実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第695回】弁護士はBARにいるの巻(北川景子『指定弁護士』)


 紅白歌合戦が年々つまらなくなっていく。「紅白なんて観なくても年は越せるよ」という人も多いだろうが、私は昭和の人間なので、なんとかもうちょっと紅白に面白くなって欲しくて、いろいろ考えている。考えてどうなるものでもないが。

 

 

 私の希望の星はPerfumeです。紅白の常連となってはや10年、年越しカウントダウンライブをしなくなっていたPerfumeが、今年は9月末に「横浜アリーナでファンクラブ限定の大晦日カウントダウンライブやります」のアナウンスを出した。もちろん紅白の出場歌手が発表されるよりもだいぶ前だ。だから私は、ここに込められた彼女たちのメッセージは、(1)「今年は紅白に出られなくてもいいです(辞退します)」(2)「今年は横浜アリーナのカウントダウンライブ会場からの中継です。NHKさんにはある程度事前相談済みです」のどちらかと思い、まあPerfumeのことだから(2)だろうな、と思っていた。で結局、出場歌手リストの中に名前があったので、やれやれと胸をなで下ろしている。

 

 

 これまでPerfumeが紅白で見せたパフォーマンスは一貫して、リアルとバーチャルの融合というか侵食というか撹乱というか、そういうことをテーマとしていた。初出場となった2008年の第59回紅白歌合戦では「ポリリズム」の2コーラス目を口パクじゃなくナマ歌で歌っていた。2012年の第63回では背面に映し出された2次元クローンと一緒に「Spring of Life」を歌った。2014年の第65回で「Cling Cling」をやったときには、たくさんの提灯をドローンで飛ばした。でも我々テレビ視聴者にはそれが(いつものように)プロジェクションマッピングとかCG加工のたぐいに見えたので、最後に三人が提灯をつかんだときにはマジでびっくりした。昨年は渋谷のビルの屋上で、「TOKYO GIRL」をMVと連動したかたちで披露。寒そうなビルの屋上はリアルなんだろうけど、その他ライティングはどこまでが現実でどこまでがバーチャルなんだか、詮索する気にもなれない素敵な仕上がりであった。私はもう「パフューム」というオリンピック種目があっても良いんじゃないかと思った。それだったら、シンクロナイズドスイミングやフィギュアスケートを観るのが苦手な私でも夢中になれる。

 

 

 いやすみません。そういうわけで、今年のPerfumeは、横浜アリーナのカウントダウンライブというリアル空間から、NHKホールを経由して、どんなふうに加工された映像をテレビ視聴者に届けてくれるのだろうか、とっても楽しみです。『チコちゃんに叱られる!』のチコちゃんをライブ中継でどんなふうに表現するかというテーマとあわせて、今年の紅白で一番期待したい技術ポイントである。

 

 

 あとは2009年から2014年にかけて水樹奈々が連続出場して伐り拓いたアニソン枠の復興、AKB勢を規模縮小してもうちょっと色んなサブカル系を入れることだと思うんだけど、今年はクールジャパン枠でAqoursやミュージカル刀剣乱舞が出るそうなので、そこがどういう反響を呼ぶかにかかっている。ただ、なんか一般の方々にドン引きされそうな気もする。

 

 

 さて『ドラマスペシャル 指定弁護士』続きです。
 京都市内の国有地が、老人ホーム建設予定地として不当に安い値段で払い下げられた。除染が必要な土地で、そのぶんの値引きだというが、ホームを運営する社会福祉法人の名誉顧問に、地元出身の代議士、田金(石橋蓮司)の名前があることから、田金が見返りを受け取って便宜をはかったのではないかとの疑惑が持ち上がる。ところが調査に動いた大阪地検特捜部は(京都地検には特捜部がないため、こういう大きな事件の際には大阪が動くという)疑惑の証拠をつかみながら途中で捜査を中断、なぜかあっさり立件を見送る。そのため、一般市民によって構成される検察審議会は強制起訴を動議する。しかし、田金を告発する指定弁護士を引き受けたのがの一ツ木唯(北川景子)の目の前で、田金の秘書、斎藤(伊東孝明)がマンションから身を投げてしまった。
 大事な証人を失った唯だが、斎藤の妻、里美(真飛聖)から重要な証言を聞き出すことができた。

 


里 美「夫は、辰波の献金を記載する時『毒まんじゅうを食べる』と言ってました」
 唯 「毒まんじゅう?」
里 美「日本を変えるために食べるんだって……」


 唯 「どういう意味です?」

 


  一方、橘検事は同僚のチューイチさんこと安倍忠一(生瀬勝久)に密かな頼みごとをする。上司の白井(相島一之)が何か大きな隠しごとをしているようだが、それは何なのか。情報通で信頼もできるチューイチさんがすぐさま持ってきたのはとんでもない資料だった。
 社会福祉法人辰巳福祉会が、土地の格安払い下げとは別に、2010年から2014年まで毎年およそ4千万円ずつ、除染作業の補助金として支給されていた金の出どころが、なんと「内閣官房機密費」だというのだ。

 


 橘 「これ…… 内閣官房機密費?」
忠 一「その使い道です」
 橘 「こんなもの どうやって」


忠 一「法務省に出向していた時の知り合いが、 いま内閣の総務官室にいまして」


 橘 「機密費って領収書のいらない予算だろ?」
忠 一「しかし 何かあった時には、例えば地検特捜部なんかに照会されることがありますから」
 橘 「はぁ、なるほど。だからこんな記録があるのか」


忠 一「その 2010年分の記録です。まあ 使い道は黒塗りされていてわかりませんが、合計12億円以上が細かく支出されているのはおわかりですね?」


 橘 「2010年……」


忠 一「で これが 2011年。12年、13年、14年」
 橘 「ちょっと待ってくれ」


忠 一「以上、2010年から5年分」


 橘 「おい ちょ、ちょっと待ってくれ、これ一体なんなんだ?」

 


 面白いのは、前にも書いたように(ここ)、昨年のWOWOWドラマ『石つぶて』で、官房機密費10億円を私的に流用した外務省職員を演じていたのが北村一輝だった。その北村一輝の愛人役が、今回このドラマで自殺した秘書の奥さんを演じている真飛聖で、北村一輝はほかにも、エロいホステスの小松彩夏を枕接待に使ったあと自分もこまっちゃんと寝たり(第1話)やりたい放題だった。その北村一輝が、今回は北川景子と組んで、官房機密費の流れを追う検察官を演じている。今回はマジメな役なので北川さんとは寝ない。

 

 

 

 とにかく出てきたのは「内閣官房機密費」である。田金議員の息のかかった社会福祉法人に振り込まれた除染費用と1円単位まで正確に一致する金額が、2010年から5年間、内閣防衛機密費から支出されている。もちろん名目については黒塗りになっている。どういうことか。ていうかヤクザの資金源よりもヤバいネタに辿り着いてしまった。森友問題のパロディっぽく始まったんだけど、話はぜんぜん違う方へ転がっていきます。

 


 橘 「な、なんだこれ……どういう事だ?」


忠 一「これを隠したかったんでしょうね、特捜部は」


 橘 「だから田金を起訴しなかった」


忠 一「つまりこれ以上進むと、この検察にあなたの居場所はなくなるかもしれませんよ」


忠 一「橘検事、どうします? 引き返します?それともさらに危ない橋を渡ります?」


 このまま行けば、国家機密に触れることになる。さすがの橘も二の足を踏まざるを得ない。夜、いつものように西院春日神社境内の焼鳥屋。いつの間にか常連みたいになっている。たぶん撮影はまとめてやったんだろうけど。
 亡くなった秘書の奥さんから、かなり具体的な供述を引き出せた、という知らせにもかかわらず、唯のサポート役を勤める相方の橘検事(北村一輝)はいまいちノリが悪くて、浮かない顔である。
 橘は、事件の全貌が漠然と見えてきた感じ。本当だとすれば、とんでもない大魚を釣り上げてしまったことになる。どうする? まずは事実を明確にすること、確証を得ることだ。

 


 橘 「毒まんじゅう?」
 唯 「毒まんじゅうを食うって、政界では賄賂を受け取るって意味よね?」


 橘 「または 悪い仲間に入ること」


 橘 「内閣、国交省、地検特捜部が仲間、はぁ……」


 橘 「国有地の払い下げ、2010年だったよな?」


 唯 「そう。田金が法務大臣だった頃」


 橘 「法務大臣……法務大臣」


 唯 「何?」



 唯 「ご飯代なんかいいから、何か分かったなら教えてよ」
 橘 「俺は検察官だ。 そうはいかん」


 唯 「あぁあぁ、自分の分だけは出すんでしたね。そんなことより何か分かったなら教えてよ」


 橘 「まだ 推理段階だ」
 唯 「じゃあ 教えてよ。二人で考えたほうが効率だって」


 橘 「もう少し待ってくれ。 な?」




 唯 「ここにいるから必ず来て」


 唯 「朝までいるから。いいわね?」


 


 唯がコースターに書いたのは、筧田吾郎(松重豊)がマスターを務める祗園のバー「よる屋」の連絡先だった。で「朝までいるから」の言葉どおり、夜通し飲みながら「よる屋』で橘を待つ唯。ドラマとはいえ、強いなあ。だらだら飲み続けてクダまいていつまでも帰らない客なんて最悪だけど、北川景子だったら嬉しいよね。

 


吾 郎「って もう朝なんだけど、帰ってくんない?」


 唯 「ていうか ずうっと客来なかったけど、ここ大丈夫?」
吾 郎「あんたこそ 大丈夫?事務所クビになって……」


 唯 「自分からやめたの!」


吾 郎「弁護士やめて指定弁護士になるの?」


 唯 「弁護士やめてないし、指定弁護士って職業はないの。弁護士の仕事の一つが指定弁護士」


吾 郎「どう違うのよ」


 唯 「弁護士は被告人の罪を軽くするため、有利な情報を集める」


 唯 「指定弁護士は被告人を有罪にするため、不利な情報を集める」


吾 郎「正反対じゃないの」


 唯 「ギャップがすごくて溺れそうよ」


吾 郎「助けてくれる人は?味方になってくれる人」


 唯 「その たった一人の味方が今夜来なかったから」


 唯 「あれ? そうよ」


 唯 「なんで私、こんなに味方が少ないの?」


 唯 「はあ〜あ」

 


 なぜこんな大きな事件を自分一人で扱わなくちゃいけないんだ。ほかの指定弁護士はどうなっている。唯はようやく気づく。現実の世界では、小沢一郎が政治資金規正法違反で強制起訴されたときは三名が指定弁護士に選任されていたし、現在、福島第一原発事故の責任をめぐって、当時の東京電力の旧経営陣が強制起訴されている件では、当初は三名選任されて、その後追されて、現在は確か五名の指定弁護士がいる。そう考えると、これだけの案件、を当初から北川景子一人にゆだねるということ自体、あり得ないと言えなくもない。ま、ドラマだから。

 

 

 で、そのことの苦情とお願いを言うために、唯は先輩で京都弁護士会事務局の神林京子(羽田美智子)と落ち合う。でも明け方まで飲んだ後である。

 


京 子「ごめん 唯ちゃん。 待った?」


京 子「なに、 酒くさっ! 何時まで飲んでたの?」


 唯 「そんな事より、これだけ話題の事件で指定弁護士が私一人ってことないですよね?」


京 子「やだ。 気づいちゃった?」
 唯 「もう、他の指定弁護士早く決めてください!」


京 子「やだ 声が大きい。裁判所からもそう言われてるんだけど、やりたい人がいないの」
 唯 「えっ?」


京 子「だって 田金って今を時めく極悪人じゃない」


 唯 「ならやりたい弁護士いるんじゃないですか?」


京 子「勝てる裁判ならね。でも、もし田金が無罪になったら指定弁護士はどうなると思う?」


 唯 「まさか、 袋叩き?」


京 子「やだ 気づいちゃった?」


 唯 「ちょっと! だったらなおさら仲間が必要です」


 唯 「そうだ、京子先輩一緒にやりましょうよ」


京 子「私? 私は この事務局の弁護士よ」


 唯 「事務局の弁護士が指定弁護士しちゃいけないルールなんてあるんですか?」


京 子「やだ、 気づいちゃった?」


 唯 「もう、それいいよ!とにかくやりましょう。」


京 子「いやよ! だって田金の秘書が自殺したり、もうすぐ選挙があったり、とにかく 世間のプレッシャーがすごいじゃない?」


京 子「そんななか、負ける裁判をする弁護士なんて尋常じゃない」


 唯 「コラ! そんな仕事を私に振っといて、自分はそこから逃げるんですか?」


京 子「唯ちゃんって、昔から正論しか言わないよね」


京 子「司法修習の時も検察系の科目、成績良かったし。弁護士より検察官が向いてたんじゃない?」


 唯 「はぐらかして逃げないでください。一緒に指定弁護士やってください。いいですね?」


京 子「勝てる要素があるならやってもいいけど?」


 唯 「勝てる要素……」


 唯 「自殺した秘書の証言はどうです?辰波からの献金は賄賂だったとか、『毒まんじゅうを食べる』と言ってたとか」


京 子「なにそれ!ほぼ自白じゃない!」


 唯 「亡くなった秘書が奥さんに言ってたんです」


京 子「その奥さん法廷に立たすこと、できる?」
 唯 「できると思いますけど」


京 子「思いますじゃなくて言質を取ってきて」


 唯 「そしたら 先輩一緒にやってくれます?」


京 子「やる。 だってこの裁判に勝てたらすごいもん。のちのち弁護士会で偉くなれるかもしれない」


 唯 「わかりました。奥さんに約束してもらいます」

 


 言っていることは相当エグい京子。まあ弁護士ってこういう人が多い(個人の感想です)。自分は常に安全圏にいるというか。橋下徹がテレビ番組を通じて、光市母子殺害事件弁護団への懲戒請求を呼びかけたことがあった。けっこうな数の視聴者がこれに応じが、結局、橋下自身は懲戒請求を行なわなかった。言っていることが正しかどうか以前に、メディアで大衆を煽って行動を促して、でも自分は行動しません、なんて人は普通に信じられませんよね。

 

 

 ただドラマ的には、この京子先輩はあくまでちゃっかり者って感じでさほど悪印象を与えない。たぶん羽田美智子のキャラクターのせいだろう。私は奧山和由版の『RAMPO』(1993年)を観て、羽田美智子のあまりのエロさにクラクラした世代なので、この人がこんなに息の長い幅広い活躍をするとは想像していなかった。チームオクヤマ解散とともに消えちゃうと思っていたのだ。すみませんでした。えーと、今回はこのくらいで。

 

映画『Paradise Kiss』(2011)より早坂紫(北川景子)と母(羽田美智子)