実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第348回】DVD第2巻:Act. 8の巻(その15)

1. 風評被害


直接お会いしたひろみんみんむしさんから「ジェントルマン」と評されたくらい普段は温厚な私だが(自慢)本気で腹が立つことだってあるよ。収束って、収束って何が?

首相「事故は収束」=冷温停止状態を達成、避難区域見直しへ―福島第1原発・政府

  東京電力福島第1原発事故で、政府は16日、原子力災害対策本部(本部長・野田佳彦首相)の会議を首相官邸で開いた。原子炉の冷却が安定して放射性物質の放出が大幅に抑えられた「冷温停止状態」が実現し、事故収束に向けた工程表「ステップ2」が完了したとする政府・東電統合対策室の判断を了承。野田首相は「冷温停止状態に達し、事故収束に至ったと判断した」と述べた。
  (「時事通信」2011年12月16日)



あと京都の清水寺では、今年を象徴する漢字として管長が「絆」って書いたけど、あれもなぁ。
まあそのことは大家さんがすでに書いているので(ここ)多くは触れません。ともかく、これからしばらくテレビでは、2011年を総括したり回顧したりする番組が増えるだろうし、観たくもないのにそういうのが目に入って腹が立ったり落ち込んだりで、近年まれに見る憂鬱な年越しになりそうですね。
福島原発の廃炉も、完了まで長くて40年くらいかかるって言うしさ、その間、放射能や放射性物質がまき散らされれば、若い世代の寿命は縮まるばかりだと思う。今年はNHK紅白歌合戦とかを観ても「ああ私たち大人は、芦田愛菜さん(7歳)とか鈴木福くん(7歳)たちの未来を奪ってしまった」とか思うんだろうな、いやうちの息子も同世代なんだけど。やはり今年は近年まれに見る憂鬱な年越しになりそうだ。


いや、うちのブログらしからぬオープニングで悪いんだけどさ。
まあともかく、始めよう。

2. 「若い頃のように」


だいぶ前の記事になってしまうが、北川ブログ12月4日づけのお言葉。あえて注釈はしない。個人的には、北川さんってほんとに面白い人だと思う。


今年も終わりに近づいてきました。
二十代も半ばになって、若い頃のように余裕綽々には連ドラのスケジュールをこなせなくなったことを痛いほど感じた今年。
十代の頃の、徹夜が続いても有り余っていたあの体力はどこへいったんだろう・・・。
作品も終わり間近、そして師走、条件反射で来年のビジョンを描いていますが
今年は早くも半ばから息切れをしてしまい、
自分の体力面に自信がなくなってきているので
今後は少しスケジュールにゆとりをもたせなくては!と
初めてセーブする事を考えはじめています。
体が資本とは全くその通りだと思います。


では北川さんの体力がありあまっていた頃の作品レビューに戻ろうか。



と言っても、ながらくレビューを中断していたから、どこまで話が進んだか、みんな忘れちゃったよね。バトルが始まって、セーラームーンのピンチにマーズとジュピターが駆けつけたところまでです。マーズは妖魔退散(台本では幻の「ファイヤーソウル」)ジュピターはフラワーハリケーンという合わせ技。


ところが、これを受けた、いつもはヘタレなジェダイトが意外な反応。不敵な笑いを浮かべ、二人の攻撃を受け止めて光の球にまとめ、投げ返そうとするのだ(台本では「黒い光を放つ」ことになっている)。が、しかし……。


  


ジェダイト「お前達も地獄へ――」


  


ジェダイト「う……! うあぁ!」


  


ジェダイト「あ……あ……」


  


  ジェダイトの姿が薄くなり、消えていく。


マーズ「どういう事……?」


  


ジュピター「さぁ……」


理屈はよく分からないのだが、ともかくジェダイトは、ゾイサイトの力を借りてコンテスト会場に突然「飛んで」きて、先制攻撃を加えて一気に潰そう、という攻撃プランを立てていた。しかし、やはり付け焼き刃はすぐにボロが出る。特にこいつの場合、最初からゾイサイトの力を当てにしているところがもうダメだし、セーラームーンへの攻撃の仕方も最低だった。「相手がまだ変身後のキメポーズをしているうちに背後から首を絞める」って、どんだけ卑怯なんだよ。
思えばクンツァイトはいつも剣の稽古に余念がなかったし、ゾイサイトも、その特殊能力の源泉であるピアノの練習だけは欠かさなかった(ダーク・キングダムじゅうに響くのでものすごい近所迷惑だったとは思うが)。この二人は常に精進しているのだ。それなのにネフライトとジェダイトのヘタレ二人組ときたら。でも最後にはベリル様への一途な想いが評価されて恩寵にあずかるのだから、ネフライトよりもこっちの方がチャッカリ屋である。

3.  足長お嬢さん


あ、すいませんどうでもいいことだった。さてそういうわけで勝手に自滅したジェダイト。わけが分かんないが、敵も消えたし、何はともあれ倒れているセーラームーンのもとに駆けつけるマーズとジュピター。


  


マーズ「うさぎ、しっかり」
ジュピター「大丈夫?」


  


セーラームーン「まこちゃんたち仲直りしたんだね」


  


マーズ「え……」
ジュピター「……ああ……」
セーラームーン「レイちゃん、私ちゃんと一人でやったよ。コンテストも出るよ。ナコナコ、ゲットするよ……でも、眠くて」


  


マーズ「うさぎ……寝てる?」
ジュピター「ああ。徹夜続きだったから。これじゃぁ、コンテストは無理か」


  


マーズ「……またチャンスはあるわ」


  


ジュピター「頑張ったよ、うさぎ」


ここの部分、些細な変更だが、もとの台本とは微妙にニュアンスが違っていて、マニア的にみれば面白いのだ。台本の方をご覧ください。

セーラームーン「あ〜、まこちゃん達仲直りしたんだ〜」
マーズ「え……」
ジュピター「いや……」
セーラームーン「レイちゃん、私ちゃんと一人でやったよ。コンテスト出るよ。ナコナコゲットするよ〜」
マーズ「うさぎ……」
   だが、ガクッと気絶してしまうセーラームーン。
ジュピター「うさぎ⁈」
   ルナが来て
ル ナ「徹夜続きだったし、ジェダイトの攻撃が強すぎたみたい。コンテストはムリね」
マーズ「……またチャンスはあるわ」
ジュピター「頑張ったよ、うさぎ」
   眠っているセーラームーン。


較べてみると、台本段階のセーラームーンの方が、総じて無邪気でバカっぽく感じませんか。「あ〜、まこちゃんたち、仲直りしたんだ〜」「ナコナコゲットするよ〜」などというセリフの「〜」の使い方、そしてセリフを言うなり「ガクッと気絶してしまう」というト書き。キャラクターの描写が、ちょっとアニメっぽいんですね。
これに対して沢井美優のセーラームーンは、「まこちゃんたち仲直りしたんだね」というときの笑顔、「ナコナコ、ゲットするよ……でも、眠くて」といったあとの寝顔、どちらももっと柔らかいタッチである。
つまり初期の実写版セーラームーンは、まだアニメ版の影響を引きずりながら制作されている雰囲気があって、台本もそういう空気を微妙に反映していた。しかし田崎パイロット監督が、アニメと実写の違いを踏まえて、より実写版にふさわしい表現を実現すべく調整していた。そういう過渡期にあったのかな、と思うのだ、このAct.8なんかを観ていると。(撮影台本を見ていないので分からないが、逆にアニメっぽい台本をそのまま実写化した例がAct.4ではないかとも思う。)
もうひとつはジュピターだ。台本では「まこちゃんたち仲直りしたんだ〜」と言われたジュピターは、あまりにストレートな問いに照れちゃったのか、とっさに「いや」と否定している。でもうさぎは、自分の宿題騒動が元でまこととレイが喧嘩してしまったことを、ずっと気にかけているのだ。だったらここで、ちゃんと仲直りしたことを告げて、うさぎを安心させてやる方が、まことのキャラクターにふさわしいよね。だから田崎演出のジュピターは、セーラームーンの「仲直りしたんだね」という問いかけに照れながらも「ああ」と応答している。実際、それを聞いたセーラームーンは安心して、コンテストはこれからなのに眠ってしまった。結局、彼女にとっていちばん大切だったのは、友達同士が仲直りすることだったのだ。
そんなふうに眠りこけたセーラームーンを見て、ジュピターは「徹夜続きだったから。これじゃぁ、コンテストは無理か」と言う。ご覧のように台本の段階では、これはルナのセリフだった。でも田崎監督は、これをジュピターに振ることで、自分たちを仲直りさせるために努力してくれたうさぎへの感謝の気持ちを表現するセリフとしている。それで「頑張ったよ、うさぎ」と言うときには、思わずセーラームーンの頭を撫でてしまうわけですね。ここ、すごく好きである。
それにしてもジュピターの脚は長いな。これ以降のエピソードでも、ずっとセーラームーンを陰日向に支援する足長お嬢さんである。



北川景子は、セブンティーンモデルの頃から、自分がモデルにふさわしい身長とかプロポーションでないことに悩んでいたというが、ひょっとすると親友の安座間美優をいつも間近に見ていたせいで、ことさらそういうコンプレックスを抱くようになっていったのかも知れない。そして女優の道を選んだのも、安座間美優の芝居を見て「こっちなら私の方がいける」と思った、とか。いや冗談冗談。まじめな冗談です。


4. 香奈美よ お前はいったい


さてコンテストだが、不穏な空気を察知した美奈子はさっさと帰ってしまった。きょうびこんなドタキャンをしたら、アイドルといえどファンのブーイングは免れない。ていうかそれまでのファンがアンチに転ずる危険性だってあるわけだが、美奈子ファンは理解があるね。


  


司会者「えー、愛野美奈子ちゃんですが、スケジュールの都合で来れなくなってしまいましたー、すみません!」


  


   (会場からブーイング)


  


司会者「でもコンテストの賞品、ナコナコぬいぐるみにサインしてくれたそうなんで、皆さん頑張ってください!」


  


な る「うそ!」
香奈美「がんばろー!」


なんとっ!ここで香奈美がナコナコの着ぐるみの頭部を脱ぐのである。
すでに見てきたように、香奈美(平井愛子)はこのAct.8で、一貫してナコナコの着ぐるみをかぶって、顔を隠し続けていた。学校で「クピッ!」の練習をするときも、コンテストの開始をまって行列をつくっているときも、ジェダイトに襲われて倒れているときも(ただし特典映像の中では顔を見せている。詳しくは【第338回】参照)。



それがついに、ラストでナコナコの頭を脱ぐ。
ひょっとするとあれだ、平井愛子は台本を読んで「美奈子がナコナコぬいぐるみにサインしてくれた」ぐらいのことでみんながどっと喜ぶというのはちょっと不自然だし、インパクトも足りないと思ったのかも知れない。それで、ここまでずーっと顔を隠して、ためてためて、ラストの「コンテストの賞品、ナコナコぬいぐるみにサイン!」というところで、喜びのあまり顔を出す。こういう演技プランで、香奈美なりにドラマに貢献しようと思ったのだ。そうに違いない。いままで何度もAct.8を観てきたけれど、初めて香奈美のプロ根性に気づいたよ。香奈美、ありがとう。



と、そんな騒ぎのなか、こっそり会場に潜り込んだまこと。こっそりのわりに、ただでさえ長身なのにさらに長い帽子で目立っている。



ふと見やると、ナコナコメイク中のレイがすでに会場入りしている。二人とも、眠ってしまったうさぎの代わりに景品をゲットしようというのだ。


  


レ イ「入賞、するつもり?」
まこと「出来なきゃ意味ない」
レ イ「そうね」


さあどうなる!
というところで、以下、次回でございます。