実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第452回】連休はセーラーよもやま話で息抜きの巻

1. セーラー戦士連続殺人の怪



セーラームーンミュージカル6代目水野亜美/セーラーマーキュリーの若山愛美は、先代河辺千恵子の後を継いで、2002年夏公演より2005年のセラミュ終了まで、マリナムーン時代の大部分を支えた。これは初代の森野文子に次ぐ長期間の在任記録だという。Youtubeに、卒業した河辺千恵子と現役の若山愛美が二人で『ドライブ・ミー・ザ・マーキュリー』を演じている動画がいくつかアップされている。2002年の5月に行われたゴールデンウィークファン感謝祭イベントのビデオなんだけど、これを観ていると、ホンットこのころのベッチってキュートで輝いていたなとつくづく思う。



これまで何度か書いたように、私は2001年に初めて観たセラミュの舞台で、河辺千恵子のあまりの可愛さに頭がショートしたことが最初のきっかけで、いまだに毎週こんなブログを書く人生を送っている。でも河辺千恵子は比較的あっさりセラミュを卒業しちゃったので、その後はずーっと若山愛美マーキュリーを観てきたわけだ。娘を連れて「いやコイツが観たがるので付き添いでさ」なんて言いわけをして、夏になると今はない愛知厚生年金会館に通っていた。その娘もとうとう昨年で高校3年になって、私は昨年、はじめて一人で復活セラミュに観に行こうと思っていたんだけれど行かなくて、返す返すも残念である。どうでもいいオヤジのグチですみません。
それにしても新セラミュのセーラーマーキュリー松浦雅さん、高視聴率をほこるNHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」に、今月末からレギュラー出演されるそうで、まことにめでたい。もう私も嬉しくて、緊張して、吐きそう。



ま、いまは若山愛美だ。先日オンエアされたTBSテレビ月曜ゴールデン『捜査指揮官水城さや2』(2014年1月6日、脚本:安井国穂/撮影:高田陽洋/照明:土居堅太郎/監督:児玉宜久)に、プリンセス沢井美優がご出演されるというので観ていたら、若山愛美が出てきてびっくり。なんとこのドラマ、セーラーマーキュリーとセーラームーンの連続殺人という趣向である。



そういえば、今回は『水城さや2』だけど、ちょうど1年前に放送された前作『捜査指揮官水城さや』には原史奈さんが出ていたんだ。うっかりスルーして見損なったんだけど、ブログで台本を手にした写真入りでアナウンスしてくださっていた。なんだかセーラームーンと縁のあるドラマなんだね。



ある雨の夜、赤い傘を差した女が、刃渡り15センチのナイフで刺殺される。被害者は石原法子26歳(沢井美優)。役名こそついているが、オープニングカットでいきなり襲われて刺さるのでセリフひとつない。


もちろん捜査過程でちょこちょこ間接的な出番はある。捜査会議室のスクリーンに顔が大写しになったり、免許証の写真が映ったり。でもセリフはない。



調査が進むうち、沢井さんは半年ほど前、勤めていたトレード会社の社長秘書を辞めていたことが明らかになる。その後はどこかに転職した形跡もないのに、わりと羽振りの良い生活を続けていた。しかも、殺された日の晩も、辞めた会社の社長さんとレストランで食事をしていたことが明らかになる。



これはなんか怪しい。このへんに殺害の動機がありそうだ、なんてことは措いて、このレストランの沢井さん、短いカットでしたが、いかにも沢井美優って感じで良かったです。ここんところ『天国の恋』の梢ばかり見させられていたぶん、ちょっとホッとするね。
と、怪しい話がちらほら出てきたものの、捜査状況はかんばしくない。そこで改めて注目されたのが、3年前の事件との関連だ。実は3年前のある雨の夜、まったく同じように、赤い傘をさした若い女が、刃渡り15センチのナイフで刺殺されるという事件が起っているのである。被害者は豊田美奈子25歳。



この被害者こそ6代目マーキュリー若山愛美なのだ。マナミンひさしぶり!と思ったとたんに死んじゃった。ホント、沢井さんといい、マナミンといい、スタッフの見識を疑うよ(涙)。
3年前の若山愛美殺し事件はいちおう解決済みなのだが、実は犯人として逮捕された若者は、ずっと無実を訴え続けていた。しかし裁判の結果は有罪で、納得いかない若者は再審請求をしていた。が病気で獄中死してしまった。
そういう後味の悪い幕切れに終わっていたが、今回の沢井美優殺し、調べてみると、その3年前の若山愛美殺しと、凶器も状況もきわめて似通っている。それになんと言ったって、狙われている被害者がセーラー戦士ばかりというとんでもない共通点もある。てことは、あのとき逮捕された若者はやはり冤罪で、別に真犯人がいて、それが再び赤い傘の女を狙い始めたのだろうか?
警察の誤認逮捕の可能性に動揺する捜査本部。そんな当局をあざ笑うかのように、またしても赤い傘を差した若い女が雨の夜に襲われる。しかし、こんどの被害者はセーラー戦士ではなくて、なんと明日花キララだった。



この人はとっさに傘を振り回したのであやうく一命をとりとめた。どうも沢井さん殺しとは違う感じで、捜査本部は疑惑をいだく。そもそもセーラー戦士ではなくAV女優を狙っている時点で、この一件の犯人は別だろうなと、私もピンときましたね。そして案の定そのとおりだった。
しかしこのドラマ、ミステリとしてのプロットとか、謎解きとか、犯人が赤い傘の女を遅う動機とかは、比較的ゆるくで、ここで時間をかけて紹介するような内容のものでもないと思うので、あらすじ紹介はこのくらいにしておきます。



ところで、被害者ばっかりで主人公の紹介が遅れてしまいましたけど、タイトルロールの捜査指揮官、水城さやを演じているのが小池栄子。森田芳光、堤幸彦、中島哲也といったクセのある監督の作品にも好んで起用され、もはやすっかり実力派女優の仲間入りをした小池さんだが、やはり胸が大きいね。
しかし胸が大きいことは役とは関係がないので(当たり前だ)このドラマの小池栄子は、全編を通してちょっとお茶目だけど全体的にキリッと理知的な捜査官で、別にキャバ嬢に扮して潜入捜査とかするわけではない(捜査指揮官だしな)。明日花キララの出番も、さっきのがすべてで、服を引き裂かれるわけでも前後にシャワーシーンがあるわけでもない。




そういう意味ではあれだ、私はこのドラマ「沢井さんが被害者役で出る」という情報を聞いて観たら、なんと久しぶりに若山愛美さんまで拝見できて、すごく得した感じなんだけど、なかには、これだけ胸が大きい小池栄子主演で、しかも明日花キララも出演する、と聞いて、何かちょっと違うタイプの期待を懐いて最後までずーっと我慢して視聴していた視聴者(男性)もおられたんじゃないだろうか。お気の毒でした。


2. ルナの全身美容整形疑惑


あとあれだ、昨年11月から武内直子先生の原作『美少女戦士セーラームーン 完全版』の刊行が始まった。現在4巻まで出ていたと思う。これまで原作の単行本は(1)最初に出たなかよしKC版(全18巻)、(2)10周年記念に2003年10月から刊行された新装版(全12巻プラス外伝2巻)の2種類があったが、これに(3)今回の完全版が加わったことになる。


(1)なかよしKC版第1巻(1992年7月刊)


(2)新装版第1巻(2003年9月刊)


(3)完全版第1巻(2013年11月刊)


このうち(2)の10周年記念バージョンは、実写版の放送開始記念バージョンでもあるわけで、(1)のオリジナル単行本と較べてかなりあちこちに手が加えられている。まず目立つのは技の名前だ。セーラームーンがティアラを投げる技は、原作では「ムーン・フリスビー」(笑)となっていて、これテレビアニメでやっちゃ商標登録にひっかかっちゃうよね。だからアニメ版では「ムーン・ティアラ・アクション」となっていたのはご存じのとおり。しかし10周年で実写版が製作されたことを期して、改めて技の名前が再検討されたらしく、実写版は「ムーン・ティアラ・ブーメラン」となっており、原作単行本(2)でもその点は全面的に改訂されている。



実写版ファンとしては、非常に正しい改訂という気がしますね。
そのほか、ネームの入れ替えもいろいろある。場合によっては物語の展開そのものが若干異なっている例もあるようだが、少なくとも第1部、すなわちダーク・キングダム篇のあたりに関しては、そこまで大きな変更は見られない(私まだダーク・キングダム篇しかちゃんとチェックしていないんだ)。ただしセリフにはけっこう手が加えられていたりする。
下の例では、新版のマーズのセリフに変身後のキメのフレーズがはめこまれており、まことのセリフは、旧版ではちょっと女の子っぽかったところが男前に書き換えられている。


【旧版】


マーズ「オンナをだますなんて! ナメないでいただきたいわ!火星(マーズ)パワーでいかりの炎見せてさしあげる! ハイヒールでおしおきよ!」


まこと「あやつる? だます? ……本心じゃなかったの? だましたの?……オ、オンナの純情 ふみにじったっていうのっ!?」


【新版】


マーズ「炎と情熱の戦士セーラーマーズ! 女をナメないでいただきたいわ!火星(マーズ)パワーで燃やしてあげる! ハイヒールでおしおきよ!」


まこと「あやつる? だます? ……本心じゃなかったの? チクショウ……オ、オンナの純情 力で見せるぜ!!」


それからキャラクターデザイン。これは謎なんだが、(1)の旧版と(2)の2003年新装版を比較して、いちばん目立つのがルナの変化(笑)。なぜそこまでルナに?と疑問を感じるくらい、武内先生はルナにこだわっていらっしゃる。簡単にいうと、旧版では丸顔だったのが、新版ではアゴのラインがきゅっと締まって、鋭角的な顔になっているのだ。



これねえ。美容整形でエラを削るとこうなるんじゃないか。そう思いませんか? もう少しアップにしてみましょう。



ね。でも、実は顔だけじゃなくて、ボディーも同様に、ちょっと不自然なくらいスリム化している。全身美容整形疑惑である。ごらんください。



このくらいにしておくけど、以上のように2003年刊行の新装版は、オリジナル原稿をぜんぶスキャンして、連載当時のアシスタントを再結集して、フォトショップであちこち補正をかける、というやり方で1ページ1ページ直しを入れているのである。その結果、ルナの顔のような不可解な謎も増えたが、でもセリフや擬音の位置、背景のエフェクト、レイアウトなど、すべて新装版の方が読みやすく仕上げられている。いい仕事だったと思う。



というわけで、2003年新装版は、『スター・ウォーズ 特別編』くらい、随所にデジタル技術による直しが入ったバージョンだった。ところが今回の2013年「完全版」の惹句を見ると、さらにこう書いてある。

完全版はこれまでの単行本よりひと回り大きいA5判で、連載当時のカラーページを再現。すべての原稿がデジタルリマスターされる。表紙イラストは武内が新たに描き下ろし、1巻の表紙はセーラームーンが、2巻はセーラーマーキュリーが飾った。表紙にはキラキラと輝く加工が施され、高級感溢れる装丁に仕上がっている。


サイズ変更とカラーページ復活はいいことだ。問題は次の「すべての原稿がデジタルリマスターされる」という一節で、てことは、今回の「完全版」は、あの新装版に、さらに手が加わっているってことなのか。だとすると、もうルナなんか原型をとどめないまでの整形美人になっちゃうのかな、なんて思ってしまったわけですよ。
でも結論からいえば、今回の(3)完全版は、基本的には(2)新装版とほぼ変わりはない。もちろん連載時のカラー扉の復刻などは増えているものの、ネームや原画そのものにさらに手を加えた箇所はほとんどない。ちょっと注意して、第1巻だけ比較してみたが、おおむね(1)オリジナル旧版≠(2)新装版=(3)完全版と考えていいですね。ざっと目を通して唯一見つかったネームの変更例を挙げると、うさぎが変身アイテムでスチュワーデスの格好に変身するとき、(1)オリジナル版では「スチュワーデスに変身」だったのが、(2)新装版では「スッチーにチェンジ」、さらに完全版では(3)「CA(キャビン・アテンダント)」になっているというケースですね(笑)。



じゃあ今回「すべての原稿がデジタルリマスター」ってどういう意味だよ、ということであるが、これはつまり、カラーページの色合いやグレースケールの濃さなど、色調とかコントラストとか、そういう面で全体に微調整を施した、という意味らしい。だから内容的には、今回の完全版は2003年新装版に等しい。購入を検討されている方は、そうお考えください。
また、これまで当ブログも、原作の画像を引用するにあたって、1992年オリジナル版と2003年新装版のどちらを底本にすべきか、実は少々迷っていた。しかし今回の完全版を見る限り、やはり武内先生は新装版のほうを「定本」とお考えのようなので、今後はそういう原作者の意向を汲んで、原作に触れるときには主として新装版を用いていきたいと思います。

3. これが昭和の正しい不良


というわけで、今回は、濃厚な『天国の恋』レビューを終えた反動で、ダラッと雑談で終わりにします。
そうだ、ついでに最後にひとつ。今のところ完全版の1巻、2巻には武内直子先生の書き下ろしエッセイとか製作うらばなしとか、そういったたぐいのオマケの読み物がぜんぜんついていない。淋しい。一番最初の単行本には、ところどころコミックの欄外に、武内先生から読者へのメッセージか書き込まれていたり、本編のあとにあとがきめいた近況報告が書かれていたのだけれど、せっかくの20周年記念完全版なのだから、巻末のオマケに初期スケッチとか秘蔵の資料とかメイキングうらばなしとか、そういうボーナス・トラックを加えてくれないだろうか。
新装版の時は、最後にあとがき4コマみたいなのが入っている巻があって、これがすこぶる貴重だった。たとえば木野まことの最初のイメージ画は次のようなものだったという。



タバコ吸っちゃってるんである。
こういうのを見ると、作者のまことに対する基本的なイメージがわかって、たとえば原作の中に、まことが夜、明らかに自販機でビールを買っているとしか思えない描写があることも納得がいくのだ。




それからマーキュリーの初期設定。マーキュリーは当初、加速装置をもつサイボーグで、ダークキングダム篇ラストでバラバラになって死ぬ予定だったという。すげえ。





こういうのを見ると、実写版マーキュリーのみがもつ、「すばやく動いて敵の機先を制する」ジャンプや移動の能力が、まさに原作原理主義のあらわれであることがよくわかりますね。
てなわけで、また次回。