実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第140回】Special Actの巻(10)

1. また関係のない話を、ついうっかりと(わざとじゃないのか)


NHK教育テレビは何年かに一度、番組編成の大がかりな模様がえをする。この4月はそういう年度らしい。基本的な外国語講座は、これまでの『○○語会話』から『テレビで○○語』にリニューアルされる。また新しいタイプの語学番組として、わかぎゑふ原作・純名りさ出演(声)のアニメ『リトル・チャロ 身体にしみこむ英会話』が始まる。さらに昨年パイロット版が放送された「小学校低学年の子どもたちに、快適な朝の目覚めを提供する知的エンターテインメント番組」(とNHK自身が言っている)『シャキーン!』をレギュラー化し、これを『おはスタ』にぶつける。
と、いろいろあるわけだが、最大の話題はやはり『おかあさんといっしょ』歌のお姉さん&お兄さんの、5年ぶりの交替だ。第21代目お姉さんとなる三谷たくみ(三谷卓美)さんは鎌倉市の出身で、洗足学園音楽大学で声楽を専攻され、間もなくご卒業されるソプラニストである。第11代目お兄さんの横山だいすけ(横山大介)さんは千葉県出身で、国立(くにたち)音楽大学声楽科を卒業後、劇団四季に所属して、『ライオン・キング』や『ジョン万次郎の夢』でアンサンブルの一員を務めておられた。
お兄さんがミュージカルからの転身というのは、今回を含めて三代ほど続いている既定路線である。一方、お姉さんの方は、もう20年間ぐらい前から、現役もしくは卒業したての音大生から起用されるのが通例だった。みんな素人同然で、だからはじめのうちは見るからに危なっかしかった。神崎ゆう子の後を承けた茂森あゆみも最初はガチガチだったし、その茂森あゆみが『だんご三兄弟』で大ブレイクした直後に交替したつのだりょうこは、番組の構成自体に大幅な手入れがあって、スタッフも試行錯誤していた時期だったために、大変な苦戦を強いられた。しかし2年目が終わったあたりから、実にのびのびと個性と才能を発揮するようになった。そういうプロセスを見守るところに『おかあさんといっしょ』の醍醐味がある(そうなのか?)。
ところが現お姉さんのはいだしょうこは、宝塚歌劇団からのリクルートという異例のキャリアで、キャラクターこそ天然ボケだが、歌も踊りも初登場時からほぼ完成品に近かった。「すごいなあ」と感動する反面、普通の音大生が「歌のお姉さん」になっていく変貌と成長の過程を楽しめなかったのは、ちょっと残念だった。
その点、今回のたくみお姉さんは、見るからにものすご〜く素人っぽい。しかもはいだしょうこの後任である。最初はもうボロボロのグダグダなんじゃないだろうか。って私は何を楽しみにしているのか。っていうか、私はそもそも何の話をするつもりだったのか?
ええとつまりそういうわけで、結論としてはNHK教育もこの春は大幅な改装があって『テレビでフランス語』の第1回放送も近づいてきた。みんな、がんばるぞ。お〜!(ひとりにしないで)。
でも、『おかあさんといっしょ』リニューアル記者会見の時の、先代から新お姉さんへのアドバイスが「子どもたちから風邪をうつされないようにね」というのはすごい。はいだしょうこ、無敵の天然である。


追記】というのは、お読みいただいたとおり、たくみお姉さんだいすけお兄さんデビュー前に書いた記事である。しかし、いざフタを開けてみたら、おねえさんは「最初はもうボロボロのグダグダなんじゃないだろうか」という上記の予想が大ハズレだったことはご存じの通りだ。そのほか記事の中に間違いもあって、後日改めてそのへんのことをここにまとめたので、「三谷たくみ」のキーワードでここにたどり着かれた方は、よろしかったら併せてお読み下さい。

2. 地獄の道化師(は江戸川亂歩の小説の題名)


ドナルド道化といえばサーカスの人気者だが、反面、恐怖の対象だったりもする。『バットマン』のジョーカーとか、スティーブン・キングの『IT』に出てくるヤツ、とかね。キングの『IT』は「道化恐怖症」(coulrophobia)という言葉を生み出したとさえ言われる。そのせいで、世界的に有名なハンバーガーチェーンのピエロにおびえる子供が増えたとか。まあここまで来ると都市伝説のたぐいだが、実際あいつちょっと不気味だ。
ともかく黒木ミオ、不気味な道化師たちを引き連れての再降臨である。指を弾けば、画面の左右からその道化師たちが軽やかに飛び込んできて、アクロバットを繰り広げる。それを笑顔で見ながら、さらに2体の、仮面ライダーの使い回しのようなデザインの怪人を生み出し、自分自身も真っ赤なハートをあしらった黒いドクロのドレス姿に代わる。すると踊っていた道化師たちは、一糸乱れぬ動きでその前にかしずき、忠誠を誓う。ミオは満足そうな笑顔で、子犬のチャッピイとバトンを手にポーズを決める。番外編でようやく回って来た有紗の花道だ。可愛いですね。
しかしこのシーン、観ていると考えなきゃならん問題が続々出てくるのね。
(1)まずは本編との関連。テレビシリーズでも、Act.8とか、Act.22とか、ええと、まだあったような気がするが、ともかく道化師が登場したエピソードはいくつかある。そして『Special Act』には、それらをちょっとずつ意識しているのかな、と思えるところがある。たとえばAct.8は「いざという時にレイが戦闘不能になる」という後半のプロットが『Special Act』の原形っぽいし、Act.22のダークマーキュリーに、ミオのイメージが重なる、とかね。そういう問題も、時間があればじっくり考えたい。
(2)それから音楽。昨年暮れにBGM一覧表を作ったものの、その後の作業が進んでいない実写版BGMデータ整理だが、この『Special Act』には、ちょこちょこ大島ミチルのスコアとは違う曲っぽい音源が使われていて、何か、扱いがやっかいそうだ。ともかく、道化師たちが躍り出るこの場面のジャズ調ナンバーは、明らかにどこかから持ってきた曲である。それから、何と呼ぶのか「新・黒木ミオのテーマ」これはどうだ。これは大島ミチルが改めて作曲・録音したものか。でもその可能性は低いように感じる。選曲の金成謙二さんが、自分が過去に関わった特撮番組からとってきたと考えていいのかなあ。
(3)あと、この道化師たちや怪人たちは「妖魔」なのかどうかってことも問題だ……と思ったんだが、これは最後まで観ていれば簡単に解決する。エンドクレジットに「道化師たち」あるいは「クラウン」「ピエロ」という役名は見あたらなくて、代わりに「妖魔」の役として、ジャパンアクションエンタープライズの藤榮史哉・佐藤義夫・佐々木義紀・斉藤英長・佐藤賢一・花川仁教・中島俊介、それに林潤・四方宋・稲田芳寛、と計10名の名前が挙げられている。10人。さっきの賑やかな登場シーンは、ざっと見たところ総勢14、15名だからちょっと足りないが、この10名が、怪人と道化師たちを演じたと考えて間違いなさそうだし、クレジット上それは「妖魔の役」として扱われている。少なくともスタッフ(もしくは小林靖子)は、彼らを「妖魔」と見なしていたわけだ。それもこの道化師たち、全体的にザコキャラ的な扱いなので、テレビシリーズ本編で言えば「泥妖魔」に相当する存在と考えていいだろう。
(4)さらに、最も基本的な疑問として、消えたはずなのに復活し、以前のベリルのように妖魔をあやつる、この「黒木ミオ」って結局は何者よ?ということがある。う〜ん。ちょっとここでいったん区切って、そもそも黒木ミオって何者なのか、おさらいしてみましょう。

3. 黒木ミオとは何者か(少なくとも黒木マリナではない)


黒木ミオの初登場はAct.29(2004年5月1日放送)だった。その前のAct.28(2004年4月24日放送)が「お帰り、亜美ちゃん」の回で、オープニングもエンディングも特別な、シリーズの大きな節目だった。だから私としては、十番中学校も、ここでひとつ大きな区切りを迎えた、と解釈している。要するに4月の新学期だ。もちろん誰も3年に進級していないし、担任の桜田先生もクラスのメンバーもぜんぜん変わらない。これを「全員留年」と見る向きもあるが、IQ300の亜美が留年するわけがないので、たぶん石原慎太郎が、何かの考えで麻布十番だけを「教育特別実験地区」に指定して、むりやりアメリカ式に9月始まりになる新年度制を実践してしまって、都議会や国会で非難の的となっているとか、そういうウラ設定があるのだろう。
そういうわけで、4月の新年度ならぬ新学期の日、十番中学のみんなにまず飛び込んできたビッグニュースが「黒木ミオ、2年1組に転校」なのであった。人気急上昇中のアイドルが突然クラスメートになったわけで、モモコ、カナミ、なるはもちろん、ひこえもんまでもが夢中である。でもミオは、スターぶったりせず、誰とでもオープンに話す気さくな人柄(のフリ)で、たちまちクラスメートの信頼を得る。そうしておいて、体育のバレーボールの時間には、ひそかにうさぎを蹴っ飛ばしたり、うさぎを中傷するデマを流したり、来るはずのない愛野美奈子シークレットライブを企画してうさぎを嘘つきにしようとしたり、陰険な罠を次々に用意してうさぎを陥れようとする。
って、ミオの本来の目的はうさぎをいじめることだったのか?
そもそも黒木ミオは、ベリルがジェダイトに命じて作らせた存在だ。その誕生はまずAct.27冒頭のベリルとジェダイトの間に次のようなやりとりで暗示される。

ベリル「幻の銀水晶がプリンセスの身体にあるとして、どうしてそれを手に入れるかだが…」
ジェダイト「それを調べるにはプリンセスに近づく必要があります。この件すべてお任せください」

さらに、Act.29の初登場シーンに先だって、二人はこう話している。

ベリル「見える。わらわが地上に君臨する、この星の未来が。エンディミオン、近いうちに必ず会える。今度こそ…」
(ジェダイトが入ってくる)
ベリル「ジェダイト、例のものは?」
ジェダイト「ベリル様にお貸しいただいた力で、予想以上の出来です。必ず幻の銀水晶を手に入れるでしょう。
ベリル「楽しみだな。わらわの力が加わっているとなればなお」

という、以上の会話から、名古屋支部ではだいたい次のような経緯を推理しておる。
(1)最初はジェダイトが一人で、月野うさぎの身辺調査用ロボットとして、黒木ミオを作ろうとした。
(2)こういうときのベースとなる素材は、亜美がダーク化した時など、あたり一面に散っていた、あの黒い花びらのような、羽のようなひらひらした物質だ。あれを大量に集めて、固めて、そこに生命(エナジー)を吹き込むと、一種の疑似生命体が誕生するのだ。
(3)ジェダイトは「悪物質」(あの黒いひらひら。勝手に命名)から人造生命体を創造することに成功した。しかしヘタレなので、彼が注入するぐらいのエナジーでは、そいつは目を開けて動き出さない。天馬博士が鉄腕アトムを創造する場面では「電圧が足りない」という理由でなかなかアトムが動き出さないが、だいたいあんな感じだ。そこで、見かねたベリルが手助けして、ジェダイトにエナジーを貸してやる。その膨大なパワーを利用して、黒木ミオはようやく命を得た。
(4)そもそもジェダイトは、憧れであり心の妻であるベリル様を想い描きながら、黒木ミオの外形を創造した。だから派手で男好きのする顔をしていてダークでケバく美しい。その割にセクシーさが足りないのは、ジェダイト自身の経験不足だ。とにかく、モデルがベリルその人だけに、ベリルが注入したエナジーとの相性は抜群で、まるで自然な生命体のように、ベリルそっくりの感情で振る舞うようになった。さらには、ベリルと感覚をシンクロさせて、ミオが見たり聞いたり触れたりしたものを、ベリルがまるで自分の経験のように感知する、ということまでできるようになった。

4. ボディ・アンド・ソウル(身体と心)


以上、Act.27やAct.29のダーク・キングダムでの会話を聴く限り、もともと黒木ミオは、ジェダイトからの命令を受けて、その指図どおりに動くロボットとして創造されており、「プリンセスの身体から幻の銀水晶を取り出す方法をさぐる」という指令がインプットされていたようだ。十番中学に転校する前に、芸能界にデビューしたのは、うさぎを探ると同時に、守護戦士たちの中でも最大の要注意人物、ヴィーナスを牽制できるポジションを得たかったためであろう。そういうわけで、ミオは「愛野美奈子のライバル」としてのアイドルの地位を手に入れてから十番中学にやってきた。そしてうさぎに接触をはかる。ここまではまあ、設計者、つまりジェダイトの思惑通りだ。
がしかし、ミオが中学で始めたことといえば、うさぎへのイジメであり、その行動を裏づけるのは、ベリルの強烈な嫉妬の感情である。衛のような「恋人」、なるや亜美といった「親友」、美奈子のような「忠実なしもべ」、そういう、プリンセスを取り巻く人々の友情や忠誠心を知るびに、ミオは怒り狂い、ソフトクリームを握りつぶし、うさぎと彼女たちの絆を引き裂くために、「幻の銀水晶をさぐる」という本来の目的とはおよそ異なる行動を始めるのである。つまり、もともとベリルの似姿として創造されたミオが、ベリルの感情とあまりにシンクロしちゃったせいで、ジェダイトの命令を無視して勝手な動きを始めるのだ。
ただ、だからといって、ミオはベリルの操り人形になったわけでもなかった。ダーク・キングダムの一角に自分の部屋をもって、ベリルその人や四天王と顔を合わせることもなく、わりと自由にやっている。つまり黒木ミオはベリルの完全コピーではなくて、あくまで独立した一人格だ。
どうしてミオが、完全なベリルの「影」にならなかったのかというと、ひとつにはジェダイトが、ベリル様の胸の谷間を直視できないウブな少年だったからだと思う。だからジェダイト作の黒木ミオには、ベリルが持っている大人の世界の、たとえば石田純一と杉本彩がデュエットする『逆にそれって愛かもね』のような、すましたウラにある男と女のドロドロ感がない。ダークな中にも清純さを秘めた美少女なのだ。この点が、ミオがベリルとは違う人格として独立してしまったひとつの理由ではないだろうか。
それにもうひとつ言えば、本家のベリル自身の野望も、物語の後半では迷走している。この人の目的は、女王として君臨することなのか、メタリアの力で世界を滅ぼすことなのか、それともエンディミオンの気持を自分に向かせることなのか。ベリル自身の意志が揺れていたように見える。そういうこともあって、ミオはベリルの完全なコントロール下に入らず、独立して行動するようになった、とも考えられる。
と、ここまでいろいろ書いてはみたが、結局のところ、Act.48でメタリア化した衛・エンディミオンの一撃を受けて散ってしまったミオが、4年後の『Special Act』に復活したのは何故か、根本的なところは、結局よく分からない。ていうか、状況を整理して、考える前に朝が来た。
ともかく、なにか残留思念が残っていて、それが再び具象化したっていうことなんだろう。クイーン・セレニティがルナに「本当に大変なことがおこるかも知れませんよ。邪悪な力を感じます。何かが目覚めようとしているような」と言っているところから判断すれば、ひょっとするとそれは宇宙規模での、宇宙線放射か何かの狂いなのかなあとも思う。よく分かんないですが。

5. 戦士行きつけの病院「十番病院」(行きつけの美容院はMARIS)


そんなふうに、夜の「ピエロの王国」で、ダーク・キングダム復活前夜祭が密かにおこなわれ、一夜明けた翌日。場面は病室で、綾波レイのような包帯ぐるぐるの状態で苦悶するレイちゃんだ。「港区立十番病院」、ロケ地は川崎市立川崎病院、Act.11で、交通事故で入院中の美奈子を見舞うためにうさぎとまことが潜入した病院だ。Act.21で、ダーク化の進んだ亜美が、回転木馬で気を失ない、元基とまことに担ぎ込まれた病院だ。そして何よりもAct.45で美奈子が緊急入院した病院である。ついでにAct.33で亜美のママが勤務している病院でもある。ってちが〜う。あれはあくまで「明和大学病院」であって、ものすごく瓜二つだが「港区立十番病院」ではない。
Act.44、改心したゾイサイトが、妖魔の攻撃からプリンセスの身を守って果てる。その一方では美奈子が戦闘中に立ちくらみだ。そしてAct.45の冒頭で、美奈子は十番病院に担ぎ込まれる。手術室の前で不安げに見守るまことと、そこへ駆けつける亜美「ちょっと普通じゃないっぽいんだよね」。そして病室では、手術を受けるよう美奈子に勧めるアルテミスに、とても死期が近づいているとは思えない、セクシーで健康的なタンクトップの美奈子が、絶縁宣言を突きつける。その現場を聴いてしまうまこと……。とにかく、かつて美奈子が入院して、そこから旅だって、二度と帰って来なかった病院である。
レイはそんな美奈子への友情と祈りを込めてFinal Actを戦った。そしてこの『Special Act』で、今度はレイが負傷して、十番病院の、たぶん美奈子と同じ病室に入院している。今度は美奈子が戦う番だ。
と、考察はまだまだ不十分だが、このあたりでタイムアップだ。続きは次回。