実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


最新記事〕 〔過去記事〕 〔サイト説明〕 〔管理人

【第131回】Special Actの巻(3)

えーとまずは私も唱和しておきますね。受験生の皆様の御武運と、英語リスニング機器が無事に稼働することを祈りまして


  スゴイぞセンター試験!!!!!

  なんでだセンター試験!?!?


しかしあれだよな、関西支部の報告によると、安座間美優が降臨した大丸神戸店のLANCOMEのイベントは、人集めの館内放送が何度も行われたり、通りすがりが多かったりしたそうである。みんな「ジュピターは永遠だから(いつでも見られるわ)」とでも思ったのかなあ。いっそう奇麗になった安座間さんを拝めるチャンスだというのに、もったいない。あのメアリージュンだって一緒だったのに。といってもどんな方か、私にはよく分からない。メアリージュ〜ン、なんてごまかして歌ってみても、浮かぶのはつのだ☆ひろの顔ばかりだ。
大丸と松坂屋は経営統合したはずなのだから、松坂屋本店にも来て欲しかった。次はぜひ来て下さい。平日だと私は行けないかも知れないが、カシオペアさんがきっと行く。

1. たいせつなヘルメット


というわけで『Special Act』レビューの続きだ。ようやくアヴァン・タイトルを終えて、本編でございます。と思ったが、その前にオープニング・タイトルだ。しつこいね。
それぞれの道を歩き始めた、かつての仲間たちの現在に想いを馳せるうさぎ。ふと我にかえれば、時計は8時50分を過ぎている。「やだ、遅れちゃう!後かたづけ、お願い」出来そこないのオムレツを、ほとんど投げだすようにママとルナの前に突き出して、うさぎはあのAct.1の朝のように、家を飛び出していく。でも学校に行くのではない。待ち合わせの場所で、バイクにまたがり、笑顔で待っているのは、もちろん彼だ。

「そして、地場衛。話せば長い、あんなこととか、こんなこととか、まあいろいろあったりしましたが、ついに来週、私たち、結婚します!」

うさぎがバイクの後ろに乗ってスタート。同時に「Here we go! 信じるチカラ」のイントロが流れて、メイン・タイトル『美少女戦士セーラームーン Special Act』。ようやく本編の始まりである。
いや、まだ本編に入らない。タイトルバックで語りたいことが色々があるのだ。まずは2人がかぶっているヘルメット。衛は黒い帯の入った銀のメットにゴーグル、うさぎはつばの部分が白い赤のメットである。


テレビシリーズ本編で、衛がバイクに乗る場面を、いま思い出せる限り挙げてみる。え〜と、Act.13、Act.15、Act.43、Act.48ではうさぎを乗せて走る。Act.17とAct.19では陽菜とタンデム。単独走行はAct.35。それからAct.18では、乗ってはいないけど、翌日、結婚式の下見に教会へ行こうと相談している衛と陽菜の背景に、バイクが置かれている。そしてFinal Act(Act.49)のラストでは、帰ってきたうさぎと再開を喜ぶ戦士たちを、バイクにまたがって遠くから見守る衛の姿が、ちらっと出てくる。
これらのシーンでは、バイクはどれもナンバーも一緒だし、同一のもののようである。一方ヘルメットは、基本的には、衛が黒のフルフェイス、同乗者は同じデザインの白というパターンだ。しかし例外的に、衛が中央に黒いラインの入ったシルバーの半キャップ型ヘルメットにゴーグル、同乗者は、つばの部分だけが白い赤の半キャップという場合がある。でも、衛が半キャップで、後ろに乗る子がフルフェイスという場合もあって、組み合わせはちょっとややこしい。一覧表にしてみた。

Act.13  衛:半キャップの銀   うさぎ:半キャップの赤
Act.15  衛:フルフェイス黒   うさぎ:フルフェイス白
Act.17  衛:フルフェイス黒   陽 菜:フルフェイス白
Act.18  衛:フルフェイス黒   陽 菜:フルフェイス白
Act.19  衛:半キャップの銀   陽 菜:フルフェイス白
Act.35  衛:フルフェイス黒     (同乗者なし)
Act.43  衛:半キャップの銀   うさぎ:半キャップの赤
Act.48  衛:フルフェイス黒   うさぎ:フルフェイス白
Act.49  衛:フルフェイス黒     (同乗者なし)

要するに、どちらも半キャップという組み合わせは、うさぎが後ろに乗るAct.13とAct.43だけで、それ以外は、同乗者がうさぎであれ陽菜であれ、フルフェイスの組み合わせだ。ただしAct.19だけは、衛はキャップ型をかぶっていて、陽菜がフルフェイスという珍しい例が見られる。いずれにせよ、陽菜は赤いキャップ型ヘルメットをかぶったことがない。それはうさぎだけのものだ。
そうすると、キャップ型ヘルメットが重要、ということになる。でも私の主観的な印象では、フルフェイスの方がデザインも統一されているし、「タキシード仮面の黒」「うさぎの白」ということで、色の方もイメージが考慮されているように思う。それに較べてキャップ型の方は、ふたつのヘルメットの色とデザインの組み合わせがイマイチというか、なんでこういうふうになったのか、よく分からない。
でもそれは私がモーターサイクルに乗らないので、そういうセンスに欠けているだけなのかも知れない。ライダーの方々なら、もっと違う意見もあるかもね。もし、これを読んでいるバイク乗りの方がいたら、ご感想を聞かせていただきたいものです。万丈。あと衛のバイクについての説明とかも。万丈万丈。
ともかく、ドラマの小道具として見た場合、キャップ型ヘルメットとフルフェイスの違いは明らかだ。顔が見えるか見えないか。画面で人物の表情が拾えるか拾えないか、その点に尽きると思う。さてそこで、どうして上の表みたいに、エピソードごとにかぶるヘルメットの組み合わせが微妙に違っているのか、その理由をちょっと考えてみた。いいですか、私が「考えてみた」んですよ。調べたんじゃない。つまりここから先の記述は、例によって私の妄想だ。裏付けとなる資料とか、関係者インタビュー記事は一切ない。ぜんぶ創作だから、くれぐれもお間違いなく。

2. メット物語


【Act.13】実は、もともとスタッフがAct.13のために用意していた衛とうさぎのヘルメットは、黒と白のフルフェイスだったのである。しかしそれを見た舞原監督は即座に「駄目だ駄目だ!なに考えてるんだ」とスタッフを叱りつけた。
舞原「いいか、今回うさぎは、Act.7のドキドキから、また衛に少し気持ちが傾いて、それをちょっとだけ自覚するんだ。2人の気持ちが7センチだけ近づく。ものすごく繊細なエピソードで、カギは沢井の表情だ。まずツーリングの道中で、後ろにいるうさぎが、風を受けて走っているうちに、だんだんと気持ちがほぐれて、ほっと落ち着いた顔になる。衛の背中に安らぎを感じて、柔らかい笑顔を浮かべる。そういう表情の変化が絶対に、いいか絶対に必要だ。それで初めて鴨川の会話と肉まん半分こにつながるんだろうが。なのにお前らなあ、役者の顔が見えないこんなヘルメットもってきやがって。アホか。すぐ顔が見える形のやつに代えろ!!」
美術チームはその剣幕に慌てたね。で何とか、顔の見えるヘルメットを調達してきたんだけど、なにしろ急なことだったんで、デザイン的に統一されていない、シルバーと赤のキャップ型になった。でも舞原監督は0Kだ「うん、まあ、これならいいか」
美術スタッフは思った。(ていうことは、フルフェイスの方はお払い箱で、衛とうさぎのヘルメットは、こっちに決まりってことかな。じゃあフルフェイスは仮面ライダーのスタッフにでもやっちゃおうか。でもまあ、何かに使うこともあるだろうから、取っておくか。)が、しかし、その「何かに使う」機会は意外に早く訪れた。
【Act.15】Act.15の準備の時に、小道具の確認をしていた鈴村監督は、舞原監督が使用したシルバーと赤のヘルメットとは別に、フルフェイスのペアのセットがあることに気づいた。
鈴村「これは?」
美術「いや最初は、こっちが衛とうさぎのヘルメットのつもりだったんです。タキシード仮面とうさぎなんで、黒と白って考えたんですけどね。でも舞原監督に、役者の顔が見えないから駄目だ、なんて叱られちゃって」
鈴村「ははは、舞原さんらしいですね……いや、でもこれ、いけるんじゃない?」
鈴村監督の考えはこうだ。Act.15は、衛とうさぎが協力して、泥棒たちから美奈子の宝石を奪回するエピソードである。地下の駐車場で、まず衛が泥棒たちの車に近づき、花火をしかけて泥棒たちを車から追い出す。その隙にうさぎが、車中にある宝石の入ったスーツケースを奪って、衛のバイクで一緒に脱出、というプランだ。このとき、衛は素顔のまま登場し、うさぎには最初からフルフェイスのヘルメットをかぶせておく。そうすることで、もし盗賊に追われるような状況になったとき、うさぎのリスクを減らそうという、衛の気づかいが表現できる。自分だけ相手に顔を見せておき、うさぎにはヘルメットをかぶせて、ターゲットにならないようにするのだ。
しかも、作戦がうまくいって脱出して、うさぎが「やったー」とヘルメットを脱ぐときに、いつものおだんご頭ではない豊かな髪が流れ出て、風になぶられる、という演出ができる。月野うさぎではない、前世のプリンセスの髪型に、衛が一瞬目を奪われるという趣向だ。そう考えるとフルフェイスのヘルメットの方が、このエピソードには合ってるんじゃないか。で、スズヤンは決断したね「うん、今回はこっちを使おう。これの方がいいよ」
【Act.19】というわけで黒と白のフルフェイスは復活したのである。そしてAct.17とAct.18の佐藤健光監督も、特に深くは考えずに、そのままこれを、衛と陽菜のヘルメットとして採用した。こうしてフルフェイス型の方が主流になり、Act.13のキャップ型は舞原監督しか使わない特殊例、という感じになりかけた。
ところがAct.19で、また変則的なパターンが登場する。設定はバレンタイン・デー。チョコを買ったうさぎとひかりちゃんは、ひかりちゃんの本命である大地君の家に行く。ところが大地君の家の玄関先では、衛がバイクに乗って、家庭教師の陽菜を迎えに来ている。そういうシーンだ。スタッフは、これは衛と陽菜の2人乗りだから、揃いのフルフェイスでいいだろうと思っていたのだが、高丸監督はそれを見て顔を曇らせた。
高丸「陽菜はいいんだよこれでも。でも衛はねえ。ほら台本見てよ。大地君の家の前に、バイクで陽菜を待つ衛がいて、うさぎはその横顔にハッと足を止める。そんなうさぎに気づかず、衛は出てきた陽菜を後ろに乗せて走り去っていく。うさぎはその姿に見とれて、やっぱり格好いいなあ、とつぶやく、そういう流れでしょ。そうすると、少なくともうさぎには、衛の顔を見せたいですね。フルフェイスはちょっとなあ」で、衛のヘルメットだけ急遽差し替えとなった。そんなわけで、この回だけは、衛がキャップ、後ろの陽菜がフルフェイスという変わった組み合わせになった。
【Act.43】さあ次はAct.43だ。鈴村監督。鈴村監督は、Act.35で、バイクの衛が黒木ミオに当たり屋をされるシーンでは、わりと普通に黒のフルフェイスを使っていたが、今回は気合い十分。なにしろ、この回は、舞原監督の名作Act.13につながる話である。命を吸い取られる石を埋め込まれた衛は、自らを犠牲にする覚悟でベリルから外出許可をもらい、うさぎをバイクに乗せて、あの思い出の鴨川に連れて行く「ここって…」。最初に心が通い合ったAct.13と同じ場所で、あの日からずうっと変わらない互いの気持ちを確かめ合い、2人は初めてキスを交わす。
ようしやったるで、とスズヤンは燃えたね。燃える茶髪、Act.13に挑戦だ。がしかし、まずこの鴨川がどんな場所かということを、Act.13を踏まえた演出でちゃんと示さなければならない。だからきっぱりとスタッフに言った「ヘルメット、フルフェイスじゃなくて、舞原監督のAct.13と同じ仕様のやつでお願いします」当然である。で、シルバーと赤のキャップ型になった。
【Act.48】そしてAct.48の冒頭。これも鈴村監督。美奈子を失っても耐えに耐えていたうさぎは、現れた衛の胸で泣きじゃくる。このエピソード限りのオープニング。衛はうさぎを横浜ベイに連れて行って、自分がメタリアを体内に取り込んだことを打ち明ける。それからツーリングだ。最後の悲劇の前の、最後のツーリング。
美術「えーと、じゃどうしましょうここ、今回のヘルメットは。やっぱりキャップで?」
鈴村「う〜ん」
鈴村監督は台本を読みながら考えた。このとき、衛はバイクで疾走しながら「もしまた、星が滅ぼそうとする奴が現れたら、お前が倒すんだからな」と語りかけるが、その言葉に秘められたほんとうの意味をうさぎに告げることができない。うさぎは「幻の銀水晶を使えるなら、大丈夫!」と答えるが、安心していいはずなのに、なにかしら不吉な予感がざわめくのを感じて、しがみつくように、衛の身体に回した手にぎゅっと力をこめる。そうすると、ここでお互いの表情は、フルフェイスのヘルメットにさえぎられて、見えない方がいいのではないか。それに、黒のフルフェイスで表情の見えない衛の顔は、やがてメタリアの力に抗しきれずダーク化して、メタリアエンディミオンとなる彼の運命をひっそりと暗示しているようでもある。
鈴村「そうですね、今回はフルフェイスで」というわけだ。
【Act.49】最後はAct.49、というか正確にはFinal Actである。「みんな〜」と駆けてくる笑顔のうさぎの手が、仲間の4人の差し出す手に、もうすぐ届く、と言うところでエンドロール。そこのところで、衛もこの世界にちゃんと戻ってきたことを示すために、バイクにまたがり、遠くから見守る衛のカットが入る。で、その衛のヘルメットなんだけど。
美術A「監督、ヘルメットどうしましょう」
美術B「駄目だ舞原さん、泣いちゃってる」
舞原監督、自分の演出するラストシーンに感動して号泣、男泣きである。もうヘルメットなんてどうでもいい感じなので、スタッフは衛のバイクに黒のフルフェイスを引っかけておいた。


【Special Act】さあそして『Special Act』である。台本を読んだ美術スタッフは考えた。
美術A「オープニングタイトルで、衛とうさぎのバイクシーンがあるね」
美術B「あるね。これやっぱりフルフェイスじゃ駄目だろ」
美術A「うん。うさぎの満面の笑顔が撮れねーぞって、舞原さんにまた怒られちゃうよ」
というわけで用意されたのはAct.13と同じ、衛はシルバー、うさぎは赤のキャップ型のヘルメット、という組み合わせであった。現場に入った舞原監督はそれを見て「うむ」とうなずき、もうセーラームーンを撮るのもこのエピソードで終わりか、と思うと色々こみ上げてくるものをぐっとこらえて「よし、始めるぞ!」と声を上げた。

3. これはセーラー戦士の話ではない


万が一の誤解を恐れてしつこく繰り返すが、以上は私の考えたフィクションである。監督のセリフとかも100%作り話だからね。
なんて、アホな創作に力が入ってしまったので、今週はこのくらいにしておくが、このオープニングにまつわるもうひとつの問題に、あとちょっとだけ触れておく。「Here we go! 信じるチカラ」のメロディーと、衛とうさぎのタンデム走行をバックに主要なキャストとスタッフが流れる。
かつてこの日記【第86回】の「1. オープニング主題歌の配役紹介問題」で触れたように、実写版のオープニングに出るキャストと役名の表記は、わりと細かく内容と対応している。Act.1では戦士全員の役名と名前が出るけれども、それ以降、まことはAct.5まで、オープニングでのキャスト表示が伏せられている。まことはそれまで登場しないからだ。美奈子に至っては、Act.7までは「愛野美奈子 セーラーV 小松彩夏」であり、正体バレのAct.12で 「愛野美奈子 セーラーV/ヴィーナス 小松彩夏」となり、Act.13でようやく定番の 「愛野美奈子 セーラーヴィーナス 小松彩夏」に落ち着くという手の込みようで、話の進行ときちんと対応している。
で、美奈子の表記が確定して以降は、ご存じの表記となる。

月野うさぎ      沢井 美優
セーラームーン
   
水野亜美       浜 千咲
セーラーマーキュリー
   
火野レイ       北川 景子
セーラーマーズ


木野まこと      安座間 美優
セーラージュピター
  
愛野美奈子      小松 彩夏
セーラーヴィーナス

でもこの『Special Act』のタイトルは違う。戦士名の表記がない。

月野うさぎ      沢井 美優
   
水野亜美        梨 華
   
火野レイ       北川 景子


木野まこと      安座間 美優
  
愛野美奈子      小松 彩夏  

テレビレギュラーシリーズで、あれほど役名の表記に気を遣った実写版である。ここに意味がないはずがない。つまり『Special Act』はあくまでもうさぎと亜美とレイとまことと美奈子のお話であり、セーラームーンとかマーキュリーとかの「戦士の物語」なのではない、と理解しなくちゃいけないね。
『Special Act』は、ファンからあまり高い評価を得た作品ではない。むしろ「変身して戦うシーンが短かすぎるし、そもそもレイは変身さえしない」という点では、けっこう文句も多かった。まあ、普通のファンからそう言われることは仕方ないと思う。でもヘビーユーザーの我々は、このオープニングタイトルの配役表記に基づいて解釈すべきである。戦士の名前が出てこないのだから、変身しないのが当たり前だ。なのに、最後に4人も変身してくれるのは、むしろサプライズな儲けものなのだ。レイが変身しないことを不満に思うのは筋が違っている、なんてね。このあたりの問題については、もう少し考えていることもあるが、とりあえず今回はここまで。
しかし地場衛がタキシード仮面になっちゃうのは、かなり大きな謎である。ひそかに4年間も衣裳をとっておいたのか。