあるのか、って聞いてるんだ」
 唯 「言ったはずよ。私は真実が知りたいって」


 橘 「指定弁護士ってのは被疑者を起訴する弁護士だ。だから俺はこう思ってる。指定弁護士は 弁護士検事」
 唯 「弁護士検事…?」


 橘 「弁護士」


 橘 「検事。俺たちは 2人で指定弁護士だ」


 橘 「いいな?」

 


 こうして橘は唯に事実を告げる。田金はただ単に私利私欲だけのために、自分が名誉顧問を務める社会福祉法人を利用したわけではない。なぜなら法人に支出された4千万円×5年、トータル2億円ほどの補助金の出所は「内閣官房機密費」という、言わば「国の裏金」だからである。田金はその事実をカムフラージュするために、法人をトンネルに使ったようなのだ。だとしたら、その金は最終的にどこへ流れているのか? 
 この4千万円が支出されていた期間、田金は法務大臣を務めていた。そしてその間に我が国では新たに裁判員制度が実施されるようになった。橘と唯はその事実に目をつける。

 


 唯 「同じ年の額が、1円の単位まで一致してる?」


 橘 「つまり辰波福祉会に出された補助金は、国交省ではなく、内閣官房機密費から出てた」


 唯 「そんな……なんで 国はそんな意味不明なことを?」


 橘 「その理由がこれだ」


 唯 「京都地検の捜査関係費?」


 橘 「俺たち検察官が、事件の捜査に使う費用だ」


 唯 「京都地裁の第二調達費って?」


 橘 「2010年以降、新たに必要となった備品購入費や人件費だ」


 橘 「2010年以降、新たに……」

╳    ╳    ╳


 唯 「国有地の払い下げのあった2010年って、田金が法務大臣だった時ですよね?」



箭 内「田金は裁判員制度が始まった時の法務大臣だ」


╳    ╳    ╳


 唯 「だから……だから 2010年!」


 橘 「これは単純な贈収賄事件じゃない」


 橘 「田金の秘書の死の真相も、きっとそこにある」


 唯 「確かにこれは、誰も望まぬ真実ね」


 橘 「どうする? 引き返すか?」


 唯 「どうやって?」


 唯 「私は事務所も辞め、証人にも裏切られ、夫まで敵に回った」


 唯 「帰る場所なんかない。そして、証拠がそろった」


 唯 「さあ、裁判するわよ!」

 

 

  我々の世界で、日本が裁判員裁判を実施したのが2009年の8月。日本は鳩山由紀夫(2009年9月)→菅直人(2010年6月)→野田佳彦(2011年8月〜2012年12月)という時代であったけど、このドラマはたぶん、民主党政権が誕生しなかったパラレルワールドが舞台で、石橋蓮司は保守与党の法務大臣だった、という設定であろう。ともかくこうして、いよいよ法廷で戦いの火ぶたが切って落とされる。
 というところで本年はこれまで。新年のご挨拶は2日くらいにいたしますか。それではみなさま良いお年を。