実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第155回】内向的な彼女の巻(北川景子)


ご存じの方も多いとは思うが、ひろみんみんむしさんのブログの何日か前の記事に「6月13日(金)深夜0:10、ドラマ24『秘書のカガミ』(テレビ東京系)第10話に渋江譲二が出演」という情報が出ていた。テレビ東京系って言っても、テレビ北海道・テレビ東京・テレビ愛知・テレビ大阪・テレビせとうち・TVQ九州放送ぐらいで、全国ネットではないらしいが。せっかく視聴できる地域に住んでいるんだから観ておきたい、ただうちの妻が観ている『探偵ナイトスクープ』と重なるんだよな、などと思っていたが、結局、子供を寝かしつけてそのまま寝てしまい、寝過ごした。最近はこういうパターンがものすごく多い。今週は高丸雅隆プロデュース『キミ犯人じゃないよね』も最終回だったのだが、これもしっかり寝過ごしました。ガシュン!

 


さて「北川景子、フジの月9ドラマ『太陽と海の教室』ヒロイン決定」の衝撃があちこちを駆けめぐった今週ですが、ちょうどほぼ同時期にYahoo!ニュースの芸能欄を飾った「視聴率最低朝ドラがDVDで1位」というニュースも、個人的には興味深かった。内容はタイトル通りで、NHKの「朝の連続テレビ小説」2007年度下半期の『ちりとてちん』が、放送期間中の視聴率は、NHK朝ドラのなかで歴代最低だったのに、最近発売されたDVDの売り上げでは、橋田先生の『おしん』を抜く史上最高記録をマークしたという話だ。
『ちりとてちん』って、私は正月休みに何回か観た程度なので、よくは知らないが、落語家を目指す女の子(貫地谷しほり)の話だった。遠藤理史プロデューサーは、廃れちゃった落語家一門を題材に、いろいろ個性のあるキャラクターが、仲違いしながらもチームワークで苦難を乗り切る話を描きたかったらしい。なんだか聞いたような話ですね。またWikipediaによると、このドラマは「緻密な伏線が張り巡らされており、劇中のさりげない台詞や小ネタが後の重要な場面につながっていくことも多い」んですと。これもなんだか聞いたような話ですね。まあともかく、これまで「視聴率」は、番組の質を考える参考にはならないが、人気の度合いをはかるバロメーターとしては、それなりに信用のある数字だった。でも以前に書いた『仮面ライダー電王』の件といい、この『ちりとてちん』といい、もう現在は、視聴率で人気度をうんぬんすることには、ほとんど意味がないのかも知れないですね。
というところで本題です。実は今回は北川さんの話。なんか最近『Special Act』レビューが2回以上続かない。

1. 不安

今日は皆さんに告知があります。

わたくし、CXの7月期連続ドラマ『太陽と海の教室』(毎週月曜21時放送)に
出演することになりました!

織田裕二さんが主演の学園モノで、
私はヒロインの新米の高校教師役です。


というのは、もちろん北川景子の新しいオフィシャルブログ『KEIKO'S BLOG』2008年6月11日の記事なのだが、これを読んで私、実にいろいろと考えてしまった。みなさんはどうでしたか。
新生北川ブログについては「本当に本人が書いているのか」とか「事務所のチェックが厳しいんじゃないか」とかいう声も聞くが、これまでの数回の記事を読んだ限り、どの程度の検閲があるのかは分からないが、基本的には北川景子自身が書いていると見て間違いないと思う。これはみなさんも同意見だろう。とにかく発想がユニークなのだ。たとえば、上の報告に続くこんな部分。

最初このドラマのお話しを頂いたときは
正直『私なんかでいいのかな…』という気持ちでした。

ドラマの仕事の経験はまだ充分じゃないし、
さらに前回のドラマの仕事からも結構期間が空いてしまっているので、

ドラマの演技ってどんな感じだったっけ?
ドラマの撮り方ってどんなだったっけ?
前のときはセリフってどうやって覚えてたっけ?

等々、不安が山のように押し寄せてきました。

それに私にとって、CXの月9のヒロインはもっと大物の女優さんが
キャスティングされるイメージだったので、
自分がやることに決まったときは大きなプレッシャーがのしかかりました。


ふつうのタレントだったら「やった!ついに月9のヒロインだ」と「そんな大役こなせるかなあ」という「撰ばれてあることの恍惚と不安と二つ我にあり」という感じの内容になるはずだ。ところが北川景子の場合、もうあきれるくらいに腰が引けている。しかも問題は、注目度の高い「月9」のヒロイン、というところにはない。いやそれも書いてあるが、より根本的な不安は、そもそも「ドラマの仕事の経験はまだ充分じゃない」「前回のドラマの仕事からも結構期間が空いてしまっている」というところにあるのだ。



でも不思議ですよね。確かに彼女のドラマ出演は『美少女戦士セーラームーン』(2003年10月〜2004年9月)と『モップガール』(2007年10月〜12月)の2作だけだ。そのどちらも主役級というのもすごいし、3回目のドラマ出演で早くも月9のヒロインという、ある種の人々にとって「頂点」と言ってもいいような座まで昇り詰めるのも、そんなにはない話だろう。そして北川景子は、そういう破格なステップアップを、自分の実力とうぬぼれるほど楽天的な性格ではない。だから「もっともっと何年も演技の経験をつんで、ちゃんと自信を持てるようになってから堂々と出たかった」と不安になるのも無理はない、とは思う。長年のファンなら、こういう彼女の反応を、北川さんらしいなあ、とひとまず思うことだろう。

2. 実情


しかし、その実写版セーラームーンと『モップガール』の間、彼女は実に8本もの映画に出演しているのである。なかにはほとんど「その他大勢」並みのチョイ役もあるが、主演作品2本も含まれており、結構なキャリアである。みなさんよくご存じだろうが、公開順に整理しておきます。

(1)森田芳光『間宮兄弟』(2006年5月13日公開)
(2)後藤憲治『水に棲む花』(2006年5月27日公開)
(3)ジャスティン・リン『ワイルドスピードX3 TOKYO DRIFT』(2006年6月16日全米公開)
(4)井上春生『チェリーパイ』 (2006年10月7日公開)*主演
(5)両沢和幸『Dear Friends』(2007年2月3日公開)*主演
(6)平川雄一朗『そのときは彼によろしく』(2007年6月2日公開)
(7)森田芳光『サウスバウンド』(2007年10月6日公開)
(8)片山修『ヒートアイランド』 (2007年10月20日公開)


これらのうち、昨年2007年に公開された作品に話を絞ると、4本中、何と言うか、純然たる「映画監督」と呼べるのは『サウスバウンド』の森田芳光くらいである。後はむしろ「テレビ演出家」「ドラマ監督」と言った方がいい。『Dear Friends』の両沢和幸監督も、初期にはピンク映画界で助監督をしていたが、基本的なフィールドはテレビドラマだし、平川雄一朗と片山修にいたっては、もともとがテレビの出で、『そのときは彼によろしく』と『ヒートアイランド』が、それぞれ初の劇場映画作品だったりする。
私は別に映画とテレビを区別してどっちが上とか下とか言いたいわけではない。逆に、現在の邦画界では、映画とテレビを区別することに積極的な意味がなくなっちゃっていると思うのだ。上に掲げたテレビ出身の演出家たちが、「劇場版」を作るにあたって、ことさらにテレビの時とは異なる語り口や撮り方を試みているようには思えないし、現場の空気だって、いつものドラマ撮影の時と、そう大きく異なってはいないだろう。だから我々は、北川景子に関して「2007年は、4本の映画と1本のテレビシリーズ(主演)に出演し、急成長した」というふうに、ぜんぶ「女優」のキャリアとしてひとまとめに数えたし、それで別に問題はないのである。ついでに言うと『モップガール』終了から今回の『太陽と海の教室』までのおよそ半年間に、映画『ハンサム★スーツ』の仕事(撮影期間は2008年3月2日〜2008年4月13日)が入っているから、今年に入って女優の仕事が久しく途絶えたわけでもない。
にもかかわらず、北川景子はなぜか「映画」と「ドラマ」を厳密に区別して「(映画はともかく)ドラマの仕事の経験はまだ充分じゃない」と考えて「ドラマの演技ってどんな感じだったっけ?ドラマの撮り方ってどんなだったっけ?」なんて強迫観念に襲われるのだ。
以前のブログが書かれていた期間は、ちょうど『Dear Friends』の制作時期と重なっていた。『Dear Friends』は、同じ主演作品でも『チェリーパイ』とは規模が違っていて、いわば事務所が、いちおしの新人女優北川景子を売り出すために立てたビッグ・プロジェクトであった。普通のタレントだったら「ここが一番」と気負いもプレッシャーも感じるところだろう。ところが、北川さんの旧ブログに、そんな重圧を感じさせる記事は見られなかった。少なくとも、今回のように「前のときはセリフってどうやって覚えてたっけ?」なんてパニックは起こしていない。北川景子にとって、映画は楽しい経験だが、ドラマは怖いのだ。ここはこのブログの、大きな読みどころだと思う。

3. 相談


で、そういう「漠然とした不安と恐怖心でどん底の精神状態」になっちゃった北川景子は、何人かの友人に自分の心境を打ち明ける。ブログで具体的に挙げられている名前は『ヒートアイランド』で共演したAAAの浦田直也と、安座間美優だ。この二人の発言もまた面白い。北川景子の「友人」観が伺われます。

たとえば浦田直也くんは「100人北川景子を好きな人がいれば、きっと100人嫌い!っていう人はいるとは思う。 でもそれでいいじゃん!そうじゃなきゃつまんないし!!いつもの北川景子で行けば問題なし!!! 」と励ましてくれたという。ポイントとなるのは「100人北川景子を好きな人がいれば、きっと100人嫌い!っていう人はいる」というフレーズだ。
小松彩夏にこんなことを言ったら、おそらく、自分を嫌いな人が100人もいるという指摘にショックを受けて、ブログで落ち込むか、もっと深刻なら、荷物をまとめて岩手に帰省してしまうだろう。だから姫のファンは「みんな彩夏ちゃんを嫌いなわけがないじゃないか」と必死で励まさなければいけない。小松彩夏は誉められて伸びるタイプである。
でも北川景子は逆だ。機嫌を損ねないように口当たりのいい誉め言葉ばかり並べると、かえって信用されない。「そりゃファンが100人いれば、アンチも100人いるよ、ああいう売り出し方をされている以上はね」ぐらいに辛口の批評を添えた方が、本気で考えてくれているからこそ、きびしい言葉も出るのだ、と信用されるのです。そのうえで「でもいいじゃん、もうそんなのはガンガンけちらしてこう、ライバルだらけの真昼」と背中を押してやるのが、正しい北川景子の励まし方だ。そうか。ありがとう浦田君。もし将来、北川景子に悩みを相談される機会があったら、そういうふうに答えればいいわけですね。


それからもう一人の安座間美優。これはもう、みなさん何度も読まれたのではないか。

モデル時代からの親友の安座間美優が
『月9ってかなりハードル高いと思うし、景子がもっと演技の下積みを積んでからって
思う気持ちもわかるけど、
それに抜擢されたってことは期待されてるってことだし、
景子を応援してる人も楽しみにしてる人もたっくさんいるから、
自信もって楽しんでやるのだ!』
と言ってくれました。


これについて「モデル時代から」ではなくて「セーラームーン時代からの親友」と書いてくれればもっと良かった、という意見があった。その気持ちは私もよく分かる。ひょっとして本人はセーラームーンと書いたのだが、事務所の検閲が入ったのか、という説もあった。それもあり得なくはない。が、しかし、私はこれ、やはり北川景子が考え考え、書いたと思うのだ。そして、もちろんこれは私の妄想だが、「モデル時代からの親友の安座間美優」という表現には、おそらく次のような背景があるのではないだろうか。



安座間美優】安座間美優は、小学生のころから芸能活動を始めているが、母親が元ファッションモデルということもあって、かなり早い時期から「将来の夢はモデル」というはっきりとした目標を持っていた。15歳で『ミス・セブンティーン』に選ばれたのは、そのキャリアへ向けての第一歩であった。もちろん、ああいう性格の人だから、女優の仕事をことさらに嫌がってみせたりはしなかったろうし、一時期は「女優にもトライしてみたい」などと言っていた時期もあった。でもそれは営業用の受け答えで、本音はずーっと「モデルになりたい」だった。
その後、自分のことばで自分の思いを語れるブログ『みゅうみゅう』を開設すると、彼女はしょこたんのジュピターのコスプレをYahoo!ニュースで見て「実写版でジュピターをやっていた子より似合ってたぁー!!」(2007年2月25日)と言ったり、「私は女優ではありませんがね。なるつもりもありませんがね」(2007年4月25日)と書くようになる。彼女に、セーラームーンの想い出を否定するつもりはないと思う。もしそうなら、元戦士たちと会うたびに、ブログで律儀に報告してくれたりはしないだろう。大変だったけど、楽しい思い出ではあるのだ。ただ、彼女自身の目指す夢は、女優としてドラマのレギュラーを取ることにはなかった、というだけの話だ。そういう自分の気持ちを、なんの飾りもなく素直に語れるところが、彼女の自然体の魅力である。そしてその魅力が周囲を動かし、現在の彼女のポジションをもたらしたのだ。安座間美優がいまいちばん輝いて見えるのはそのためである。


北川景子】北川景子は、最初モデルの世界に入ったけど、そこは何となく自分がずっと居る場所ではないような気がしていた。セーラームーンで一年間、火野レイを演じてみて、芝居の魅力に目ざめ、ようやく「女優になりたい」という気持ちが本格的に芽生える。でもはたして、自分にそれだけの技量があるかどうか、非常に不安でもある。どういうことかというと、努力型の沢井美優と天才型の浜千咲という、両極端のすぐれた才能にはさまれ、ある種の劣等感に陥ってしまったのだ。あの二人は、いろんな感情を上手に表現できるのに、私が気持ちをいっぱい込めて演技しても、後で出来あがった作品をみると、どうもおかしなところに力こぶが入っている。

そんな彼女のコンプレックスは、セーラームーン終了後も続いた。それでも、著名な監督から声がかかり、ハリウッド作品からのオファーがあり、主演映画が作られ、連ドラのヒロインになり、メジャーなCMの仕事がどんどん転がり込んでくる。女優になりたいという自分の希望を汲んでくれた、新しい事務所のバックアップは嬉しいが、これが100%現在の自分の実力にあった境遇であるようには、どうも思えない。
そこへ今度は月9ドラマのヒロインである。いいのか?もうそんな表舞台に出て。自分はもっと、たとえば、誰とは言わないが他の才能ある元戦士が、舞台をやったり、脇役をやったり、語学番組をやったり、単発ドラマで地道に演技を磨いているみたいに、きちんとした下積みを、もう少し重ねるべきではないのか。『モップガール』が終わってから、ちょっと考える時間ができただけに、内向的な彼女は、ますます悩む。そんなとき、安座間美優と二人で遊ぶ機会があった。
安座間美優は、北川景子と同い年だけれど、ミスセブンティーンとしては、ほんのちょっとだけ先輩だ。そしてプロフェッショナルという点では、出会った時点で、すでに親子ほどの違いがあった。北川景子は、自分がこの世界で何をしたいのか、まだよく分からないまま、セブンティーンモデルになったのだけれど、安座間美優はもう「ママみたいにモデルになりたい」という将来の夢をはっきり持っていた。そしてその夢に向かって着実に歩み始めていたのだ。一緒にセーラームーンのオーディションに合格して、一年間ドラマをやっていたときも、彼女のそういう気持に揺るぎはなかった。そして結局は、non-noからCancamへと、その夢を着実に実現したのである。
あっちへ行ったりこっちへ来たり、夢は女優と心に決めて、モデル業はほぼ引退したものの、まだ迷いの吹っ切れない北川景子にとって、真っ直ぐの一本道を歩んできた安座間美優は、なんと言うか、ものすごくまぶしい存在なのである。それで、そんなふうに自然体に生きてきた安座間さんから、凹んでいる自分にちょっと元気を分けてもらおう、と思ったら、案の定「景子を応援してる人も楽しみにしてる人もたっくさんいるから、自信もって楽しんでやるのだ!」と、まるでバカボンのパパのような口調で、力強く応援してくれたのである。安座間美優の言葉は、有無を言わせぬ幸福感を聞く者の脳に注入する。これは先日のトークライブで私も身をもって体験したところだ。かくして、北川景子は、自然体で正しく人生を生きる安座間美優の正しい言葉から、前向きに顔を上げるポジティブなパワーをさずかったのである。安座間さんって偉いなあ。
ということはともかく、そういう安座間美優に対する北川景子の思い(推定だが)を考えれば、北川さんが安座間さんのことを「元セーラー戦士仲間」ではなく、「モデル時代からの親友」と紹介するのは当然のことだ。北川さんにとって、安座間さんは初めてあった時から今まで、生粋のモデルなのである。

4. 結末


さあそして決め手のひと言だ。

さらにCXのプロデューサーの村瀬さんにお会いした際に
『どうして私がキャスティングされたのかわからない。』
と正直に話すと、
キャスティングの決め手を話してくださいました。
(ここに書くのは長くなるのでやめておきますが、)
一人一人のキャスト全員がきちんとした理由があって選ばれているということが分かって、
とても嬉しく思いました。


結局これだ。どうしてこのドラマに自分が必要なのか、なぜ私が選ばれたのか、プロデューサー(村瀬健)からきっちりと説明されて、ようやく北川景子は全面的に前向きになる。やれやれ。
さて、徹夜しちゃって朝になってきたので、そろそろ強引に結論に結論にもっていく。

なぜ北川景子は月9ヒロインと言う事実に素直に喜んだり、プレッシャーを感じたりする前に「自分にドラマに出る資格があるのか」などと、今さらのようにくよくよ悩むのか。あるいは、選ばれたチャンスを精一杯活かそうとか、そういう理由で単純に納得できないのか。そしてなぜ北川景子は、この2年ほどの間、何本もの映画出演のキャリアを踏んだにもかかわらず、ドラマの主演にこれほどのプレッシャーを感じるのか。
もちろん根本的な理由は彼女の性格にある。しかしセーラームーンも、かなり大きな要因になっている、と私は思う。
番組放送開始前に放送されたメイキング『メイクアップ!〜少女がセーラー戦士に変わるまで〜』をご覧になった方なら、制作発表記者会見終了後、抜き打ちで台本の読み合わせをやらされて、田崎竜太から冷静かつ厳しく「みんなそれぞれ課題があるよね。今はまだ完成度が低いです」と言われている5人の姿を憶えておられることと思う。あと、以前も引用したけど、『Act.ZERO』の特典映像(ロケ地めぐり)で、田崎竜太・沢井美優・渋江譲二のこんな会話もありましたよね。

田崎「鈴村君が、初めてセーラームーンをやるというので(東映の)No.8(スタジオ)に見学と挨拶に来たとき、ライダーで一緒だった田崎が、“オラァ!あざまー”とか声を荒げていてビックリした、というのを聞いたことはありますね」
沢井「だから、みゅうちゃんと景ちゃんはすっごい怖がってました」
渋江「景ちゃん、そうだ、そんなこと言ってたよ。中打ち(中打ち上げ)で“久しぶりに田崎さん来るんだって”って言ったら、“えっ、ウソ、わたし怒られる”って(笑)」



これが女優・北川景子の原点である。「いいねー、いいねー」とおだてて誉めて、モデルの気分を良くして、良い表情やポーズを引き出そうとするのがカメラマンの基本なら、ダメ出しを重ねて、プレッシャーをかけて、その俳優のもつ潜在的な才能をひきずり出そうとするのが、演出家や監督の基本である。北川景子は前者の世界から後者の世界に入って、田崎竜太をめちゃくちゃ怖がりながらも、そういう世界にあこがれた。びしばし叩かれて、自分のなかに潜んでいるものを引っ張り出してもらえる演技の世界に、より魅力を感じたのだ。
でもそういう、つらかったり大変だったりしたセーラームーンの一年間を原点と考えるがゆえに、「ドラマ」への出演は、北川景子に、映画出演とはぜんぜん異なるプレッシャーを与えた。北川さんにとってドラマとは、作品の設定、各キャラクターの必然性、演技の心構え、そんなあれこれを、びしばしたたき込んでくれる修行道場のような場なのである。
ところが、そういう「新人を初歩から一年間じっくり鍛える」やり方は、いまでは特撮ものというジャンルにしか許されていない。『モップガール』が放映されていた週末の深夜枠ならいざ知らず、ゴールデンのドラマというのは、11話かそこらで終わるし、視聴者の多くも、俳優の成長をじっくり見守るこらえ性を失っている。だから、台本を渡せばすぐにそこそこ演じられる「できあがった」プロの役者と、とりあえず数字を稼げるアイドルを揃えた、厳しさも緊張感もないテレビドラマが量産される(推定)。でもドラマ3作目の北川景子は「どうして私が」と思う。生徒役だったらもっと楽しい気持で臨めたろうけど、先生で、しかもヒロインで、主役の織田裕二と同じ国語の先生という、ややこしい役だ。こんなややこしい役が、なぜ自分のところに来たのか、説明してほしい。
セーラームーンだったら、田崎監督がじっくり説明してくれた。でも今回はゴールデンの注目ドラマなので、どっちかというとマスコミ対応が忙しく、自分の役の意味を考えることもできないし、どうしていいのかわからない。まあそういうあれやこれやがあって、おそらく北川景子は混乱してしまったのである。それが要するに、この2008年6月11日の記事だと思う。字数を費やしたわりに舌足らずな説明ですまないが、私はこれを読んで、北川さんは本当に、セーラムーンの一年間を大切に思っているんだなあ、と深く感動した。
とにかくがんばれ、北川景子。



以上を踏まえて、マスコミは「女優の安座間美優」とか書くのを金輪際やめて欲しい。って、今日は北川さんの記事だったのになんでこういう結論に。