アキバ系アイドルグループ「でんぱ組. inc」のなかでも、ショートの金髪でちょっと目立っている最上もが。
ニートで引きこもりでゲーマーでバイセクシュアルで、一人称は「ぼく」っていう(設定として演じている部分もあるだろうが)オタク相手のフックがてんこ盛りのキャラクターだが、ブログはけっこう真面目に面白い。それに一回一回の記事が長くて、読みごたえがある。内容も、仕事の近況報告から最近思うこと、そしてファンからのお悩み相談までいろいろ。
人工的な目鼻立ちのせいか時々「整形ですか?」と聞かれるそうだが(聞く方も聞く方だな)そんな疑惑にブログで答えて、一部で評判になったこともある。
「整形するお金があったらぼくはアイドルになんてなってないしお金があったらわざわざこんな向いてない辛い道は選ばない」
そんな人造テイストな顔だちとヘアカラーが特徴的な「最上もが」がアンドロイド「ゼロワン」を演じている『新ウルトラマン列伝 ウルトラマンギンガS』(小池里奈の話に入るために、なぜこんな前置きが必要なのか)。もがちゃん、アクションも頑張ってますよね。
1. 地底の銀水晶
小池里奈が出演している『ウルトラマンギンガS』は、『M14の追憶』がレポしているので、まあいいや、と思っていた。が、先日放送の第4話は録画し損ねてしまわれたらしいので、そのエピソード「強さの意味」(2014年8月5日、脚本:武井彩/撮影:高橋創/監督:石井良和)から、小池里奈さん登場場面だけ紹介しておく。たしかこの回、一箇所しか出演しなかったんじゃなかったかな。
『ウルトラマンギンガS』の基本設定は、セーラームーンの「月の王国」と「幻の銀水晶」を、現代の地球の地底深くにもっていったような感じ。知られざる地底の王国ビクトリアンに、ビクトリウムという不思議な力をもつ鉱石が眠っていて、それを狙う悪の宇宙人たちが、地球に次々と怪獣を送り込んでくる。ビクトリウムを護るために地上に派遣された地底王国の若者ショウ(宇治清高)は、ウルトラマンビクトリーに変身して戦う。地上には地上で、前シリーズからのウルトラマンギンガがいて侵略怪獣と戦う。二人のウルトラマンが助け合いながら、最初は互いに「敵か味方か?」と疑心暗鬼なあたりも、セーラームーンとタキシード仮面の関係とだいたい同じ。
地底王国の王族の血をひく少年レピ(山田日向)は、「アニキ」と慕っていて、ウルトラマンとして戦うショウの力になりたいとつきまとうが、逆に足手まといになるから地上には出てくるな、と叱られてしまう。
自分が弱いから、ショウに邪魔者扱いされちゃうんだ、、と反省したレピは、小石を念力で持ち上げる特訓を始めた。そこへ姿を見せたレピのお姉さん、サクヤ(小池里奈)。さらに奥から、二人をこっそり見守るショウ。
レ ピ「う〜ん」サクヤ「レピ何してるの?」
レ ピ「オイラ強くなりたいんだ。強くなれば、いつもアニキのそばにいられるだろ?」
レ ピ「う〜ん。ダメだもう1回。」
この回のテーマは、ウルトラマンなんかでは定番中の定番で、仲間との共闘を拒否して孤独に悪と戦ってきたヒーローが「一人じゃない。仲間がいるから強くなれるんだ」という真実にめざめる、というアレ。
地上で苦戦するウルトラマンビクトリーの様子を、地底王国から不安げに見守るサクヤとレピ。見かねたが地上でピンチに様子を見かねて、少年レピは怪獣フィギュアを手に、ビクトリーを助けに行きたいと、地底王国の王女キサラ(山本未来)に申し出る。
サクヤ「レピ!」
レ ピ「お願いします。兄貴のところに行かせてください」
子供がそんなフィギュアで何をするんだと思うところだが、このフィギュアはスパークドールといって、人間と一体化(ウルトライブという)してホンモノの怪獣になったり、ウルトラマンビクトリーがその機能を一部取り入れることができるスグレモノなのだ。実際、レピがキングジョーのフィギュアを投げつけると、ビクトリーは自分の右腕をキングジョーのマシンガンに換え、怪獣に辛勝するのである。
バンダイもいろいろ考えたな。ま、しかし小池里奈の出番は終わったので、こんなところで。
2. 未発売の謎
さて、『みをつくし料理帖』レビューも、だらだらやっているうちにオンエアから2ヶ月も経ってしまったが、ブルーレイとかDVDで発売という情報はまったくない。と言うか、そもそも第1作目がビデオソフト化されていないのだから、2作目だけが出るということは、普通に考えればあり得ないですよね。
北川景子の出演作品でソフト化されていないタイトルといえば、『モップガール』『太陽と海の教室』そして『みをつくし料理帖』である。このうち『モップガール』(2007年10月〜12月、テレビ朝日系、全10話)が発売されない最大の理由は、やはり放送当初から指摘されていたとおり、FOX社のドラマ『トゥルー・コーリング』との設定上の類似が原因だろう。
まあ個人的には、ビデオで出してもそれほどおおきな問題にはならないと思う。が、万が一アイデアの盗用で訴訟とかいう話になったら、相手はハリウッドだけに面倒だ。危ない橋は渡らない、というあたりが未発売の真相であると、名古屋支部では推測している。もちろんこれはいつものように、まったくの推測ですからね。
『太陽と海の教室』(2008年7月〜9月、フジテレビ系、全10話)に関していうと、洋楽の楽曲の権利上の問題で出せないという。私も、第8話のBGMでサイモンとガーファンクルの『サウンド・オブ・サイレンス』が流れた時には「ソフト化するとき権利問題が面倒なんじゃないの?」とか「DVD化する気がないんじゃないか?」と思って、ブログにもそう書いたと思う。
でも後にフジテレビは、木村拓哉主演『PRICELESS 〜あるわけねえだろ、んなもん〜』(2012年10月〜12月)で、なんとローリング・ストーンズの「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」を主題歌に起用、そのままビデオソフト化したというから、『サウンド・オブ・サイレンス』も、きちんと版権をクリアできているのかもしれない。とするとあれだ、織田裕二がカバーして歌った主題歌『君の瞳に恋してる』のオリジナルの版権がめちゃくちゃややこしいことになっているらしいので、むしろこちらがネックなのかもしれない。あるいは主演の織田裕二が出来に不満でソフト化を許さない、という可能性もある(個人的にはこの「織田裕二封印説」が最もありそうだと思う)。
まあしかし、私自身は正直『太陽と海の教室』にハマれなかったので、そんなに憂慮はしていない。吉高百合子や前田敦子といった女優の実力に触れるきっかけにはなったけど、北川作品として観た場合、それほど未練はありません。一方、『モップガール』と『みをつくし料理帖』の未ビデオ化は、どちらもテレビドラマの代表作のひとつと言って良いだけに、惜しい。しかもどちらも片山修の作品である。とても上手に北川景子を撮る監督なのに、レンタルビデオなどで簡単に視聴できる片山・北川コンビ作品が『ヒートアイランド』だけというのはつらい。だいたい『ヒートアイランド』の北川さんの役は、原作では男だったキャラクターを、彼女のためにムリヤリ女にしたものなので、いまいち収まりが悪いのである。
ではなぜ、『みをつくし料理帖』はブルーレイにもDVDにもならないか。これは分からない。ゆいいつ考えられるのは「北川景子主演作品」ってところだ。
これもあてずっぽうなので間違っていたらご指摘いただきたいが、ジャニーズ事務所は、どうも自分のところのスターが、若手女優の「相手役」という格付けで扱われることに抵抗があるような気がする。かつてTBSで、上野樹里主演、相手役がV6の人で『のだめカンタービレ』のドラマ化が企画されて、潰れちゃった話は有名だ。ほとんど上野樹里とのダブル主演になるくらい、脚本の手直しを要求されて、原作者が降りちゃったということだ。
松岡昌宏その人は、助演というポジションに積極的な興味をもって取り組んでいるし、そういう意味で彼にとっては、東山紀之の『必殺仕事人』とか大野智の『怪物くん』、それに松田翔太の『潜入探偵トカゲ』の延長線上に北川景子の『みをつくし料理帖』がある、というだけのことなのだろう。でも事務所的には「松岡昌宏が北川景子の助演」という立場は納得いかないんじゃないかな。ましてや原作の小松原は、当初こそ澪の恋の本命だが、やがて対抗馬の永田源斎に抜き去られる運命にあるのだ。事務所的にはそういう扱いに含むところがあって、ビデオソフト化に「待った」がかけられたのかなぁ……と、いやこれはまったく、私の頭の中の妄想の話です。
3. 一粒符(いちりゅうふ)
実際、このドラマ版では、松岡君演じる小松原が原作より強調されていて、逆に原作では、小松原に次ぐ重要な存在だったお医者の永田源斉の影は薄い。演じた平岡祐太は、だいぶわりを食っている。原作「一粒符 なめらか葛饅頭」(高田郁『花散らしの雨』所収)を基にしたエピソード。これは今回のドラマで唯一、永田玄斉が登場するエピソードなんだけど、ドラマ版では後半がアレンジされて、結局、小松原が印象に残るようになっている。
澪が芳(原田美枝子)と住む長屋の仲間、おりょうさん(室井滋)の息子の太一(五十風陽向)が原因不明の高熱を発した。太一は澪と同じような災害孤児で、子供のいないおりょう夫妻のもとに引き取られ、実の我が子も同然に可愛がられて育ってきた男の子である。それだけにおりょうの憔悴も激しい。澪に頼まれて往診にやってきた源斉によれば、間違いなく麻疹(はしか)だという。
熱冷ましは処方できるが、麻疹そのものに効く薬はない。これから数日続く高熱と機能低下を、感染症もおこさず乗り越えられるかどうかは、本人の体力次第だ。
それでも、源斉の努力、おりょうや澪たちの熱心な看護の甲斐あって、太一は次第に、元気を取り戻す。
ところが今度は母親のおりょうが同じ病に倒れてしまう。もちろん源斉は、澪たち全員に免疫の有無を確認していたのだが、おりょうは無知ゆえにか、あるいは太一が心配なあまりか、子供のころ麻疹を経験ずみだとと偽って、連夜つきっきりで看病していたのだ。
しかし正直、大人になってからの感染は、子供よりもタチが悪く、危険性も高い。「先生、お願いです、おりょうさんを、おりょうさんを、お願いです」と訴える澪に、源斉は絞り出すように告げる。
源 斉「私だって助けられるものなら、どの患者も助けたい!……だけどそれが出来ないから、つらいのです」
澪 「先生……」
いつもは穏やかな源斉の、内に秘めた苦しみを初めて知る澪。でもこの場面はここで終わってしまう。
澪は、なじみの稲荷神社にお参りする。かつては「化け物稲荷」と呼ばれ荒れ放題だったが、江戸へ来て間もない澪が草むしりして整えた神社だ。
澪 「神様、お願いします。おりょうさんをどうか……おりょうさんを助けてください。うちに出来る事はなんでもします。せやから……」
一心に手を合わせる澪だったが、ふと背後に人の気配を感じて振り返る。
澪 「小松原さま!」
小松原「種市から事情は聞いた。おりょうの具合はどうだ?」
小松原「江戸城の公方様は、万能薬としてショウガを食しておられるそうだ」
澪 「えっ?」小松原「ショウガには解熱作用があるらしく、せきを鎮め、呼吸をしやすくし、様々な薬効があると聞く。食こそ命をつなぐもの。試してみるがいい」
澪 「ありがとうございます」
澪 「小松原様……」
これは原作にはない場面。せっかく源斉の、誠実な医師ゆえの苦悩を目の当たりにして、澪の心がちょっと傾きかけたのに、これでもう、小松原様にメロメロである。かわいそうな源斉。
澪はショウガ汁を作り、そこに、麻疹よけになると信じられていた黒豆を足して、おりょうに一口でも飲ませようとする。
意識混濁状態のおりょうだったが、ここで幼い太一を残して死ぬわけにはいかないという思いが口を開かせ、澪の料理を飲み込む。
こうして、おりょうが救われた、という話。お医者さんの源斉がいちばん活躍すべき見せ場を、小松原にまんまと持っていかれた。
前にも紹介したが、平岡祐太くんって、『ぼくは妹に恋してる』で小松彩夏に睨みつけられ、『LADY 〜最後の犯罪プロファイル〜』で北川景子に叱り飛ばされ、セーラー戦士に蹂躙されやすいタイプではないかと思う。
ということで「北川景子『みをつくし料理帖』リターンズの巻」(前・中・後編)および「続・北川景子『みをつくし料理帖』リターンズの巻」(序・破・急)を終えてまだ終わりそうにないので、次回からは「新・北川景子『みをつくし料理帖』リターンズの巻」(上)となる.
かも知れないが、もしくはお盆休み恒例の(だったと思う)「夏の台本祭」にするかも知れない。台本の場合は、名作Act.5 を取り上げてみたい。