実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第681回】岬マリは何を賭けたか?<その7>(北川景子『探偵はBARにいる3』)

1. ANZAの話



 紹介しそびれていたけど、ネットで拾った記事。2018年6月20日づけの『東京中日スポーツ』のトップにANZAさんが登場したという話です。


 日本人の父と南アフリカ人の母の間に生まれたANZAは一九九二年、NHK「中学生日記」でテレビデビュー。テレビ朝日のバラエティー番組でアイドルユニット「桜っ子クラブさくら組」のメンバーになり、九三年には作品名も知らずに参加したというオーディションで、初代セーラームーンに選ばれた。
 「『月に代わっておしおきよ!』って言わされたんですが『セーラームーン』を知らないから、主役に決まっても『は?』。私の人生、何も聞かされず決まることがすごい多い。後から『これは、どえらいものが決まってしまったぞ』と」


 まったく知らなくても無理はない。セーラームーンのアニメは1992年の春に始まって、ミュージカルはその翌年の夏からである。
 ついでにいうと、バンダイ(ビジュアル)ミュージカルオフィスが正式に設立され、その第1回作品としてSMAP主演、TOKIO共演の『バンダイスーパーミュージカル 聖闘士星矢』が上演されたのが1991年。




 その次が1993年のセラミュであり、この流れが次第に「2.5次元ミュージカル」という新しいジャンルへと進化していく。アンザの「これは、どえらいものが決まってしまったぞ」という言葉はそういう歴史的観点から味わって欲しい。
 こうして大山アンザは1993年から1998年までの5年間、382公演にわたって初代うさぎ/セーラームーンを務め、卒業後はロック・ボーカリストに転身する。


 九八年、ANZAに芸名を変えてソロデビュー。二〇〇〇年にバンドを結成。デビュー後すぐに米ニューヨークに“飛び込み営業”をかけ、ツアーを実現させた。
 海外では、どこへ行ってもセーラームーンのコスプレをした人たちが集まってきた。「どこかで『初代ムーンのバンドが来る』って聞き付けて来るんですよ。もう、びっくり。でも気づきました。アニメファンとロックファンが一緒になって盛り上がれば日本のエンターテインメントはもっと強くなるって」


 アンザのバンド「HEAD PHONES PRESIDENT」(ヘッドフォンズプレジデント)って、けっこうハードなメタル系の音を出すんだけど、そういうバンドのライブに「セーラームーンのコスプレをした人たち」が集まってくる、というカオスっぷりが楽しい。とにかくセーラームーンというのは、国境を越えた、世代の共通言語なのだ。



 そして先週、今度は『中日新聞』日曜版の「家族のこと話そう」というコーナーに登場(2018年8月19日)。愛知県育ちの『中学生日記』出身なので、中日新聞社はわりとANZAに好意的なのだろうか。それともANZAファンの記者がいるのかな。でも今回のインタビューは、愛知県にあんまり良い想い出がない、というような話で(笑)。


 母は南アフリカ共和国の出身。父は長崎出身で遠洋漁業の漁師でした。父が南アフリカに寄港したときに出会ったそうです。私はケープタウンで生まれましたが、すぐに長崎で暮らすようになりました。ただ父が不在がちで、幼いころは日本語があまり話せず、外見のこともあって、よくいじめられました。
 特にひどかったのは、中学校一年で愛知県東海市に転校したときです。その中学校では校則で男子は丸刈り、女子はおかっぱ。私は母の勧めでモデルの仕事をしていたので、中学校で一人だけ髪が長く、先輩から目をつけられました。殴られたり、無視されたり、髪の毛を切られたりしたこともあります。その先輩とけんかして勝つと、ようやくいじめはなくなりました。


 そっ、そうか。で、この南ア出身のお母さんというのがすごい。アンザは最初はイジメのことを親に隠していたんだけど、オカッパ頭でないことが原因と知って、校則を変えさせてしまう。たぶん学校とかも、ふつうの親のクレームだったら相手にしないけど、なんか迫力あるガイジンの保護者が文句を言ってきたというので、つい腰が退けたのではないか(推定)。


 心配を掛けたくなくて母には言えませんでした。登校するふりをして図書館に行ったり、けがの痕も転んだと言ったり。髪の毛は「前からこの長さ」とごまかしました。
 でも、母はさすがにおかしいと感じ、私の同級生に聞いたようです。そして、そんな校則はおかしいと学校や教育委員会に抗議に行き、髪形の規定はなくなりました。後になって友達から「アンザのママのおかげなんだよ」と聞きました。
 しかし、母は何も言いませんでした。聞いたら「わざわざ言うことじゃないわよ」。母は強いと感じました。うまくない日本語で学校に談判に行くのですから。


 でもその名古屋の中学生時代に芸能事務所の人に誘われ『中学生日記』に出て、高校からは東京に出て、桜っ子クラブからセーラームーン、歌手という道に入ったわけだ。どちらかというと俳優やCMモデルとかを希望していた母親と激しく衝突した時期もあったけど、いまはもう仲良しです、という記事でした。



2. 里帆の話



 安座間美優の出ている『健康で文化的な最低限度の生活』(吉岡里帆主演、2018年7月、フジ、火曜9時)の視聴率が低くて話題になっている。今んところ平均視聴率5.7%だけど、もっと下がりそうだなこれ。
 同じような条件のドラマを、うちのブログでレビューしたなかから探すと、泉里香の出ていた『海月姫』とか、泉里香の出ていた『大貧乏』がこれにあたる。泉里香って疫病神かよ。いやいや。


『大貧乏』2017年1月、フジ
 小雪主演、日曜9時、平均4.99%
『明日の約束』2017年10月、フジ
 井上真央主演、火曜9時、平均5.75%
『海月姫』2018年1月、フジ
 芳根京子主演、月曜9時、平均6.1%
『健康で文化的な最低限度の生活』2018年7月、フジ
 吉岡里帆主演、火曜9時、平均5.7%(前半)


 このように、フジテレビは夜9時代にちょいちょい低視聴率ドラマを出しちゃっている。当たり前だがこれは作品の面白さには大して関係ない。『海月姫』面白かったもんな。結局、高視聴率でつまらないドラマもあれば、低視聴率で面白いドラマもある。
 いやいや、主演の吉岡里帆さんが叩かれているので、あたりまえのことを書いてしまった。吉岡さん、いい主演女優だと思うけどなあ。華がないとか主役の器量ではないと言われているが、ルックスは可愛いくて華があるし、このドラマのカラーから考えて、求められる主役の器量とは、フルコースのメインディッシュたることではなく、幕の内弁当の白飯たることである。そういう主役の張り方は、たとえば石原さとみにはできない、この人の持ち味だと思うのだがどうかな。




 今シーズンはたまたま、この『健康で文化的な最低限度の生活』の直後の時間帯に放送されている、綾瀬はるかの『義母と娘のブルース』(TBS)がめちゃくちゃ好調で、これを「綾瀬はるかと吉岡里帆の格の違い」とか言う無責任な人もいるが、でも大丈夫。綾瀬はるかだって、2年前に同じTBSで放送していた『わたしを離さないで』(2016年)は6.8%で、同時期に同じ時間帯で放送されていたドラマのなかで最低の数字を出していた。2013年のNHK大河ドラマ『八重の桜』の視聴率は、大河ドラマ史上ワースト4だったし(全50回で平均視聴率14.6%、りっぱなもんじゃないですか)同じくNHKの放送90年大河ファンタジー『精霊の守り人』も、2016年の第1シーズン初回こそ2桁台をマークしたが、以降はズルズル下がりっぱなしで、今年の最終シーズン(サードシーズン)は平均視聴率6%。「爆死」と言われた。



 『精霊の守り人』なんて、なかなかの力作だったが、世の中そんなものなのだ。吉岡さんもめげずに芝居に集中してね。
 ちなみに「視聴率」の何たるかについては、【第123回】に詳しく書いたんだけど(ここ)これももう10年前の記事になったのでちょっと更新するか。ビデオリサーチの関東地区視聴率調査でいうと、当時はテレビ所有世帯がおよそ1700万世帯で、そこから600世帯がサンプルとして抽出されていた(2007年10月調べ)。で現在はどうか、といえば、関東地区のテレビ所有世帯はおよそ1800万世帯で、そこから900世帯がサンプルとして抽出されているという(2017年10月調べ)。要するに現在の調査世帯は約2万世帯に1世帯、全体の0.00005%以下という計算になる。だから視聴率調査のモニタになった人には滅多にあえないわけだが(ちなみに、モニタ世帯は毎月約40世帯ずつ交代し、2年間で全世帯が入れ替わるという)。とにかくこんなに少ないサンプルでは誤差も出る。標本誤差がどのような比率で現れるかについては、これまたビデオリサーチ社のサイトに資料が出ている。



 つまり現在のように、世帯数1800万でサンプル数900世帯という場合「視聴率5%という数字にはプラスマイナス1.5の誤差が95%の確率で見込まれる」そうです。分かりますか? もう一回言うよ。


 統計上の誤差を考慮に入れて正確に言えば、関東地区で「視聴率5%」と言う場合、「ほんとうの視聴率」は95%の確立で3.5%〜6.5%の間のどこかである。


 サンプル数が少なすぎるので、5.5%が4.8%に落ちたとか、4.8%が4.9%に上ったとかいっても、そんなちっちゃい変動は誤差の範囲内なので、リアルに視聴率が上ったか下がったかは95%の確立で保証できない。こんなものによくみんな振り回されるよね。
 しかしまあ、現実的には視聴率も必要だろう。M14さんが「プールに行く」という素晴らしいテコ入れ策を提案していたが、私もひとつ案を出そう。自転車だ。このドラマ、主人公の「頑張り」とか「ひた向きさ」の表現なのだろうが、自転車で全力疾走するシーンがよく出てくる。そこを改善して欲しい。



 具体的には吉岡さんの胸のボタンを、あとひとつ外させる。カメラはもっと寄って上からのぞき込むように。これで1%ぐらい上がると思うんだけど、どうかな。



 安座間美優のために観ているのに、安座間美優に一言も触れないのもどうかと思うので付け加える。このドラマ、ときどきミーティングをするんだけど、第2話ではホワイトボードには何も書かれず、書類を配付して会議している。それが第4話になるとホワイトボードに何か書いて議論している。



 さらに前回、第6話に至って、安座間さんが書記をつとめている。そうなのだ。安座間さんはテレビ朝日の『中居正広の身になる図書館』という番組で「美文字女王」に選ばれた人なんだから、書記として起用しない手はないのだ。後半は安座間さんの美文字もウリにして、盛り上げていって欲しい。


 

3. 景子の話


 さてマクラが長すぎてようやく本編ですまない。マリ(北川景子)は、いま北海道の黒社会でいちばん勢いある北城(リリー・フランキー)の愛人の座をゲットしたのに、なぜか北城の部下たちを血祭りに上げて、時価総額4億円の覚醒剤を横領する。その後始末をしがないススキノ探偵(大泉洋)に依頼するというのだから、とんでもない女だ。でも探偵は探偵で、過去の腐れ縁もあり、このとびっきり美人の依頼主を放っておけない。なんて甘い顔を見せているうちに、マリと懇ろになってしまったりして、あげく、北城の部下に捕らわれる。



北 城「うちのマリがたいへんお世話になっているそうで」



お れ「何のことだ」



北 城「マリから聞いてますよ」(殴る)



北 城「とっても可愛がっていただいてるって」



北 城「ほら、何すかこれは」



北 城「おい」



北 城「でもねアンタ」



北 城「他人のものを盗っちゃいけない」


 なんだよこのふざけたベッドイン写真は、とも思うが、なにせ直前のベッドシーン(?)がベッドシーンなので、こうならざるをえないだろう。



 口の中に銃を突っ込まれ、絶体絶命の探偵。そこへ相棒の高田(松田龍平)が飛び込んできて、大乱闘となる。後半のアクションの見せ場。 




 このアクションシーンは、前2作とはだいぶ違ったテイストで面白い。メイキングによると、乱闘の様子を実際よりもゆっくりした段取りで撮影して、あとでハイスピード再生で迫力を出す、というやり方なんだって。



 まあブログでレビューするような内容じゃない。アクションシーンは、実際にご覧になって楽しんでいただくことにして、飛ばします。
 ひとつふたつ、北川さんの表情を拾うだけしておこう。まず、探偵が拳銃を突きつけられて、やばい、と思った瞬間、泣きを入れて北城の注意を引きつけようとする芝居。



マ リ「ごめんなさい。私が馬鹿でした。こんな男に騙されて」


 悪女の猿芝居を演じつつ、時間稼ぎの意図を探偵にも伝えようとしているような、でも真意がどこにあるかは分からない。
 でそのあと、マリは北城から拳銃を奪って突きつけ、人質にとって探偵と高田と一緒に逃亡を企てる。

 



マ リ「全員並んで壁に両手をつけ。次は社長の脳みそ飛び散るよ。GO!」


 最後の「ゴー」は、実はこのあと、引き金を引くまでのカウントダウン「5、4、3、2、1」の「5」なんだが、何度観ても三軒屋万智の「GO!」に聞こえてしまう。




 このあと、北城を置き去りに、雪降るススキノの街中を逃亡する三人と、追跡する北城の部下たちの追いかけっこシーンが続く。これも省略。まだ観ていない人は『探偵はBARにいる3』DVDやブルーレイを注文しようね。走って、裏路地から雑居ビルに入って、非常階段を駆け登る。



 北城の手下はしつこく追って来る。ビルの屋上に追いつめられた三人だが、実は高田が機転を利かせて、腐れ縁のヤクザ幹部、相田(松重豊)にSOSの連絡をとっていた。
 最近勢力を伸ばしてきた北城を快く思わない相田はこっそり三人の手助けをする。雪かきか何かの柔らかい雪を荷台に積んだトラックを、ビルの下に用意する。三人は、その雪に向かってジャンプ。



高 田「探偵」



お れ「マリ、泳げるか?」



マ リ「はぁ?」



マ リ「はああ?」



高 田「はいせーの!」








お れ「はははは、高田君、やるじゃないの」



マ リ「相田さん、助かりました」



相 田「何の話だか分かんないな。おれたちゃドライブしていただけだ。そのへんで放っぽり出すぞ」



お れ「それでけっこう」




マ リ「あなたたち最高!」



 このシーン(1)「追いつめられた屋上の三人」(2)「飛び降りる三人」(3)「トラックの上の三人」という3つのショットの組み合わせになっているんだけど、実際の流れと撮影日の順番が逆になっていて、メイキングを観ていると面白い。



 まず最初に撮影されたのが(3)飛び降りた後の、トラックの上の三人。この映画の撮影は2017年2月12日から札幌で始まっているんだけど、その2日後の2月14日が松田龍平と北川景子の撮影初日で、2人にとってこの場面がファースト・カットとなった。



 トラックの荷台で、雪に埋もれて、寒いは寒いだろうけど、これはこれで楽しそう。




 2月14日ということで、現場では北川さんから皆にチョコの差し入れがあったらしい。



 次が3日後の2月17日で、これは(2)「飛び降りる三人」。グリーンバックの前で、トラックの荷台に落っこちてきて、ズボッと雪にはまるの撮影場面ですね。リアルに落下する感じを出すために、そこそこ高い場所からのダイブらしくて、実は高いところが苦手な北川さんがビビって、黒革の手袋に包まれた手で、大泉洋の手をぎゅっと握りしめている。






 本編では松田龍平の「せえの」というかけ声をかけているが、これは、ちょっと緊張している北川さんと飛び降りるタイミングを合わせるために、その場で決めたアドリブだという。



北 川「怖かったです」



北 川「もうやりたくないです」



北 川「一回で決まって良かったです」


 最後が2月22日。ススキノのビルの屋上に追いつめられた3人。松田龍平が、真下にトラックが待機しているのを見つける。



 ここで、前回は飛び降りるのを怖がっていた北川景子が、大泉洋と松田龍平と一緒に、屋上のへりのところに立ち上がる。



 雪も積もっているし滑りそうで怖い。監督の「カット!」の声がかかった後で、大泉洋が「どうして(北川さんまで)乗っちゃうの?」と言っているところを見ると、たぶん打合せでは、いちおう高所恐怖症の北川さんに気を遣って、そこまでギリギリの所に立たなくても良いことになっていたんじゃないかと思う。




 でもそこで、いざとなったらやっちゃうかどうかで、たぶん俳優に対する現場の評価が決まるんだろうな。で、いざとなったらやっちゃうのが北川景子で、大泉洋から「なんという女優魂」といくぶんオーバーな称賛を受けている。




北 川「あーがんばりました」



北 川「もう、いやです。ははは」



北 川「やっとこのシーン終わった。おつかれさまでした」


 まあ北川さんらしいエピソードじゃないでしょうか。じゃ今回はこのへんで。

4. (おまけ)美里の話


 もうひとつ、ぜんぜん関係ないけど、先週日曜の『サンデージャポン』(TBS系、2018年8月19日放送)で、宇垣美里アナが『美少女戦士セーラームーン』のコスプレで登場した、という話題で、すごく話題になって画像も出回っている。



 確かにかわいいんだけど、私、サンジャポはあんまり観ていないので、どういう文脈でこういうことになったのか、よく分からない。ただ、宇垣アナは1991年生まれだというから、リアルタイムで観ていたとしてアニメ後期の世代だ。もうちょっと後になると、実写版セーラームーン世代の人気女子アナも出てくるのかな、なんて思ったりして、ネットで拾った画像を上げてみた。では。