これまで多部未華子のドラマをけっこう色々と観てきたつもりだが、今シーズンの『ドS刑事』の彼女のたたずまいは、なぜかこれまでで一番、セーラームーンミュージカル時代と重なる。……ような気がするんだけど、この問題については、余裕があったら考えてみたい。
1. エロメンとストーカー主婦
『LOVE理論』第2話(2015年4月20日放送、テレビ東京系/プロデューサー:水谷豊/企画ブレーン:西田哲也/脚本:八代丈寛/撮影・照明:白石利彦/監督:西古屋竜太)。主人公のモテない君に大野拓朗、その恋愛指南役が片岡愛之助、そしてヒロインに『TOKYO TRIBE』の好演で人気急上昇中(名古屋支部調べ)の清野菜名という、よく見りゃけっこう豪華な布陣を敷きながら、それをまったく感じさせないB級テイスト。テレビ東京の揺るぎない制作態度に改めて感心させられる。
前回、西田哲也の企画なので、お話自体は『アラサーちゃん 無修正』同様、意外とオーソドックスな純情恋愛物語かも、と書いたが、いまのところやはりそういう感じです。
主人公のモテない君が、大学サークルのコンパで同じ茨城県出身のヒロインに出会う。で、そういうキレイな子を前にしてもあがらない度胸をつけるために、美人ぞろいで有名なキャバクラでウェイターのバイトを始める。ところが、そこでキャバ嬢をやっているヒロインに出くわしてしまう。
清楚な女子大生の彼女がキャバクラでバイトをしているのは、親の借金を返すためだという(なんかもう、ベタ過ぎて嬉しい理由)。というわけで、はからずも秘密を共有するかたちになって、二人はだんだん仲良くなっていく。
でも、この主人公はいままで女性と付き合ったことがなくて、ヒロインとメアドを交換しただけで舞い上がり、ストーカーみたいにメールしまくって退かれてしまう。そういう恋愛ダメ男に「LOVE理論」を伝授するのが謎のキャバクラ店長、水野愛也(片岡愛之助)である。
まあしかし、私の目的は沢井美優の活動を報告することにあるので、あらすじはいいや。そういうわけで沢井さんは、主人公とヒロインがバイトしているお店「ピカレスク東京」のキャバ嬢の一人として登場する。今回は前回のようなまとまったセリフはなくて「キャーキャー言っているキャバ嬢の一人」的な扱いではあったが、しかし前回も今回もインパクトのあるお客さんの隣に座るので、けっこう画面に出てくるのは嬉しい。
今回のお客さんはエロメンすなわち人気AV男優の「トカレフ鈴木」(神木優)。最近は女性のためのアダルトビデオというものがあって、そういうのに主演するイケメンAV男優を「エロメン」と呼ぶ(らしい)。世の中、遅々とではあるが男女同権に近づいているようだ。
ずらっとならんだDVD。美術スタッフの作り物かなと思って調べてみたところ、ぜんぶSILK LABOというレーベルから出ているホンモノの女性向けアダルトビデオだった。忙しい忙しいと言いながら、私もたいがいヒマなことがバレてしまったわけだが、せっかく調べたので、以下タイトルと主演男優を記しておく。左から『ワーキング+』(出演:鈴木一徹・有馬芳彦・月野帯人)、『Filled with you』(出演:月野帯人)『More Beautiful !』(出演:鈴木一徹・月野帯人・倉橋大賀)、『One’s Daily Life』(出演:鈴木一徹・月野帯人)、『Hide&Seek 2』(出演:鈴木一徹・有馬芳彦)なんか同じ人が多い。まだ発展途上の業界か。
これは月野帯人主演『Filled with you』のジャケット裏側。要らない情報だとか言わないでね。
ドラマに戻ります。トカレフ鈴木は、そんなイケメンAV男優界でも、30代から40代の女性を中心にトップの人気を誇っている。必殺技「トカレフィンガー」でキャバ嬢(ティア)もいっちゃう。
って、いいのかよお店でそんなことして。
でも沢井さんはそんなトカレフ鈴木にメロメロ。
と、その沢井さんの腰にトカレフがさりげなく腕を回す。
次は沢井さんがトカレフィンガーの餌食か?
が、ここで唐突に、なぜか「AV業界あるある」というマメ知識コーナー。どういう構成だよと思いつつ、沢井さんの貞操が守られたことに安堵しました。ちなみに「AV業界あるある」の内容はこんな感じ。
「AV男優はビッグスクーターに乗りがち」
「AV女優は遅刻しがち」
「AV女優は×を吹くために撮影前スポーツドリンクで水分と塩分を同時補給しがち」
「AV男優は紙コップに入っているローションをコーヒーと間違えがち」
だそうです。勉強になりますね。
しかし……そんなトカレフを遠くからそっと見守る怪しい中年女性(藤田記子)。
彼女はトカレフが好きなあまりストーカーになってしまった主婦のファン。キャバ嬢とお楽しみ中のトカレフに嫉妬して、お店に包丁持参であらわれた。
包丁を振り回すストーカー主婦に、「またか」という表情のベテラン店員の太田(武田真治)。それ以外はみんな大騒ぎ。さっきまでトカレフにベッタリだった沢井さんも逃げ出して、思わず主人公の影に隠れる。ナイスだ。それで画面に映る時間が伸びたぞ!
と、第2話の沢井さんの出番はだいたいそんなところ。
今回セリフらしいセリフはなかったけど、そのうち1回くらいは「主人公を気に入ってアプローチをかけ、ヒロインをやきもきさせる」くらいの役を回してもらえないものか。ていうか、せっかく『天国の恋』の梢を使っているのに、まだ十分に活かせていないぞスタッフ。
あるいはひょっとするとそのうち、最近テレ東づいている小池里奈が出てくるかも知れない。男の上司のつきあいで初めてキャバクラに来たOLとか。小松彩夏が出てくるかも知れない。よそから引き抜かれてきた人気キャバ嬢とか。なんて想像もふくらむが、とりあえずこのへんで。
2. セーラームーンにおしおきよ
うっかり忘れかけていたが、Act.12でDVD第3巻が終わるので、最後にDVDの特典映像の紹介をしなくちゃいけない。第1巻、第2巻ゲストの浜千咲に続いて、第3巻と次の第4巻は北川景子である。
16歳の沢井美優と17歳の北川景子。この映像が2004年4月以前に撮影されたものなら、ふたりは高校1年と2年。このDVDは2004年の5月28日発売なので、どうだろうね。
沢 井「セーラームーン月野うさぎ役の沢井美優です」
北 川「セーラーマーズ火野レイ役の北川景子です」沢 井「DVDをご覧になってくれた皆さま」
二 人「ありがとうございます!」
沢 井「ふふ」北 川「そろわなかったね」
では、以下、コンテンツの内容にそって、二人の会話を採録してみましょう。
お互いの第一印象
まずは、セーラー戦士たちに決まった五人のなかでも、この二人がわりと最初から、セーラームーンへの思い入れが強かった、という話。というか、小松彩夏がほとんど何も知らなかったという話か。
沢 井「第一印象を覚えているっていうか、オーディションの時に『レイちゃんレイちゃんレイちゃん』って言っていたから憶えてるよ」北 川(頷く)「やりたかったんだと思う」沢 井「ねっ」
北 川「すごいやりたかった。テンパっててさ、オーディション憶えてない(笑)」沢 井「ホントに?」
沢 井「(私たち)二人は、すごいセーラームーンの話が多かったんだよね」
北 川「そうそうそう、読んでたっていう……」沢 井「読んでたから、見てたからアニメも。だから二人で話してたじゃん。で彩夏ちゃんはちょっと分からない(笑)。『あーそうなんだ〜』って」
北 川「『読まなきゃ』って言ってたの憶えてる」沢 井「そう、そんで三人で話してたね」北 川「うん」
そんなにレイをやりたかったら、茶髪を黒く染めてアピールするとかなんとかしなかったのか、という気もするが、そういう媚びかたをしないのが、私たちの愛する北川景子である。
なお皆様すでにご存知の通り、レイちゃん役やりたさのあまり「テンパっててさ、オーディション憶えてない」というのはウソである。後に北川景子はこのオーディション時に一発芸でなぜか芋版を彫ったと言うが、さすがにここではそれが恥ずかしくてカミングアウトできなかったのであろう。
続いて北川さんから見た沢井さんの第一印象。
北 川「私はもっとおとなしいと思っていたけどね」
沢 井「あれ。てへへ」北 川「ぱっと見、おとなしいと思ったんだけど」沢 井「ホントに?」北 川「あ、ぜんぜんうさぎだったって思って」沢 井「あはは、早つ」
北 川「早かった。ああホント、これはぴったりだ。大抜擢だって思った」沢 井「ホントに?」
最初はおとなしそうに見えたけど、すぐに「うさぎだ」と思ったという北川さん。沢井さんも、北川さんは最初お姉さんっぽかったと返す。
沢 井「大人っぽかった。おねえさんて感じがした」北 川「過去形かよ」沢 井「なんかすごい子どもっぽ〜いって時もあるし、すごいオトナっぽ〜いって時もあるし」北 川「そのアンバランスさが良いんですよははは」
沢 井「おお。ワーオ!」北 川「照れるよそんなの言わないでよ」
北 川「……なんだよぉ」
いわゆるツンデレというのともちょっと違うが、いかにもアニキらしい言葉を発したあと照れる、というのが当時の北川景子で、そのへんが萌えポイントでもある。
沢 井「(最近は)初々しさが……」
北 川「初々しさ、ないって言われるもんね」沢 井「ないって言われる。もう最近ない」北 川「(昔は)NG出したときにガンガン謝ってたもんね」
沢 井「前は『はいじゃあもう1回やろうか』『あっすみません、すみません、お願いします』……ていう感じだったのが、今は『ハーイわかりましたぁ』」北 川「『ハーイお願いします。回してください』……自分かよ、みたいな」
さっき書いたように、この対話は2014年春の収録と思われるので、まあだいたい半分、2クールは撮影も終わったころ。だいぶ慣れてきている感じですね。というわけで次の話題。
Act.9を振り返って
Act.9に関して話題になったのは、うさぎがタキシード仮面を逃がすため、自らニセタキシード仮面を演じる場面。ご存知のように沢井美優の声はキーが高い。そのハイトーンボイスをできるだけ男っぽく低くして、タキシード仮面を演じたとのことだが、正直言って私は、この特典映像を見るまで、そんなに低くて太い声を出す努力をしていたとは思わなかった。いつもの沢井美優の発声にしか聞こえないんだが。
北川さんもやはりそういう意見である。
うさぎ「私はここだ〜。捕まえてみたまえ。はははははは」
(カチンコの音)
沢 井「うま〜い私」
╳ ╳ ╳
沢 井「捕まえてみたまえ〜なんて」北 川「あの声可愛かったね『捕まえてみたまえ』」沢 井「頑張ったの〜」北 川「すごい可愛かったよ」沢 井「すごいね、あの時は自分なりに、すごい低い声を出したつもりだったの」北 川「出てないよ」沢 井「言った!」
北 川「普段の声だと思うよ『捕まえてみたまえ』(笑)」
Act.10を振り返って
次はAct.10。もらい泣きのシーン解説。もらい泣きというのは、やはり相手の演技に対するリスペクトなのかもな。でもそういう気持ちを、わりとさらりと表現する北川景子。
エリカ「そして、やがてかぐや姫は十五夜お月さまの中に消えていきました」
亜 美「うさぎちゃん?」うさぎ「なんだか分かんないけど、急に……」
╳ ╳ ╳
沢 井「ああ……」北 川「頑張ったねこの時」沢 井「頑張った。すいませんね」
北 川「いやいや。私も泣いた。それを見て泣いてた」沢 井「もらい泣きするよね」北 川「うん」
沢 井「みんなもらい泣きの方が多い」北 川「そう。わたし演技でもなんでもない涙が出ているからね。ふふっ」沢 井「でも人が泣いてるとヤバイよね」
北 川「うん。ほら見てごらん、泣いてるから、ほら」
画面のなかではウルウルもらい泣きをしているのに、終始アニキらしい発言。このあたりやはり、北川景子の魅力ですね。
というわけで、特典映像前半はこれまで、後半は次回へ。最後にAct.10の未使用カット二篇をご紹介します。
Act.10未使用カット 放送されたシーンと合わせてどうぞ……
最初は、ママとケンカして家出したうさぎがクラウンにやって来る場面。本編で使われたのは、うさぎが、カウンターにいた地場衛を意識しちゃって帰るところまで。その後の衛と元基の会話と、照れる元基のシーンは切られてしまった。まあここはしょうがないかな。
古 幡「衛に留守番たのんでるんだ」
うさぎ「あっ、そうなんだ」衛 「何時間ですか?」
古 幡「いいのいいの、うさぎちゃんは年間パスだから。ね」うさぎ「ううん、やっぱ止めとく。じゃあ」
うさぎ「なんだろう……なんかダメ」
╳ ╳ ╳
古 幡「うさぎちゃんどうしたんだろう」衛 「さあな。お前に会いに来ただけじゃないのか?」
古 幡「えっ、オレ?うそー」
もうひとつは、かぐや姫少女のエリカちゃんがたおれる場面。最後の「エリカ、絶対助けるから!」というレイのセリフが本編では使われていない。これはカッコ良いし、もったいなかったな。
うさぎ「どうなってるの?かぐや姫が狙われてるの?」
ル ナ「つまり、プリンセスってことかも」
うさぎ「そうか……でもエリカちゃんは……」
レ イ「たぶんエリカはかぐや姫に自分を重ねてたから……」
エリカ「うっ、ううう」
うさぎ「ひどい……早く妖魔倒さなきゃ!」
╳ ╳ ╳
レ イ「エリカ、絶対助けるから!」
というわけで、今回はここまで。次回、後半に続きます。