M14さんから、折々にコメント欄で、たぶん暗に「やれ」と言われていると思うんだけれど、そして私自身やってみたい気持ちがあるんだけど、「ジュピター=安座間美優の顔および髪型の変遷の検証」というテーマがある。これって、ただ時系列に沿って顔のアップを並べても、行きつ戻りつ、単純なようで難しいので、なかなか本格的には手をつけられない。でもまあ、始めの方でいうと、ざっとこんな感じになる。
う〜ん。やっぱり眉のあたりがポイントなのかな。ま、詳しい分析は将来の課題とします。
さて、Act.6レビューも、いよいよ大詰めである。このエピソードは検証のためにアニメ版を引き合いに出したり、原作漫画に言及したり、実に様々な寄り道をして、たいへん時間がかかった。その最大の原因は、もちろん私の計画性のなさだ。でも一方で、このAct.6のユニークな魅力というか、アニメ版と原作の間を微妙に揺れる独特のフェイズを紹介したかったこともある。
たとえば冒頭の、うさぎがチンピラ3人組に因縁をつけられる、という展開は原作には無いもので、アニメ版に妙にそっくりだ。でもまことやレイのキャラクター設定は、アニメよりも遥かに原作を尊重している。そんなふうに、お話がアニメと原作の間を行きつ戻りつしているので、ついつい比較したくなってしまうんですね。
で、ラストシーンはどのあたりに着地するか。まことが初めてジュピターに変身したときに妖魔に放つ技は、原作ではフラワーハリケーン、アニメ版ではシュープリームサンダー。実写版は?っていうと、これは先週も見た通りシュープリームサンダーだ。
これも不思議といえば不思議だ。どうしてかというと「フラワーハリケーン」は、アニメには最後まで出てこなかった技である。だったら「原作原理主義」を標榜する実写版としては、率先して使うべき場面ではないだろうか。武内先生だってきっと喜んだと思う。
そして実際、実写版では、すぐ後のAct.8やAct.9で、ジュピターがフラワーハリケーンを決め技に使っているのだ。しかしそれならなぜAct.6ではこれを出さずに、アニメと同じシュープリームサンダーでお茶を濁しちゃったんだよ、と、かえってますます首を傾げたくなる。なりませんか?そんなことどうでもいいですか、そうですか。
私は、この件についてはちょっとこだわりがある。前にも書いたが(ここ)アニメのセーラージュピターはがっちりと力強いアスリート系の体格で、カミナリ技を操るゴリ押しのパワーファイターだった。原作のまことにもそういう面があったが、私の好みで言うと、アニメは少々パワーファイター路線を行き過ぎてしまった。
安座間美優はそれを、いったん原作の地点まで戻ったうえでリセットした。原作漫画のジュピターは、一方では「植物系の戦士」でもあった。学校では園芸部に所属し、風をあやつって木の葉や花びらを武器にする、緑のコスチュームに身を包んだ戦士。そういうイメージに、しなやかで均整のとれたシルエットをもつ安座間美優はぴったりだった。そして再構築されたのは、これまた原作そのものではない、新たな「草食系」寄りの木野まことであったが、そういうキャラクターである以上、最初に出す技はやはりフラワーハリケーンであって欲しかったな、と思うのである。
ただ、戦士にどんな技を使わせるかという点については、スタッフ側もこの時点でまだ腹が定まっていなかったようである。以前『M14の追憶』に紹介されたことがあるが、Act.8の撮影台本では、マーズが「ファイヤー・ソウル」、ジュピターが「フラワー・ハリケーン」を出す、と書かれている(ここ)。凄い!なんと実写版のマーズが、アニメ版だけの技だったファイヤーソウルを出す。そしてジュピターが、原作のみの技だったフラワーハリケーンを出す。この2つでジェダイトを同時攻撃するのだ。これって凄いよね?凄くないですか。そうですか。
しかし実際のAct.8のそのシーンを見てみると、北川景子の唇は「ファイヤー・ソウル」と動いているみたいだけど、アフレコであてたセリフは、ただの「妖魔退散」である。
結局、どういうことなのかというと(ここから先は例によって100%私の想像であるから、そう思ってください)Act.6の段階では、スタッフはアニメ版のファンにも配慮して、わりとアニメ版を連想させるような場面や、技を取り入れるようにしていたのだろう。だからジュピターが最初に出すのはアニメと同じシュープリームサンダーだし、レイも少し後の回でファイヤーソウルを出す予定になっていた。
ところがAct.6のオンエアを見た武内先生は、ちょっと不満だったわけね。それで白倉プロデューサーに電話して「どうしてジュピターは最初に原作どおりフラワーハリケーンを出さなかったの?」と問いただした。そこで休日の朝から東映で急遽ミーティングが開かれ、Act.8のファイヤー・ソウルも自粛することになった……と、だいたいそういう流れですね(だからここまですべて想像だよ、いや、妄想だよ)。
話がまた脱線した。戻そう。今日はラストシーンだ。つまりシュープリームサンダー一閃で妖魔を木っ端みじんにたたきのめした、というところまでいったはずだ。いよいよAct.6も大団円である。
何だか分からないけど変身しちゃった。じっと手を見るジュピター。
そこへ仲間が次々に姿を現し、声をかける。
セーラームーン「まこちゃん、私たち、仲間だったんだよ」
セーラーマーズ「最初に分からなかったのは、妖魔の術に半分かかっていたせいね。でも、もう男に惑わされるのも終わりよ」
マーキュリー「私たち、それぞれの力をもった戦士なのよ。あなたもその一人」
ジュピター「そうか……あたし、そうだったんだ……ずっと行かなきゃいけない気がしてた。その理由が分かったよ。失恋したせいじゃない。仲間に会うためだったんだ」
このエンディングは、かなり原作に忠実なんですね。ここまでの6話のうちで、最も原作へのリスペクトにあふれている回と言っても良いかもしれない。
ジュピター「…あたし…ね、スキだったセンパイに失恋して……前のガッコにいるのが、すごくつらくなったんだ。……でも転校を決めたのは、なんかいかなきゃいけないような気がしたから……風が、あたしをココにつれてきたんだ。……恋なんかよりもっとずっとたいせつなコトが、ココであたしをまっているって、だれかがそうささやいたんだ」
マーズ「そうよ、オトコのコトなんかで泣いているヒマは、ありませんわよ」
セーラームーン「あたしたちは仲間なのよ、まこちゃん」
マーキュリー「みんなそれぞれ力をもっている」
「風が、あたしをココにつれてきたんだ」いいセリフですね。そして風にざわめく木々の梢のカットを随所にインサートして、このセリフを見事に映像化してみせた舞原演出もご立派です。パチパチパチパチ。
さあこれで戦士が4人そろった。あとはプリンセスを見つけるだけだが、それも、正体不明とはいえセーラーVという目ぼしはついている。さあがんばるぞ、おー!と盛り上がって、仲間に笑われるセーラームーン。
そんな様子をひそかに伺う新たな敵、怪しいビョーキ気味の男ゾイサイト、以下、Act.7に続く……って、もういい加減Act.6レビューを終わりにしたいので、最後はバタバタなんですがすみません。おしまいッ!
あとあれがあったな。サントラ一覧表。これもやっちゃうぞ。ていうか、今回はこれがメインのはずだったが。
実写版Act.6使用楽曲リスト
【凡例】
- 「No.」の最初の2桁は話数(Act)、後半3桁は整理番号を示す。たとえば[06001]ならば「Act.06で001番目に流れた曲」という意味です。
- 「M番号」は、BGM収録時につけられた録音番号。「イメージ」は、大島ミチルがどのようなシチュエーションをイメージしてその曲を作ったかを示しており、必ずしも、ドラマ内での使われ方と合致するわけではない。なおBGM全曲リストは【第168回】にあります。
- 「DJM1」はアルバム『DJMoon1』(2004年2月18日発売)[CD12]の略(CD略号、収録曲目の詳細はこちら)。なお『DJMoon』シリーズは、しばしば短いBGMを、何曲かまとめて1曲扱いする。そのような場合の混乱を防ぐために、このリストではトラックタイトルの後に(1)(2)(3)をつけておく。たとえば[06004]の曲は<DJM1-9「私はお姫様(2)」>である。これは『DJMoon1』のトラック9「私はお姫様」の2番目の曲という意味。
- 「RTC」は3枚組メモリアルCDボックス『MOONLIGHT REAL GIRL』のDisc 1.『Rare Track Collection』[CD15]を指す。これは『DJMoon』シリーズに未収録のBGMを集成したアルバムである。
No. | シチュエーション | M番号・イメージ | CD番号・トラック名 |
06001 | バスケ少年タケル | ||
06002 | みんなタケルに夢中 | M44「期待」 | RTC-08「楽しい一日でした」 |
06003 | チンピラ三人組登場 | M46「潜入」 | RTC-10「抜き足差し足忍び足、ソロリソロリ」 |
06004 | 木野まこと颯爽登場 | ||
06005 | ダーク・キングダム | M30B「ダーク・キングダム(B)」 | DJM1-30「クイン・ベリル様」の別バージョン(CD未収録) |
06006 | 焦るジェダイト | M38「危機」 | DJM1-24「ウワー妖魔だー(1)」 |
06007 | なぞの転校生 | M9「ダイエット」 | DJM1-6「のんびりうさぎの一日(2)」 |
06009 | まこちゃんとお友達 | M6「夢」 | DJM1-9「私はお姫様(1)」 |
06009 | 商店街で遊ぼう | M5「遊び」 | DJM1-7「お買い物に大忙し(1)」 |
06010 | 4人目の戦士? | M37「驚き」 | DJM1-33「地場衛ことタキシード仮面(1)」 |
06011 | ボールから赤い光が | M38「危機」 | DJM1-24「ウワー妖魔だー(1)」 |
06012 | 写真にまこちゃんが | M44「期待」 | RTC-8「楽しい一日でした」 |
06013 | 恋愛なんて… | M17「いとしのタキシード仮面」 | DJM1-23「憧れのタキシード仮面(2)」 |
06014 | タケルからの手紙 | M48「悩み」 | DJM1-8「心細い一人のお留守番(2)」 |
06015 | 操られる少女たち | M39「これから」 | DJM1-24「ウワー妖魔だー(3)」 |
06016 | クラウンの3人 | M6「夢」 | DJM1-9「私はお姫様(1)」 |
06017 | ずぶ濡れのまこと | M11「涙」 | DJM1-13「女の子は、時々淋しいの(1)」 |
06018 | 許せない! | M29「クイン・ベリル」 | DJM1-31「ダークキングダム四天王(1)」 |
06019 | バスケット美少女戦士 | ||
06020 | 傷心のまこと | M41「不安」 | DJM1-12「悲劇の主人公(2)」 |
06021 | タケルのお出迎え | M39「これから」 | DJM1-24「ウワー妖魔だー(3)」 |
06022 | 騙してたの? | M11「涙」 | DJM1-13「女の子は、時々淋しいの(1)」 |
06023 | 3人組をとっちめる | M25B「タキシード仮面の行動(B)」 | RTC-4「スポーツの若大将」の別バージョン(CD未収録) |
06024 | タケルが妖魔! | M39「これから」 | DJM1-24「ウワー妖魔だー(3)」 |
06025 | いつも最後は一人だ | M48「悩み」 | DJM1-8「心細い一人のお留守番(2)」 |
06026 | まこちゃん変身して! | M19「セーラームーン」 | DJM1-16「不思議な魔法のアイテム(1)」 |
06027 | メイクアップ! | M14「セーラージュピターのメイクアップ」 | DJM1-20「セーラージュピターにメイクアップ」 |
06028 | 戦士が4人揃ったわ | M15「セーラーマーキュリーのメイクアップ」 | DJM1-19「セーラーマーキュリーにメイクアップ」 |
06029 | ゾイサイト登場 | M43「絶望」 | DJM1-12「悲劇の主人公(1)」 |
後の方になると顕著になってくる「BGMをあまり入れない舞原賢三」という傾向は、この段階ではまだ、あからさまには出てきていない。ひとつのエピソードでおよそ30曲というBGM数は、まあ普通というか、ちょっと多いくらいである。ただ、タケルへの恋心を弄ばれたまことがずぶ濡れのまま座り込んでいるところへ3人が駆けつけて、うさぎがまことの手を握る、という、このエピソードの中で最も情感が盛り上がるシーンを無伴奏で通したあたりに「おっ、やっぱり舞原賢三か」とチラリと思う程度です(BGMで言えば[6017]から[6018]までの間)。
それから、アバンの[06004]で、うさぎを守ってまことが登場するシーンのシンセサイザーの曲は不明。テイスト的にはAct.2の、ルナが「亜美ちゃん、受け取って」と変身ブレスレットを渡す場面や、マーキュリーが「マーキュリー・アクア・ビーム!」で妖魔を倒す場面のBGMと似ている感じがする([02020][02021])。これはちょっと死角であった。
未発表曲に関していうと、[06005]は、『DJMoon1』トラック30「クイン・ベリル様」からリード・ギターを抜いた、ベースとドラムだけのバージョン。うさぎたちがバスケ三人組をやっつける場面[06023]も同様に、ベースとリズム隊だけのバージョン。
最後の、4人が揃ってシーバンスの噴水が潮吹きする場面[06028]。ここのBGMはマーキュリーの変身テーマだが、前半部分がリズム抜きのストリングスオンリーのバージョンになっているのが印象的。
というわけで、Act.6レビューは、ひとまずここまで。
【今週のおまけ】
PGSM研究所と呼んでくださる方もいるこのブログだが、このたび客員研究員(無報酬)のKさん(仮名)より譜面とMIDIの音楽ファイルをご送付いただいた。前々回の記事で取り上げた、Act.10の妖魔ディーバ(仮名)の音楽攻撃「プリンセスへのレクイエム」を譜面に起こし、MIDIにしてくださったのである。
この妖魔が歌い出すと、口から殺傷能力の高い音符♪♪♪がばらまかれる。セーラームーンの背後からこれが襲いかかったとき、マーズはとっさに、身代わりとなって攻撃の♪を受け、意識不明になってしまった。
前世の記憶も何も無いのに、いざとなったら自分の命を賭けてプリンセスの身を守るあたり、やはり護衛戦士のリーダーである(ただしサブと呼ぶ人もいる)。それはともかくとして、この「プリンセスへのレクイエム」の譜面とMIDI、いずれAct.10レビューまで話が進んだおりに、活用させていただくことになるだろうが、現在のペースではまだ少し先の話になりそうである。それまでお蔵入りというのももったいないので、本日のテーマが音楽ということもあり、せっかくの御労作、ひとまずここでご紹介いたします。
すごいでしょ。弾いてみようという方は、近くに『かぐや姫』の絵本とか、沢井美優主演『白雪姫』のポスターなどがないよう、くれぐれも注意してください。燃えます。
こっちよ!さん、どうもありがとう。って名前書いちゃったよ。今年はゴールデンウィークのウルトラマンプレミアステージ、ありません。コノミちゃんも来ません。残念ですね。
んじゃまた。