実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第157回】Special Actの巻(21)


仕事を終えて帰ってきたら、家族がCBCでクイズバラエティ番組「世界ふしぎ発見!」を観ていて、ゲスト回答者が野口健と友近と、黄川田将也だった(第1060回「カリブ海の宝島 奇跡の大自然キューバ」2008年7月5日オンエア)。

私「うおっ黄川田君じゃん」
娘「誰それ」
妻「元基君」
娘「ああ。劇団ひとりかと思ってた」
妻「私も最初そう思った」

だめじゃん妻と娘。この間「平成教育学院」に安座間美優が出てきたときは「こんなにきれいだったっけ」「大きくなったぁ」「ひえぇぇぇ足長〜っ」だのと大騒ぎだったクセに、古幡についてはやたらとテンションが低い。それにしてもこのカップルは二人で交互に人気クイズ番組に呼ばれているわけで、凄いですね。
いや「カップル」なんて書くと、いつもご覧くださっている方々以外の人が誤解されるかもしれない。安座間美優と黄川田将也がカップルだというのは、実写版セーラームーンの役の上での話だから、くれぐれも早とちりしないでね。

1. うさぎの行くところ、火薬あり


さて、しばらくは脱線するような話題も少ないので、ざっくりと物語の展開を追っていこう。
新生ダーク・キングダムでは、術にかけられた地場衛が、四天王の立ち会いのもと、黒木ミオと誓いのキスを交わそうとしている。あとちょっとでキス。そこへお約束どおり「まもる!」とうさぎが乱入。
邪魔されたミオは口を尖らせて、それでもけっこう余裕である「もう、うさぎちゃん、だめだよ。衛くんは私のものだし。ねぇ衛くん。うさぎちゃんやっつけちゃって」と、衛に剣を手渡す。もはや自分の意のままになった衛を利用して、うさぎを殺させようというのだ。やはりこの人は、衛と結婚したいというよりも、うさぎを不幸にしたい気持の方が強いのだな。
衛は命じられるがままにうさぎに歩み寄り、いきなり剣を投げつけるが、うさぎは微動だにしない。この時のうさぎのポーズ、プリンセス・ムーンが入っています。
ほくそえむミオだが、衛が投げた剣は、わずかだが確実にうさぎを逸れて、後ろの壁に張られていたロープを切断しただけだった。ロープが切れると、天上に吊されていた垂れ引き幕みたいな布帛が落ちかかり、四天王を頭からすっぽり包んでしまう。
「何で!?」と驚きを押さえられないミオに、衛は「さっきのあいつの声でな」と答える。うさぎのハイトーンボイスは、たった一声で、衛に正気を取り戻させていたのだ。にっこり微笑みあう二人。

 衛 「お前、少しはよけろよ。ちょっとビビったぞ」
うさぎ「衛が正気かどうかぐらい、分かるもん」
 衛 「絶対なんとかして乗り込んでくると思った」

見つめ合う二人はもうミオなんか眼中にない。「逃げるぞ」とあっさりその場を脱出。垂れ幕に絡め取られていた四天王が、ひと呼吸おくれて後を追う。ミオはくやしい。「許さない!こんなこと絶対に許さないんだから!」と、Act.29でソフトクリームのコーンを潰したときみたいに、チャッピーをぎりぎりと握りしめる。
ロックハート城の階段を駆け下り、森の中を走っていく二人。だが、うさぎの行く手にはいつでも火薬が待っているのがセーラームーンの法則だ。ドカーン。「きゃあ」思わず足を止めた二人に、追いついた四天王が近寄ってくる。

2. 愛と青春のゾイサイト


このニセ四天王については、最初につくばのアイアイモールに姿を現したときはいかにも本物っぽく、そして登場シーンを重ねるにつれ、次第にニセ者らしさを強調するという、とても分かりやすい演出が施されていて、ここではもう完全にコミカルな感じになっている。面白いのは、そういうふざけた芝居をいちばん楽しんでいるように見えるのがゾイサイト、というか遠藤嘉人だ、というところだ。
白倉伸一郎プロデューサーによれば、四天王のなかでも特にゾイサイトは、最初のイメージとはまったく違うキャラクターになっていったという。白倉ブログにリンクを張ろうとしたら、当該日の日記が削除されているみたいなので、引用してみます。

正直にいうと、ゾイサイトという役と遠藤嘉人という俳優は、幸福な出会いをしてはいないと思う。
わたしたちの求めたゾイサイト像に、遠藤はハマってないし、遠藤本人のキャラや志向性に、ゾイサイトはハマらない。けれども、遠藤はその存在感と愛で、《遠藤嘉人のゾイサイト》をつくりあげた。
ゾイサイトという役を遠藤に寄せたわけでも、遠藤嘉人という俳優がゾイサイトにすり寄ったわけでもなく、新しい《実写版ゾイサイト》という人間を創出したのだ。

で、遠藤はその架空の人物を、心から愛した。というか、わたしたちには、「遠藤嘉人は嬉しそうにゾイサイトを演じている」と見えた。
そして、そのことは、わたしたちをも嬉しくした。
「マスター……」
のひとセリフで、現場を魅了するなんてことは、めったにある出来事じゃない。
「役と俳優の出会い」は、いつも考えていることだけれど、今回はケースがちがう。これは、『セーラームーン』という番組と、遠藤嘉人という人間が、幸福な出会いをしたケースなのだと思う。
(白倉伸一郎ブログ『A Study around Super Heroes』2004年8月24日「遠藤嘉人 VS ゾイサイト」より)

素人目に見ていても、実写版のゾイサイトって、四天王のなかでいちばん演じるのが難しそうな役だったと思う。たとえばクンツァイトなんか、物静かな青年シンが一転、威風堂々のクンツァイトになるあたりとか、マスターとの確執ぶりなど、演技を組み立てるうえで取っかかりになる要素が、けっこうあったような気がする。だからクンツァイトというキャラクターは、窪寺昭ほどのレベルは無理としても、どんな役者にもある程度は演じられる、と思う。でもゾイサイトには、そういヒントとなる要素が、ほとんど見つからない。
上の白倉ブログから考えると、ゾイサイトがそういう、とらえどころのないキャラクターになった一因は、スタッフと役者のすれ違いにあったようだ。白倉プロデューサーにとって、初対面の遠藤嘉人は、思い描いていたゾイサイトのイメージとは違っていた。遠藤嘉人は遠藤嘉人で、ゾイサイト役が決まってから初めて、アニメ版セーラームーンをビデオで見て「これがおれの役か」と絶句していたそうである。ご存じの通り、アニメ版のゾイサイトは、ことばも仕草もオネエ系で、明らかにクンツァイトと同性愛関係にある。そういう役をやるということになれば、当然いろいろ悩みもしただろう。だから遠藤君自身も、ゾイサイトというキャラクターに、いまいちピンとこないまま撮影に入ってしまったようだ。
こうして、スタッフも役者本人も、まだ試行錯誤の状態で登場したゾイサイトは、「ケケケケ」と陰気に笑う、なにやら捉えどころのない奴だった。それが最後には、あんなに魅力的なキャラクターになったのだから、遠藤君は偉い。もちろんその影には、白倉伸一郎や小林靖子を初めとするスタッフの努力もあったろうが、いまはとにかく、ゾイサイトを完全に手に入れた遠藤嘉人を讃えちゃおう。しかもそうなるために彼がとったアプローチというか演技プランがすごい。さっきの白倉ブログにこう書いてあった。

例えば「マスター…」っていう台詞一つにしても、ゾイにはその台詞をその瞬間その場所で言う理由が必ずあるはずなんです。
とにかく自分にとっての演技は上手に喋ることでも振舞うことでもなく、まず「生きる」ことです。(遠藤嘉人)

感動もんである。遠藤君はゾイサイトを演じたのではなく、セーラームーンの一年間、ゾイサイトを「生きた」のだ。だから実写版のゾイサイトとは、遠藤嘉人22歳の、二度と戻らない青春のモニュメントでもある。


爆発に足が止まってしまったうさぎと衛に迫る四天王(ニセ者)。窪寺昭のハイテンションはいつものこととして、遠藤嘉人のゾイサイトまで「これは最後のお祭りだし、設定はニセ者なんだから、これくらいやってもいいか」とばかりに変てこりんなポーズをきめて、いつになく陽性の魅力を振りまいているのは、そんなわけでとても楽しい。
だが今度は、かれらが火薬を食らう番だった。ドカーン!という爆発に腰を抜かす四天王(ニセ者)。いったい誰だ?

3. 四天王(本物)降臨


プリンセスとマスターをかばうように現れたのは、本物の四天王だった。本当にやって来た。

ゾイサイト「われらはずっと、マスターと共に」
ネフライト「何かあれば、必ず駆けつけます」

というFinal Actの約束はウソではなかったのだ。実際、この「四天王降臨」のシーンはFinal Actでの退場シーンと対をなすように構成されている。

  マスター「遅いぞ、お前達」
クンツァイト「さすが。ニセ者だと気づいていましたか」
  マスター「いくらお前達でも、あそこまで間抜けじゃないからな」
 ゾイサイト「マスター、ご冗談を」
   うさぎ「うそ、ニセ者?」
ネフライト「もう少し上等なニセ者にして欲しかったな」

クンツァイト→ゾイサイト→ネフライトというセリフの順番も、ネフライトが自分のセリフの時に、なぜか演歌歌手のように握りコブシを固めるのも、最後に映るジェダイトが、セリフを言わずにただ頷くだけというのも、すべてFinal Actの繰り返しになっている。
四人の剣先から放たれる光線が、ニセ四天王の正体を暴き出し、ニセ者達はただのピエロ妖魔に戻ってしまう。とそこへ、二人羽織をしながら現れる妖魔(金角)と妖魔(銀角)、そして新たなピエロ妖魔達。
迎え撃つ四天王のマスター、衛もエンディミオンに変身だ。とにかくこの人は、タキシード仮面にもなっちゃったし、ここでもあっさりエンディミオンになって、4年という歳月に対する屈託がまったくない。わりとのんきなのかも知れない。

 ネフライト「マスター、久しぶりに暴れますか」
  マスター「ああ」
クンツァイト「行くぞ」

のんきと言えばネフライトも相当なものだ。「久しぶりに暴れますか」って、4年前の一連の出来事を指しているわけではないように思う。4年前、ネフライトは志半ばにしてベリルの手で人間に転生させられてしまい、他の四天王はみな非業の死を遂げた。ベリルの元にいた時代の彼らに「久しぶりに暴れますか」「ああ」なんて語り合えるような戦いの思い出はない。だからこれは前世の超古代の地球の話なのだ。「(前世、よくやっていたみたいに)久しぶりに暴れますか」って、それはいくらなんでも久しぶりすぎるよ。
ヒトとチンパンジーが分化したのが500〜600万年前のことだというが、前世の悲劇は今の人類が発生する以前の話で、おそらく何千万年前、もしくは億単位の過去ではないかと思う。そのくらい「久しぶりに暴れますか」なんて、わりとあっさり言えるんだから、ネフライトってスケールが大きい。けっこうな大物か本物のバカだ。

4. クライマックス


「お前はここにいろ」とうさぎに言い残し、エンディミオンは四天王と共に妖魔(金角)(銀角)に立ち向かう。いままでこのブログでは(金角)(銀角)なんて書いてきたけど、聞いてみると初登場のシーンから一貫して(金角)は「ソード」、(銀角)は「シールド」と言っているので、やっぱり「妖魔(ソード)と妖魔(シールド)」にした方がよかったかなあ、とも思うが後の祭りだ。ま、とにかく、これで役者は揃った。ここからが林の中のクライマックスである。
話の上でのクライマックスはもちろん、このあと植物系のCG妖魔に変化した黒木ミオと、4年ぶりに変身したセーラー戦士たち(マーズ除く)が小山ゆうえんちで戦う場面なのだろうが、演出の流れからすると、最後の戦士たちの対決はごくあっさりしていて、アクション的ないちばんの山場はむしろ、ここから始まる四天王対ピエロ妖魔の林の中の戦い、そしてエンディミオンVS妖魔(金角)(銀角)なのだ。セーラームーンの話としては、それではちょっと困るんだけど、でもテレビシリーズでは最後までしがらみが吹っ切れなかった四天王が、ようやく勢揃いしてマスターと戦ってくれるのがすごく嬉しいし、アクションもなかなかの充実ぶりなので許してしまう。
四人揃っての戦いぶりをみていると、ようやく実写版の四天王の書き分けというのが明らかになってくる。まずクンツァイトは、ばっさばっさと妖魔を斬り倒す、トータルにバランスのとれた剣士。ゾイサイトは、なんか念力のような術を使って、ピエロ二人を意のままに衝突させる超能力者。ジェダイトは軽々とピエロ妖魔の頭上を舞い、背後に回って攻撃をかける敏捷な戦士。そしてネフライトは、とにかく捕まえたら片っ端から投げつけるというパワーファイターだ。
戦いの場における、こういう戦闘属性の違いは、残念ながらテレビシリーズでは明確に示されていなかった。せいぜい、Act.42で、四天王が前世で腕相撲をしているシーンがあって、みんながネフライトに挑戦する感じになっているところから、この人は腕力はいちばんなのだろうな、と思うくらいである。
このような、四天王それぞれの戦闘能力や属性の違いについては、原作漫画には特に何も語られていなかったように思う。ただし連載第14回の扉絵に、ちらっとこれを連想させる要素がある。この回はダーク・キングダム篇の最終回で、扉絵には次のような組み合わせのカップルが描かれているのだ。

プリンセスとエンディミオン
ヴィーナスとクンツァイト
マーズとゾイサイト
マーキュリーとジェダイト
ジュピターとネフライト

相思相愛なのだ。これはダーク・キングダム篇の終了にあたって、武内先生が「本当は、こういうカップルで前世の恋を描こうという計画もあったの」というメッセージを込めて描いたものだ。でも実際に漫画に出てきたのは「前世のヴィーナスはクンツァイトにひそかに想いを寄せていた」というエピソードくらいで、この組み合わせは、アニメにも実写版にも取り入れられなかった。ただスーパーファミコン版のセーラームーンゲームには、実は四天王とセーラー戦士でカップルが成立するとか、そういう裏設定があったという。
でここにもうちょっと、それぞれの戦士としての情報を入れ込んでみる。

ヴィーナス(「あなたはサブよ」自称セーラー戦士リーダー) クンツァイト(四天王のリーダー)
マーキュリー(素早く先回りして「こっちよ!」敏捷な戦士) ジェダイト(身軽に飛び回る敏捷な戦士)
マーズ(「妖魔退散」のお札を投げる霊感少女)       ゾイサイト(超能力の使い手)
ジュピター(力持ちの美少女)               ネフライト(力自慢の若者)

ね、武内先生がカップルを組ませたキャラクター同士で、属性がそこはかとなく対応するのだ。
と、ここまで書いたところですっかり朝だ。ゴーオンジャーも始まる。尻切れトンボですがこの辺で。あとでちょっと書き足すかも知れません。書き足さないかも知れませんが。