実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第232回】DVD第2巻:Act. 6の巻(その18)

   

CD「美少女戦士セーラームーンSupers Christmas For You」(1995年12月1日発売)COCC-13058
No. タイトルtime
01赤鼻のトナカイ五人の戦士2:56
02ジングルベル水野亜美(久川綾)2:57
03聖者が町にやってくる月野うさぎ(三石琴乃)2:44
04おめでとうクリスマス愛野美奈子(深見梨加)2:19
05サンタクロースがやってくる火野レイ(富沢美智恵)2:41
06サンタが町にやってくる愛野美奈子(深見梨加)2:44
07ホワイト・クリスマス火野レイ(富沢美智恵)3:45
08クリスマスの歌木野まこと(篠原恵美)3:40
09アベ・マリア木野まこと(篠原恵美)5:12
10きよしこの夜五人の戦士 3:11
毎年12月になると、ついつい通勤中に聴く回数が多くなってしまうのがこのアルバム。
アニメ版のクリスマスアルバムは翌年も出ていて(「セーラースターズ Merry Christmas!」COCC-13827、1996年11月1日発売)、そっちは、オリジナルの「セーラームーン・クリスマス」や、美奈子が歌うユーミンの「恋人はサンタクロース」や、レイが歌うWHAM!の「ラスト・クリスマス」などが収録されている。
それに対してこっちは、スタンダードナンバーだけで固めた構成だが、それだけでも三石さん以下みんな、戦士のキャラクターになりきって歌っていて楽しい。加えてそれぞれ間奏にセリフが入る。たとえば2曲目、亜美ちゃんの「ヘイ!」のかけ声がキュートな「ジングルベル」。

亜美「ねえ、勉強のことは少しだけ忘れて、思いきり楽しみましょうよ。だって今日はクリスマスですもの」

はいはい。そして美奈子の6曲目「サンタが町にやってくる」。

美奈子「メリークリスマス!ねえねえ、サンタさんに何お願いした?私はね、素敵なカレ。去年も一昨年もそう。だって、いつだって恋していたいんだもん……そしてあなたにも、素敵な恋が訪れますように」

まったく……。
ただし木野まことだけはシューベルトの「アベ・マリア」なんか歌っている。これが良いのだが、しかし、たとえばこのアルバムで三石さんが完全にうさぎになりきって歌っているのと較べれば、一番まことっぽくないとも言える。最も、これは仕方ない話ではある。アニメでまこと役を演じた篠原恵美さんは、小さい頃からピアノや声楽を習っておられて、国立(くにたち)音大を卒業されていて、中学と高校の音楽教師の免許ももっていらっしゃるのである。そういう素地が、木野まことのキャラクターを越えてしまうわけですね。それでも8曲目の「クリスマスの歌」では「木野まこと」として、こんなふうに言ってくれている。

まこと「みんな、どんなクリスマスを過ごしている?もし、ひとりでこの歌を聴いていたとしたら、大丈夫、あたしがいるよ」

私は今年、ひとり異国でクリスマスだもんな。これを聴いて元気を出すよ「大丈夫、あたしがいるよ」。


さて自分の過去の記録を確認したら、去年の今ごろはAct.5のレビューのまっ最中であった。
このまま年間2エピソードのペースで進めていたら、全話を終えるまでに20年以上かかるし、それまで自分が生きながらえる確たる自信もない。困ったな、せめて年内には、このAct.6のレビューを終了したいものである。できるだけサクサク進みます(と言いながら、マクラでこれだけ道草食ってるんじゃなぁ)。本題。

1. フルコンタクト・ジュピター


というわけで、乙女心をもてあそばれて、傷つき帰宅したまことの前にタケルが現れる、

タケル「君だけが来てくれなかったんだね。迎えにきた。行こう、いっしょに」

  
タケルの差し出した手に、まことが自分の手を重ねると、そこから妖しい光があふれて、気がつけばどことも知れない、モノクロの異空間である。あたりには、タケルの追っかけをやっていた少女たちが捕われの身となって、ピクリとも動かないまま佇んでいる。


タケル「ヒヒ、フフフフフ……バカな女ども。
    くだらないあこがれで身を満たし……そのエナジー、いただこう」
  (少女の一人に手を伸ばすタケル。その手をつかむまこと)
タケル「なぜ術が!」
まこと「……騙してたの?この子たちみんな、あんたに憧れてたのに…」
タケル「お前もそうだろ」
まこと「あたしはどうでもいい。
     でも、こんなに沢山の子たちの気持ちを、弄んで良いわけない」
タケル「楽しませてやったんだ」
まこと「ふざけるな!」


乙女ごころを弄ぶタケル(実は妖魔だが、まことは、この時点ではまだ妖魔の存在を知らない)への怒りで、がぜんファイトを燃やすまことの鉄拳が炸裂。コロリと騙されちゃったのも恋心が原因なら、覚醒したのも恋心が原因である。
ところでこの場面、本当にタケルをなぐっているのかなぁ。渋江譲二はどこかで「Act.21でタキシード仮面がまことに殴られるシーンはマジだった」とぼやいていた。監督が「どうする」と尋ねたら、安座間美優みずから「ちゃんと殴りたい」と言って、実際、それほど手加減しているとも思えない一発がきたそうである。Act.6もAct.21も舞原監督だ(もっともAct.21は回想シーンなので撮ったのは前回の高丸監督かもしれない)。てことはこのAct.6で、すでに安座間美優がタケルをマジ殴りしている、っていう可能性はあるよな。いや、初登場回だし、とてもそんなことをする度胸はないか。

というようなことを考えながら、何度かこの「ふざけるな」の場面だけ繰り返して観ていたら、マジで一発入っているようにも見えてきた。でも実際どうなんだろうね。資料画像を出しておきますので、みなさんも考えてみてください……と言いたいところだが、さすがにキャプチャで「パンチ」や「キック」を的確に伝えることはできないよ。
ともかく、アクションシーンにおける安座間美優の動きのキレの良さは、後のエピソードのバトルシーンでは分かりやすく発揮されておりますが、このAct.6のラスト、変身後の「シュープリーム・サンダー! ……(はぁはぁ)」だけではちょっと分かりにくいんですね。でもここでタケルを殴るシーンを見ておけば、やっぱりアクターズでダンスをやっていただけあって、なかなかシャープで、すでに完成されているじゃん、と感心します。
その一方で「……騙してたの?この子たちみんな、あんたに憧れてたのに…」の「憧れ」の「れ」の発声に代表されるような滑舌の悪さは、いま現在まで課題として残っているように思う。ま、それを自覚しているからこそ、女優ではなくてモデル、というふうに自分の道を決めたのだろうが、ただこのセリフ全体に漂う静かな寂しさや哀しみは、すでにシリーズ後半の、元基との恋愛に悩む情感と通じ合うものがあって、安座間さんが自然体で木野まことというキャラクターをつかめていることが、よく分かります。

2. 円柱の問題



まことがタケルをぶん殴ると、このモノクロの空間にみるみる色彩がよみがえり、次の瞬間、意識もないまま囚われていたタケルのグルーピーたちは、こちらの世界に転送されて戻ってくる。おそらく、まことがタケルをぶん殴ると同時に結界が解けた、とか、そういうことなのだろう。我に返る、なるや香奈美や桃子。「あれ?」「何してたんだっけ」

ところで、このモノクロ画面で対話するまこととタケルの背景に、なにかギリシア・ローマ風の円柱とか彫像とかが並んでいる。そのあたりがもう少しハッキリするのが、なるちゃんたちがこっちに戻ってくる前に一瞬、この空間の全景らしきものがうつる場面だが、ご覧ください。ごちゃごちゃして意外に狭いスペース。なんか高校の美術準備室に詰め込まれていたみたいな感じだ。

円柱と彫像というモチーフが、ドラマ本編のなかに本格的に現れたのは、このAct.6が初めてだろう。まあ本編に限定しなければ、オープニング曲「キラリ!セーラードリーム」のバックで「前世の月の宮殿の遺跡で手をとりあうセーラームーンとタキシード仮面」という画があるから、Act.1から円柱が出てきているとは言えるけどね。


さあ、すいません。私これから土曜に続いて日曜も休日出勤だもんで、時間がなくなってきました。というわけで今回の記事の残りは、この「ギリシア・ローマ風の石柱と石像」(=前世の月の王国の記憶の残骸)が出てきた場面を、ぱっと思い出せるところだけ並べて終わりにしますね。
他にも「こんなシーンに出てきたじゃん」というのがあるはずなんで、よかったらコメント欄でご教示ください。

まずはAct.21。見どころは、亜美に倒れかかる円柱をジュピターが支えるシーン(の安座間美優のわきの下)と、初めてダークマーキュリーに変身した亜美の背後、保護者のクンツァイトの隣でさりげなく何か考えている「考える人」ではないかと思う。

クンツァイトは、とりわけこの「柱」に対する思い入れ、というか、恨みつらみが強い。Act.26、瓦礫の下で、息絶える前に、マスターへの呪詛のおたけびを叫ぶクンツァイト、その背後で死んじゃったゾイサイト、ネフライト、ジェダイト、というこの構図は、その後も何度か、前世の回想シーンとして繰り返し使用される。

だから、亜美をサディスティックにいたぶろうと思うと、どうしてもこの石柱とか、あるいは彫像が出てきてしまうのかもしれない。Act.28、異次元空間から脱出しようと思って何度トライしても、同じ石柱と石膏像のある場所に戻ってきてしまううさぎと亜美。これがクンツァイトのしかけた罠だ。
こちらから見て画面の右下すみに、石柱が倒れているのがお分かりでしょうか。あとはミケランジェロのブルータスとか、アポロとか、デッサン用に量産されているようなギリシア・ローマ時代の彫像。やっぱり高校の美術室だよこれ。
とはいえ、さっきはロダンの「考える人」だったし、ゾイサイトはもっぱらショパンを好んで弾くし、どうも超古代の月の文明は、その後の地球のあらゆる時代の芸術と無差別にかかわりをもっているようにも思える。

ほんとうに時間がなくなってきた。最後に、Act.35とAct.36から一枚ずつ。この神殿風の石柱は、美奈子にとっても不吉のシンボルだ。Act.35の最後に披露されるライブで、真ん中のバックダンサーが明らかにひとりだけ振り付けを間違えてしまったのである。いやそうじゃなくて、この直後に、美奈子自身が立ちくらみして倒れてしまうのである。もうひとつのAct.36は、前世のデートだ。実はベリルが物陰から、瞳を嫉妬の炎で燃やしながら見つめている。それにしてもマスターの白い衣装がハレーションをおこして大変なことになっている。
てことで、ごめん、本当に尻切れとんぼですが、今週はここまで。