実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


最新記事〕 〔過去記事〕 〔サイト説明〕 〔管理人

【第63回】すみません、やっぱりやっぱり前世はむずかしいの巻

 この日記の第37回に書いたとおり、実写版セーラームーンのキャラクターシングルは、まず主役のうさぎとアイドル愛野美奈子の二人の分が先行発売で、亜美・レイ・まことは1ヶ月遅れで発売される予定だった。ところが本編で「マーズれい子」のデビューが決まったために「桜・吹雪」の入った北川景子のシングルだけ、亜美とまことより一足早く、先行発売グループに入れてもらえたのである。北川景子には、こういう種類の幸運の女神がいつもついている。『水に棲む花』の予告編で彼女の名前が出てきたのは4番目だった。しかし『水に棲む花』がDVD発売された段階で、ジャケットに彼女の名前は2番目に記載されている。
 『そのときは彼によろしく』の制作発表では、この映画は長澤まさみ、山田孝之、塚本高史の3人の作品ということになっている。しかしたぶん映画が公開される頃には、この作品は 長澤まさみ、山田孝之、塚本高史、そして塚本高史の恋人役の北川景子の4人の作品、という扱いを受けることだろう。そしてDVDのキャストの記載も、この4人が大きな活字で印刷されるはずだ。

 

 前回の日記で触れた『M14の追憶』「前世と現世の非対称」(前編)および(後編)はお読みいただきましたでしょうか。「非対称」とはセーラームーンの存在を指す。前世の月の戦士たち、マーキュリーとマーズとジュピターとヴィーナスは、現世に転生して亜美・レイ・まこと・美奈子になった。彼女たちは敵と戦うとき、戦士だった頃の前世の姿に変身(メイク・アップ)する。これがセーラー戦士の基本設定である。だから原作やアニメの、前世の月の回想シーンには、セーラー戦士たちがそのままの姿で登場する。しかしうさぎの前世はプリンセス・セレニティである。そしてプリンセスが前世でもセーラー戦士に変身して戦った、という話はどこにも出てこないのだ。いったい「愛と正義のセーラー服美少女戦士、セーラームーン」とは何者なのか?
 この問題は、古いファンには案外おなじみなんじゃないかと思う。かつては同人誌ネタとしても取り上げられていた。いや私も同人誌のことはよく知らない。ただ、だいぶ前に、コミケとかによく行く知り合いのところで色々と見せてもらったら、もう誌名とかは忘れたが「セーラームーン誕生秘話」みたいな競作をしている同人誌があって、それがきっかけで私もこの問題を考えるようになったのである。
 で、みなさんすでに読まれたでしょうが、M14さんはこの問題について二つの仮説を出している。

【仮説1】ルナが、プリンセスの生まれ変わりである月野うさぎを、護衛戦士と勘違いしてリクルートしてしまった。ルナがうさぎに渡した変身アイテムは、うさぎの体内にある銀水晶と反応し、前世にはいなかったオリジナルのセーラー戦士「セーラームーン」を創造した。

【仮説2】前世においても、セーラー戦士たちは初めから戦士の格好をしているわけではない。あれは現世と同様、戦闘時に変身したときの姿である。プリンセスも、平常モードはプリンセス・セレニティの姿で、変身してプリンセス・ムーンになったのだ。しかし現世で目覚めたときは、銀水晶のパワーが不十分な状態だったので、完全なプリンセス・ムーンには変身できなかった。それがセーラームーンである。

 後者の【仮説2】は魅力的な考えで、実は私自身も同様に「現世のセーラームーンに対応する前世の姿がプリンセス・ムーンなんだろうな」と思っていた。つまりM14さんのおっしゃるとおり「小林靖子はセーラームーンの矛盾に気が付いてプリンセスセーラームーンを創造したのだ」と感心していたのだ。正直に言えば『M14の追憶』を読むまでず〜っとそう思い込み続けていて、娘にもそういうふうに説明していた。でも言われてみれば、確かにルナも美奈子もアルテミスも、前世のプリンセスは決してあんな姿になったことはない、と、Act.37きっぱり否定しているのである。これを知ったときにはけっこうまいってしまった。ってか、早く気づけよ自分、とか思いましたけど。
 で、結局M14さんは【仮説1】に戻らざるを得なくなったわけだが、これは原作漫画の設定に近い解釈だと思う。すなわち、コミックスでは、ヴィーナスが四人の前に姿を現した直後、アルテミスがルナに次のように言う「ルナ、君の使命はセーラームーンたちを見つけ、育てあげること、きみの負担をかるくするために、それ以上の記憶をリバースさせなかったけど、きみはもともとセーラームーンの側近だった。すべてを知ってもいいころだな、ルナ」そしてルナは記憶を取り戻す。

あたし、ルナの使命は「月野うさぎ」をめざめさせ、育てあげること。いかなるときもそばにいること。
あたしの記憶を封印してたのも、セーラーヴィーナスをプリンセスのダミーにしたてあげ、そしてうさぎちゃんを戦士セーラームーンとして育てたことも……すべてプリンセスと そしてプリンセスのからだにねむる「幻の銀水晶」を守るため。

 つまり、まちがって戦士にしてしまったのではなくて、現世では、いざとなったら自分の力で自分の身と「幻の銀水晶」を守れるようになって欲しいので、あえて戦士に変身させ、戦士として育てた(ただしルナ自身もそうとは気づかず)ということのようだ。
 で、実写版も、原作もしくはこの【仮説1】、つまり「セーラームーンは前世にはいなくて、それを生み出したのはルナ」というふうに解釈すればいちばんスッキリすることはするのである。であるが、やはり私は【仮説2】も非常に捨てがたいなあと思ってしまうのですね。さっきも言ったように、私もだいたいM14さんと同じようなことを考えたんだが、そのときは「前世のプリンセス・ムーン=現世のセーラームーンという対比!小林靖子、すごい、素晴らしいアイデアだ」とかなり舞い上がったことを憶えています。で、この着想を捨てるのがいまだに惜しいので、粘着質な私としてはもう少ししつこくこだわってみたい。
 つまり、確かにルナもアルテミスも、そしてヴィーナス=美奈子も、前世においてプリンセス・ムーンの姿を見ていないと断言してはいる。でもそれは単に、彼女たちが「見ていなかった」だけ、とも考えられるのだ。
 次回Act.38で視覚的に語られる「星の滅亡」は「プリンセスの身を守って斬りつけられるエンディミオン」→「その倒れる姿を見てエンディミオンの名を絶叫するプリンセス」→「月と地球の崩壊」→「手をつないで倒れるプリンセスとエンディミオン」だいたいそういう順序になっていたと思う。このプロセスに前世のセーラー戦士たちは登場しない。というか、前世の回想シーンにセーラー戦士たちがまったく登場しないのは前回の日記に書いたとおりである。だから星の破滅の真相については、リーダーのヴィーナスでさえきちんと見届けてはいない。
 前回も書いたように、私は「プリンセス・ムーン」とは、エンディミオンが殺されたショックで生じた一種の人格分裂なんだと考えている。つまり「プリンセスに斬りつけられるエンディミオン」→「エンディミオーン!(絶叫)」の後に、勝手に「ショックのあまり自ら命を絶つプリンセス」→「その瞬間、プリンセスから破壊の戦士プリンセス・ムーン誕生」→「<エンディミオンのいない世界なんかいらない>ドーン!」という流れを脳内補完しているのだ。
 そして、現世に転生したうさぎは、ルナから「変身して」と言われたとき、前世のプリンセス・ムーンの似姿であるセーラームーンに変身したのだ。

 

 予習までしておくように言っておきながら済みません。ゆうべからごちゃごちゃ考えておりましたが、この問題については、どうにもこうにも考えがまとまりません。今回はこのくらいにして、今週水曜日のAct.38を見てからまた考え直します(なんか最近この種の言い訳が増えてきたような気がするが)。
 とりあえず、Act.37で、美奈子が前世の話を語って聞かせる部分をまとめておきますね。とちゅうでカメファイターとあいさつしたり、スタッフと対話したりする部分をぜんぶ切って、二人の会話の内容だけにまとめると、次のようになります。

美奈子「プリンセスは今、アルテミスにも捜してもらっている。私のところにもまだ来てないわ」
レ イ「そう…でも、どうして急にプリンセスがあんなふうに?ルナは前世の姿とは違うって言ってたけど」
美奈子「確かに違うわね。たぶん、エンディミオンがあんなことになったせいだと思うわ。ただ、あの力…アルテミスは、強すぎるって」
レ イ「強すぎる?」
美奈子「あのプリンセスはいったい…」
レ イ「前世での戦いのときは?」
美奈子「あの戦いは……前世での戦いは、地球に叛乱が起きたのが始まり。<地球に災いが起き始めたのはプリンセスとエンディミオンのせいだ>って」
レ イ「禁じられてた恋をしたから?」
美奈子(うなずいて)「その時、災いを起こした力がクイン・メタリア。その力で地球の人たちを洗脳したのがクイン・ベリルよ。クイン・ベリルは、最後には月の宮殿にまで攻め込んで来たわ。その日、何かが地球を滅ぼして、月も滅亡したのよ」
レ イ「何かって、クイン・メタリアじゃないの?」
美奈子「それは分からない。たぶん、プリンセスとエンディミオンにしか」

 すでにこの日記で要約したとおり、 原作漫画およびアニメでは(1)月の人々は「幻の銀水晶」の力によって長寿であり、地球の人々が正しく進化するよう見守りながらサポートする使命をになっていた、(2)しかし地球の人々は、月の人々は地球を監視していると感じ、また月の人々が長寿なことをひそかに妬んでいた、(3)メタリアが地球にやって来て、地球をわがものにしようとした、(4)ベリルはメタリアの力を利用して、地球の人々の弱いこころにつけ込んで扇動し、月を攻めさせた、ということになっている。これに対して実写版では(1)(2)の前提が欠けており、その代わりに「メタリアのせいで地球に災いが起こったが、人々はそれを、地球の王子と月のプリンセスの禁じられた恋愛のせいだと考えた」というふうに、『ロミオとジュリエット』的な悲恋物語の面が強調されている。もちろん、原作やアニメにも「地球と月の人間は通じあってはならない」というタブーはあるし「禁じられた恋」の要素がないわけでは決してない。でも原作では、タキシード仮面の正体を知ってからうさぎは衛にメロメロで、それを「大丈夫かしら、不安だわ」と見守るルナに、アルテミスが「心配することはないよ」なんて声をかける、という場面もあったり、総じて二人の恋愛には寛容である。アニメは、前世の物語を描く際には、かなり『ロミオとジュリエット』を意識しているように感じるけれども、現世の二人については、悲恋ものの印象はほとんどない。ミュージカルもそうで、つまり前世での戦いの発端として「災いが起き始めたのはプリンセスとエンディミオンの禁じられた恋のせい」ということを強調するのは実写版だけである。これも実写版のお話を考える上でチェックしておいた方が良い。 
 てことで、子供も目をさましたし、申し訳ないですが今回はここまで。

 

P.S.『仮面ライダー電王』第1話を観ました。仮面ライダーに『銀河鉄道999』と『デビルマン』(原作版)が融合しました。田崎監督、小林先生、第1話は快調でしたよ。期待しています。ぜったい沢井さんを出してね。それから『ふたりはプリキュア・スプラッシュスター』が終わり、来週から『Yes!プリキュア5』ですね。プリキュアが5人。セーラームーン化と言うべきでしょう。