実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


最新記事〕 〔過去記事〕 〔サイト説明〕 〔管理人

【第351回】DVD第2巻:Act. 8の巻(その16)



ほしのあきさんと泉里香さんが共演しているという三幸製菓のCM、名古屋でやっていないってことはないんだろうが、実家に帰省して初めてテレビで観ることができた。ちょっと感激。


さて、最近なんだか流行っている「粛々と」という言葉を使わせていただきますが、今年は年末年始だからといって特別な企画は立てず、手順にしたがって粛々とAct.8レビューを進めていきたい。

1. アイドル伝説みな子



と、いうわけで、ナコナコなりきりコンテストが始まった。特別審査員は愛野美奈子!と、みんな期待していたのだが、実は美奈子は、会場に到着するなりゾイサイトの気配を感じ、さっさとその場を去ってしまっていた。
「愛野美奈子ちゃんですが、スケジュールの都合で来れなくなってしまいました。すみませ〜ん!」と言い訳するが、ブーイングを浴びる司会者。そりゃそうだろうと思っていると、次の「でもコンテストの賞品、ナコナコぬいぐるみにサインしてくれたそうなんで、皆さん頑張ってください!」のひとことで一気に会場は盛り返す。
前にも書いてしつこいが、ここが分からない。戦士の事情を知らない関係者やファンにとってはたんなるドタキャンである。(1)事務所は所属タレントのこんなワガママをゆるすのか?(2)ネットとかでめちゃくちゃバッシングを浴びるはずだが、その後も美奈子人気に翳りが見えないのはなぜ?(3)それを挽回するには、コンテストの優勝者を、次のライブの楽屋に招待するくらいの特典をつけなきゃいけないのに、たかだかサイン入りキャラクターグッズひとつでこんだけ騒ぐファンってバカか?幾つもわき上がる疑問にあれこれ理屈を考えてみた。



(1)実は「また美奈子ドタキャンかよ」なんて陰口されるくらいタカビー(死後)なアイドルだった。新人つぶしなんかもお手のもの。



(2)実はこの一件で、美奈子人気はものすごく落ちた。Act.10でロンドンのレコーディング帰りの空港に集まる取材陣の数が、スーパーアイドルのわりにめちゃくちゃ少ないのがその証拠。



(3)美奈子ファンがまた、そういう仕打ちになれているどMな奴ばかりなのである。今回のナコナコなりきりコンテストだって、みんなジャージとか、センスのない奴らばかりである。宿題をやっていたうさぎは大目に見るとして、なるだって桃子だって、頭部を作り込んだ香奈美だって、ひどいものである。実はこの人たち、本当は特別審査員の美奈子に「ダサイ」とか「うざい」とか罵倒されたくて、わざとそういう格好で来たのだ。美奈子はそういうファンに、期待をうわまわる「本人来ない。完全放置」というプレイをもって答えた。


まあともかくコンテストだ。台本のト書きはこうなっている。


  


   なる達の後ろへ、顔を隠すように並んでいるのは、ナコナコの簡単な着ぐるみを着たまこと。
   気づかれないように、周囲を見回す。
 

  


   だがその時、バッタリ視線が合うのは、着ぐるみを着たレイ。


まことのところで「簡単な着ぐるみ」と説明されているのがおかしい。とっさにコンテストに参加することにしたのだから、そりゃ「簡単な着ぐるみ」しか準備できなかったろう。でも、今さっきも言ったように、うさぎやなるや桃子や、それにほかの参加者もほぼ全員が、なぜか「簡単な着ぐるみ」しか着ていないのだ。



もはや着ぐるみ以前の人もいるし、むしろまことの方が、まだきちんと作ってあるという気さえする。しかし、まあいい。もうすぐ大晦日なのでさっさと進もうね。「年内にAct.8レビュー完結」の公約ぐらいは守りたいものだ。(本当のことを言えば、台本のこの箇所で、まことは「簡単な着ぐるみ」、レイは「着ぐるみ」とあるところが面白いのだが、この点に関しては大家さんがここできっちりと解説している。)


  


レ イ「うさぎには甘いんだから」
まこと「どっちが」


  


レ イ「入賞、するつもり?」
まこと「出来なきゃ意味ない」
レ イ「そうね」


ということで、クピッ!
ここはもう、レビューしてもしょうがないや。まだご覧になっていないみなさんは、ともかくレンタルするか、今年発売されたDVDボックスをお買い求めいただき、2人のナコナコぶりをご鑑賞ください。台本よりは伸ばしてあるが、田崎演出なので正味30秒のスタンダードな仕上がりです。これがもし舞原健三監督だったら、どれほどのテンションでこのシーンに取り組んだことであろうか。


まこと「くぴっ」


レ イ「くぴっ」

2. ばたばたとたたむ2011年


あとはサクサク進みます。シーン34「会場・外」


  


   レイとまことが横に距離をとって歩いている。
   腕に持っているのは『参加賞』と書かれた箱。



  


   二人が同時に溜息をつく。
   歩き続ける二人。
   二人の距離は縮まらず、広がらず。


  


この、最後の「二人の距離は縮まらず、広がらず」というのがいいよね。『M14の追憶』の台本研究(ここ)をご参照下さい。こっちよ!研究員によるコメント欄のご指摘も重要です。いわく


1つのActの結末を「キャスト間の空間距離」で表すのが実写版の特徴の1つです。他にも、


  


「見詰めるヴィーナス、アルテミス。セーラームーン達はいつまでも一つになっている。」(Act.28)


  


「走るうさぎの手が、仲間達の元へもうすぐ届く。」(Final Act)


なるほどね。

続いては台本のシーン35「月野家・うさぎの部屋」。

   ベッドでうさぎが熟睡している。
   枕元のルナ。
ル ナ「敵が強くなってる気がする……。うさぎちゃん達が戦士として本当に目覚めなければ危ないかも……」
   うさぎが眠り続けて――


  


すでにご覧いただいたとおり、台本では、ジェダイトが消えて、マーズとジュピターがセーラームーンに駆け寄るシーンで、ルナもその場に居合わせたことになっている。そして「徹夜続きだったし、ジェダイトの攻撃が強すぎたみたい。コンテストはムリね」という説明セリフを言うのだが、完成作品ではこれがジュピターのセリフにされている上に、「ジェダイトの攻撃が強すぎたみたい」というフレーズも削られている。このエピソード単体でシーンの流れを見た場合、この改訂は適切なのだが、シリーズ的には、ルナが第2クール以降への伏線を貼っていることがちょっと分かりにくい結果となっている。しかしいずれにしても、戦いの場で昏睡状態になったセーラームーンを、ルナがどうやって自宅まで運び込んだかは不明である。なんてことも、M14さんのここをお読みいただければいいです。
この4月から8ヶ月にわたってAct.8を検証し続けてきたが、なんだかもう「本当は大家さんの記事を読んでもらえれば大体のことは書いてありますから」で済ませられたような気もしてきたな。でも『M14の追憶』のAct.8台本研究は、長期にまたがって順不同、そのうえ「その2」が2回もある、という検索しづらいものなので、ここを参考にして読まれるといいですよ。

3. またまた美奈子問題


じゃあラスト。シーン36「一室」。シメはダーク・キングダムのピアノの間です。


  


   悶えて倒れ伏しているジェダイト。
ゾイサイト「慣れない者が最初から飛ばしすぎたか」
   クッと笑うゾイサイト。

  


ゾイサイト「だが、感じたぞ……。セーラーVを……」
   再びピアノを弾き始め――  


  

  
  つづく


ゾイサイトはここでセーラーVを感じちゃったわけである。
ところで以前から私は、シリーズ前半における美奈子の行動原理が分からない、とボヤき続けていた。Act.8レビューを締めくくるに当たって、もう一度その点について整理してみたい。
このエピソードで、ゾイサイトは影のように背後をよぎって美奈子の様子をうかがっていたわけだが、今の最後のセリフから考えて、彼は今回、セーラーVこそプリンセスだという確信を得たのであろう。そして次の次、Act.10では運転手の意識を奪ってトラックを暴走させ、美奈子を襲う。
一方、襲われた美奈子は、Act.11の冒頭、十番病院に入院している場面で、付き添いのスガオ社長の隙を盗んで、アルテミスとこんな会話を交わす。


  


アルテミスの声「美奈子、これからがほんとうに大変だよ。君は戦わなければならない。そして絶対に負けてはいけないんだ。それも、たった一人で」


  


美奈子「だいじょうぶ。歌の世界に入ったときから一人だし、セーラーVになったときだって、ちゃんと自分で決めたんだから。プリンセスとして」


ということはつまり、美奈子は自分がダーク・キングダムのターゲットとしてロックオンされたことを確認して、その時点から本格的な影武者としての任務を開始したわけだ。実際、その次のAct.12ではあえて「プリンセス」の名乗をあげ(名乗ったのはアルテミスだが)敵の注意を自分に引き付けている。
そうすると、逆にこのAct.8あたりでは、まだ影武者としての活動は始めていないことになる。しかも今回、ダーク・キングダムの気配を感じながら、プリンセスを現場に残して立ち去っているのだ。もしもプリンセスの護衛がこの時点での最大目的だとしたら大失態である。でもたぶん、プリンセスが自分のファンで、ナコナコなりきりコンテストに参加していたとは知らなかったのだろう。うさぎがセーラームーンであることも、この時点では知らなかったのだと思う。



Act.11で美奈子は、病院に侵入してきたうさぎにとまことに会ってハッとして、最後に「あんな子がセーラームーン」と失望している。Act.17でも、レイの顔をみるなりマーズであることに気づいている。いちおう現時点では「前世の記憶がある美奈子は、うさぎやレイの素顔を見ただけでセーラー戦士であると分かる(つまりみんな前世と現世で同じ顔をしている)」と考えておきたい。本当はこの仮説にもいろいろ問題はあるのだが、大晦日なのでカンベンして下さい(どういう理由だよ)。
したがって「愛野美奈子」と「月野うさぎ」はAct.11が初対面である。しかしセーラーVとセーラームーンは、我々の知る限りでも、すでにAct.7で会話を交わしているし、Act.7の冒頭のやりとりを聞くと、すでにこれまでにも何度か会っているようなニュアンスを感じる。
ということは、Act.12で影武者になる以前のセーラーVは、実はこっそりセーラームーンの活躍を影ながら応援し、いざとなったら護衛するつもりでいたのか。それも違う。それが目的なら、何よりもセーラームーンの正体とその動向を把握しておかなければならないはずだが、Act.8ではセーラームーンがファンの1人として自分のイベントに来ていることも知らずに、さっさとファンを置き去りに遁走しているのだ。
ということは、ここまでのセーラーVの行動の主目標は「タキシード仮面の邪魔をすること」くらいしか思いつかないよね。実際、セーラーVはACT.ZEROでタキシード仮面と邂逅し、前世の記憶をあらかた想いだして、Act.1では宝石泥棒をするタキシード仮面の前に立ちふさがり、Act.7ではセーラームーンのピンチを助けようともせず、セーラームーンがタキシード仮面の後を追いかけようとするところに「追ってはなめ!」と姿を現した。どちらかといえば、セーラームーンがいるところに出てくるのではなく、タキシード仮面がいるところに出てくるのだ。でもタキシード仮面がセーラームーンのいるところに出てくるので、結局セーラームーンがいるところに出てくることになるんだけど。ややこしいね。整理しよう。

  愛野美奈子 使命の変遷


  
 Act.1〜Act.7
  タキシード仮面が記憶を取り戻し、前世の悲劇を繰り返したりしないよう妨害する。
   (幻の銀水晶探しを邪魔する。セーラームーンに忠告するなど)


  
 Act.8〜Act.11
  ダーク・キングダムに目をつけられたようなので、とりあえず逃げる。


  
 Act.12〜Act.22
  「プリンセス」を名乗り、本物のプリンセスを守ろうとする。
   (単独行動をとり、敵の標的となる)


  
 Act.22〜
  護衛戦士の遊撃隊として、単独行動でプリンセスの護衛に努める。
  


厳密な意味でプリンセスの影武者をやめるのはAct.25からだが、亜美がダーク・マーキュリー化したり、プリンセスの覚醒の兆しがあったり、自分の体調の具合が悪かったりとか、諸般の事情でAct.22あたりから業務内容をシフトしている。
と、こんな感じで良いのかな。いや、良く無いな。私あまり自信がないですよ。まあしかし、今後もいろいろ考えるための叩き台として出しておくよ。


ということでAct.8のレビューはこのくらいで。今年のブログもこのくらいで。お正月三箇日中に一回は更新したいと思います。