いよいよ公開が迫った劇場版『咲 -Saki- 阿知賀編 episode of side-A』だが、白糸台高校の真ん中、キャストが伏せられていた本編のラスボス(たぶん)にして前作のヒロイン宮永咲の姉、宮永照が、先日のテレビ版「特別編」に登場した。演じていたのは、なんと前作で咲を演じた浜辺美波であった。大久保聡美がセーラーコスモスを演じるようなもので、こういうサプライズはとてもありがたい。というわけで宮永照さん(浜辺美波)と宮永咲さん(浜辺美波)。
咲ちゃんに較べてお姉さんはキリッとしてますね。
私はいま色々と、観たくても観られない映画が溜まっていてストレス気味なんだが、これも劇場まで行けるかな。とにかく楽しみです。ちなみに、いまだに麻雀のルールは全く分かりません(威張るようなことではない)。
さて『帰ってきた家売るオンナ』の続き。いい齢してなぜか「住もう君」の着ぐるみバイトに応募してきた謎の男、一ノ瀬(笑福亭鶴瓶)。実は自分の気に入った物件を、他人の手に渡る前に押さえたいという目的があったらしい。そして四谷のメゾネットマンションこそ彼の求める理想の住居であった。
一ノ瀬「私は娘とここで暮らしたいんや!」
退職金プラス今の家を売り払った金で、このマンションをキャッシュで購入して娘と住みたいということらしい。前回はこのへんまででした。
万智と白洲は、売却物件の見積もりかねがね、詳しく事情を聞くために一ノ瀬宅へ。一ノ瀬はなぜ今まで「住もう君」をやっていたのか、そしてなぜこのメゾネットに目の色を変えたのかを語り出す。
白 洲「もう、お客ならお客って言ってよ」万 智「一ノ瀬さんはお宅をお持ちで、退職金もおありですが、住もう君のバイトをなさっている意味はなんですか」
一ノ瀬「さすが伝説の家売るオンナ、ええとこへ気づきますな。わしはねえ、あのテーコー不動産で、誰が一番優秀か、その情報を調べとったんですわ。それで、あの、着ぐるみのバイトに応募したんです」
一ノ瀬「私にあのメゾネットのマンション、売って下さい」
万 智「あちらで、お嬢様とお暮らしになりたいとのことでしたが、あの物件は二世帯住宅ではございません」
一ノ瀬「いや二世帯住宅でなかっていいんです。ええ、いや二世帯住宅やったらキッチリね、離れてるでしょう。それやったらちょっと淋しいがな。だから娘の家族は二階に住んで、私はアンタ、下に住みますねん。そしてねリビングそれから台所それから風呂は共有部分にしたらちょっと距離感あるでしょ。それがええんですわ」万 智「お嬢様はご一緒にお暮らしになることはご承知ですか?」一ノ瀬「いえ、知りません」
万 智「それはなぜですか?」一ノ瀬「なぜですかって……」
一ノ瀬「、いや、十九の時にね、チンピラみたいな男、連れてきてね、『結婚さしてくれ』言うから『アカン』て言うたら、家を出て行きよったんですわ。去年な、嫁はんの葬式の時に会うたけど口もきいてませんねん」
万 智「そうですか」
一ノ瀬「恩知らずで親不孝な娘ですけど、結婚十五年目にして子供が生まれたいうのを、風のたよりに聞きましたんや。せやからそれを機に勘当を解いてやろう思うてね」
一ノ瀬「蝶よ花よと大事に育てたのに、婿はんに甲斐性ないから、いまだにボロボロのアパートに住んでる。それが不憫でね。最後の親の務めとして娘に家を与えたろう思うて」
なるほどね。意に染まない結婚をしたので追い出した娘夫婦と、孫の誕生を機に和解したい。それだけなら虫の良い話だけれど、きれいなマンションひとつぽんと買ってもらえるとなると、まあ娘夫婦も受け容れるかも知れない。でもこれはドラマである。そううまくは行かない。そううまくは行かないことが分かっていながら物件を売ることは、万智にはできない。
万 智「ざっと計算しますと、このお宅は年数が経っていて、価値はありません」
万 智「しかし土地はおよそ六千万、退職金及び貯金が四千万、あわせて一億。四谷のメゾネットマンションは七千五百万ですので、余裕でお買いになることができます」
一ノ瀬「おう、いや良かった。それやったら娘喜びますわ。さっそくね、この家売ってマンションをキャッシュで買いましょか。手続きしてくださいますか」
一ノ瀬「三軒家さん、聞いたはります?」万 智「あなたにあの家は売りません」
一ノ瀬「何? 今なに言うたんや」
万 智「あなたにあの家は売りません」
「家売るオンナ」にきっぱり「売りません」と拒まれた一之瀬は、迷惑がる白洲美加を道連れにそのまま自宅でヤケ酒を呷る。このあたりの、一之瀬の設定と白洲美加の絡ませ方は、レギュラーシーズン第4話の、酔っ払って公園のベンチで寝てしまった白洲と、渡辺哲演じるホームレス風のおじさん(実はお金持ち)との関係をなぞったような感じですね。もっともあのときは万智もがんがん飲んでいたが。
閑話休題。酔いがまわってきた一ノ瀬は、かつて営業マンとしてコピーゼロックスを売りまくっていたという自慢話を始めて「おれがいなかったら今ごろコンビニでコピーできひんぞ」と豪語して、白洲に絡む。
笑福亭鶴瓶のセリフ廻しは全体的にアドリブっぽいというか、言葉の端々や言い回しはおそらく台本どおりじゃなくて勝手にやってるのだと思う。そしてそういう即興的なセリフ回しになればなるほど、鶴瓶が自分の演じている役柄を、距離を置いて眺めているような冷たい印象が残る。この人はかつて「スジナシ」という、ゲストを招いて10分くらい即興芝居をやる番組をやっていたけど、あれも演劇で言う「エチュード」に似て非なるもので、つまり役を作り込んで役に入って行くのではなくて、どんどん役を突き放して設定を客観視していくような感じなのだ。私はあまり感心しなかったのだが、結局そういうのがこの人のスタイルなのだろうな。
まあいいや。戻ります。現役時代に優秀な営業成績をあげて会社から表彰されたトロフィーみたいなものを白洲に見せつけてクダをまく一ノ瀬。
一ノ瀬「あいつが伝説の家売るオンナやったらなぁ、おれも伝説の営業マンや。え、世の中から称讃されとったんや」
白 洲「すごぉい。すごぉいけど、私そろそろ帰らないと。子供も待ってるんで」
一ノ瀬「もうちょっと付き合うてくれ頼むわ。付き合うてくれたらお前から家買うがな」白 洲「え?私から?」
一ノ瀬「ライバルやったんやろ」白 洲「誰と?」
白 洲「ああ、そうそうそう、そうなのよ」
一ノ瀬「そのかわり条件がある」白 洲「何?」一ノ瀬「マンションにウチの娘を連れて来てくれ」
白 洲「え?」一ノ瀬「あのメゾネットのマンションやったら娘も断らんやろ。居場所はちゃんと分かっとんのや。長年の行き違いもこれで解消や」白 洲「お嬢様を連れてくるだけでいいんですか?」一ノ瀬「そうや」
白 洲「分かりました。おやすい御用です」
一ノ瀬「やってくれるか?」
白 洲「やります。私の仕事は、家を売ることです」
ちなみにメイキングによれば、イモトアヤコのこの日の撮影はこの場面で終了だったようだ。
スタッフ「はいオッケー。チェックしまーす」
鶴 瓶「イモトさん終わりちゃうの?」イモト「あ、イモトさん終わりですこれ」
イモト「ああ気持ちがいい終わり方」イモト「(モニタの音声)私の仕事は、家を売ることです」
イモト「わあかっこいい。ありがとうございます」
ま、そういうことで、三軒家万智を出し抜くという大それた野望に燃える白洲美加。
一方、万智は夜の街に出て「ボディスタント&カースタント スタントマンプロダクション ファイヤー」と大きくロゴの貼られたスタジオを見上げながら、屋代課長からのメールをチェック。
「今日も順調に過ぎました そちらも頑張って下さい 屋代」
即座に屋代にコールをかける。上司の電話には直立不動。偉いぞ屋代。
屋 代「はいっ、屋代です」
万 智「うんち、出てるか?」
屋 代「出てます」万 智「以上(すぐ切れる)」
屋 代「……」
その翌朝。今は結婚して姓の代わった一ノ瀬の一人娘、道端杏(江口のりこ)は、白洲の電話に応じて、四谷のメゾネットマンションを訊ねてきた。
白 洲「昨日確認のお電話をいたしましたら、必ず行くとおっしゃってました」
一ノ瀬「嬉しそうにしとったか?」
白 洲「は……はい、もう嬉しくて飛んでいくって感じでした」
(チャイムの音)
白 洲「いらっしゃいました」
白 洲「どうぞ、どうぞどうぞ」
一ノ瀬「久しぶりやなぁ」
一ノ瀬「そんなとこに立ってんとこっち入りや」
白 洲「どうぞどうぞ」
白 洲「お嬢様、こちらのマンションはメゾネットと申しまして、マンションなのに2階があるという構造になります。ちなみにテラスハウスとの違いは……」
白 洲「………」一ノ瀬「ええやろここ。杏の家族は2階で生活したらええ。お父ちゃんはこの1階の奥で暮らすさかい、飯は食堂で一緒に食うたらええと思うん。どやろ」
一ノ瀬「過ぎたことは許したる。せやから一緒にくらせへんか」
一ノ瀬「お金の心配はせんでええ。お父ちゃんがキャッシュで買うさかいに。いつまでもアパートに住んでいたら心細いやろ」
白 洲「いいお父様ですね〜。もう感激です」杏 「……私はあなたとは暮らしません」
杏 「19の時、あなたは私を家から叩き出しました」
杏 「お前は男に狂っとる。まるでサカリのついた犬や猫と同じやないか。そんな娘はわしの娘やない。出て行け……」
杏 「うちの家族は貧しいです。夫はあなたが軽蔑したように学歴もなく、大きな会社の社員でもないです。でも幸せに暮らしています。あなたに家を買っていただく必要もありません」
杏 「私のことは今までどおり放っておいてください」
白 洲「ちょっちょっちょっちょっと待ってください、ちょっと……」
白 洲「ぎゃあああああっ」
ワンポイントリリーフの江口のり子はこれにて退場。入れ替わりに、悲鳴と共に後じさる白洲に圧をかけながら現れたのは万智。 さらに昨晩、万智が見上げていたスタントマンプロダクション「ファイヤー」の経営者、家中勇作(光宣)とその妻の冴(屋敷紘子)が入ってくる。
白 洲「なな何で三軒家さんが」
万 智「あなたはこの家はお買いになりませんね」
万 智「どうぞ」冴 「広いわね〜」勇 作「ああ冴」
万 智「こちらのご夫妻は、スタントマンプロダクションを経営なさっている家中様ご夫妻です」
万 智「昨夜、旦那様がこの物件をご覧になって、お買いになりたいとおっしゃっております」冴 「ホントにいいわ」勇 作「な? ハリウッドで暮らしていた家によく似てるだろ」白 洲「ハリウッド?」
勇 作「よし、ちょっとやってみるか」
冴 「うん!」
╳ ╳ ╳
勇 作「だぁああああっ」
冴 「とおおおおおっ」
冴 「最高だわ。自宅でトレーニングもできるし」勇 作「だな」
万 智「家中様、この家、7500万でお買い上げいただけますか?」
二 人「買います!」
白 洲「マジ?」
いくらなんでも家で階段落ちの練習は危険すぎるんじゃないかと思うが。ギャグなんだろうけど、まさかスタントの人はそういうトレーニングを日常的にしているのか?
というわけで、庭野を出し抜いて潔癖症の遼河夫妻にマンションを売りつけ、八戸を出し抜いて謎の中国人にタワーマンションを売りつけただけでは終わらず、さらに白州を出し抜いて(でもないか)スタントマン夫妻にメゾネットを売りつけて、まだドラマは折り返し点にちょっと足りない。怒濤の第進撃はいつまでつづくのか。というところで今回はこれまで。寒いですね。センター試験は雪が降る。すごいぞセンター試験。なんでだセンター試験。みなさんお身体お気を付け下さい。風邪で仕事を休んでいるのに、嫁のグチを聞くためにカフェまで呼び出された、白洲美加のダンナの宅間(本多力)みたいにならないように。
白 洲「ホントむかついた!」
白 洲「四谷のメゾネットマンション売れました、白洲美加ではなく私が売りました、だって」
白 洲「今度こそ売れると思ったのに横取りされた〜」
╳ ╳ ╳
ではまた次回。