1. 里香とテレ東
『週刊女性PRIME』(2023年1月19日)が「ジャニーズWEST・桐山照史主演のテレビ東京系ドラマ『ゲキカラドウ』続編が4月クールに放送!」を報道した。これ、ややトバシ気味のスクープのようで、記事の最後に、万が一の予防線は貼ってある。
テレビ東京に『ゲキカラドウ』の続編放送について問い合わせたが、「今後の番組編成に関するご質問については、お答えしておりません」とのこと。
でもまあ、これはもう決まりと考えて良いだろう。当然、泉里香が出演するかどうかの確定情報もないが、常識的に考えて、ロンロンのメンバーで変わる可能性があるのは中村嶺亜くらいだ。できれば第1シーズンで泉里香への片思いが破れたしずる村上や、隠れた常連だった別紙慶一にも、次も毎回、出演してほしい。
『週刊女性』だって、たまにはマトモな記事を書くのですね。『高嶺のハナさん』に続く第2シーズン。泉里香が松重豊と並ぶテレ東の顔になる日も近い?
2. 祝映画化
さて次はフジの「土曜プレミアム」から、劇場版公開とリンクして制作された『イチケイのカラス スペシャル』(2023年1月14日フジテレビ/脚本:浜田秀哉/照明:木村伸/撮影:宮崎康仁/演出:森脇智延/プロデュース:高田雄貴・古郡真也)。レギュラーシリーズ終了後1年という設定だそうで、主人公の入間みちお(竹野内豊)は熊本地裁に異動になっている。今回手がけるのは、ヤンキーの喧嘩の仲裁をしようとした青年が殴られて重体、という、一見これといって複雑な点もなさそうな事件だが、入間たちが丁寧に現場検証をするうちに、細部の疑問点が少しずつ明らかになる。
一方、東京の大企業で、社内の派閥争いから社員同士の傷害事件が起る。スキャンダルを拡げたくない会社側はさっさと示談でまとめようとするが、事件を担当するイチケイの部長裁判官、駒沢(小日向文世)は、これまたそう簡単にことを済ませられない、真実の人である。
熊本のヤンキーの抗争と東京の企業内お家騒動、まったく無関係だったこのふたつの案件が、なぜか次第に結びついて、上京した熊本チームのみちお(竹野内豊)・吉塚(小柳友)・木内(向里祐香)は、駒沢たち東京チームと合体する。
吉 塚「すごい展開になって来ましたね」木 内「でもそれにしても、内田亘が当初話していたこと、それが事実なら、なぜ供述を変えたんだろう」
とおる「う〜ん、結局そこなんだよね。ぼくら熊本チームのやるべきことは、まずそこを明らかにすることだね……」
とおる「あっ?」
とおる「柊木さん」雫 「入間さん?」
雫 「御無沙汰しております!」とおる「うん」
雫 「確か熊本地裁にいらっしゃるとはお聞きしていますが、こちらには?」とおる「職権証拠調べで」
雫 「相変わらずですね」とおる「今、ロースクールで教員しているんでしょ?」
雫 「そうなんですよ。よかったら今度、特別講義してくださいよ」
とおる「じゃぁ、次、来た時にでも」雫 「はい」とおる「じゃ」
雫 「失礼します」
とおる「柊木さん!」雫 「はい?」
とおる(ガッツポーズ)
雫 (真似して)とおる「はは」
旧知の裁判官、柊木がロースクールの派遣教員になった。きっと、とことん真面目な彼女の性格を疎ましく思った人が追いやったとか、なにか事情があるのだろう。その程度の見当はついているので、入間は柊木に「めげるな」とエールを送った。良いシーンでした。『イチケイのカラス』は漫画原作ながら、登場人物の設定などが原作から大幅に変更されているという。理解ある原作者で良かったですね。だからこそ同じフジのオリジナル番組『女神の教室』とクロスオーバーできたのだろう。フジテレビも『海猿』の原作者を怒らせた失敗に何か学んだのかな。
今シーズン(2023年1月〜3月)のドラマは、原作なしのオリジナル作品が比較的多いような気がするけど、どうかな。いま思いつく限りのタイトルを挙げてみよう。
『女神の教室』(フジテレビ)『罠の戦争』(フジテレビ)『すきすきワンワン!』(日テレ)『星降る夜に』(テレビ朝日)『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS)『リバーサルオーケストラ』(日テレ)『大病院占拠』(日テレ)『Get Ready!』(TBS)『ブラッシュアップライフ』(日テレ)『100万回言えばよかった』(TBS)
こんなとこが原作なしドラマ。でも私は今シーズンはまだほとんど視聴していない。『100万回言えばよかった』の第1話は半分くらい観たけど、とりあえず滑り出しはジェリー・ザッカーの映画『ゴースト ニューヨークの幻』(1990年)の翻案みたいな話で、松山ケンイチがウーピー・ゴールドバーグの役をやっているところがミソ。いまのところ犯人は荒川良々ではないかと思うが、まあこれからどうなることやら。
3. 大女優への道
さあそろそろ本題だ。私たちの『女神の教室』は第2話まで進んだ。(第1話:2023年1月9日・第2話:2023年1月16日、フジテレビ、脚本:大北はるか・神田優/照明:藤本潤一/撮影:長谷川諭/監督:澤田鎌作/プロデューサー:野田悠介)。北川景子ファンにとっては、いつも普通にニコニコしていて、学生に対して押しつけがましくもないが、しかしポリシーはぶれずに持っている、わりとしっかりものの教師、という、ちょっとこれまでになかった路線の役で、新鮮である。お馴染みの北川景子らしい要素といえば、豚カツ弁当とか冷凍ミカンとかとにかく食う、というところぐらいか。
あと毎回、芝生に大の字に横臥する場面があるのが、ええと、これは特に北川さんらしい、というわけではないのかもしれないが、可愛いくて好き。
一方、ファンでない人にとっては、『家売るオンナ』ほどキャラクターにインパクトがないぶん、普通の役は芝居が上手くないとか、そういう声もSNSなどでは出ているようだ。
でもこのブログを読んでくれている方なら御承知の通り、ほんとうは北川さんは俳優としてきちんと成長している。ただ美人の場合「美人である」ことがハンデとなって、そういう面が見えにくい。いやほんと。原節子や吉永小百合が長らく「下手」「大根」と呼ばれ続けたのもそれが原因ですね。
北川さんはいま36歳だが、吉永小百合は30代の後半、NHKの「夢千代日記」シリーズに主演していた。現在では代表作のひとつになっているが、放送当時は、共演の樹木希林などと比較されたり、お芝居が下手だのなんだのという感想も多かった。私は忘れていないよ。いつの時代もそういう口さがないことを言う人はいるものだ。
4. 法廷物ではない
ただこのドラマ、意外と(ひょっとしたら『高嶺のハナさん』以上に)レビューが難しいかもね。物語のあらすじをそのまま紹介してもテーマが伝わらない。なぜならふつうのリーガル・サスペンスのように「法廷で事件の意外な真相が明らかになる」方向へに話が収束して行かないからだ。そもそも取り上げられる事件が、現実の事件でなく、授業中の実技問題だから「事件の真相」は存在しない。
たとえば第2話で学生たちに出題されるのは「刺青を入れた客が銭湯で入浴を拒否されて押し問答になり、店主に押し倒されてケガをして1,000万円の損害賠償を起こす」という事案だ。
普通に考えると、刺青の男はヤクザということになる。そういう人を入れたくないとい銭湯の店主の心情も、まあ分かるし、ほかの客もその意見に同意するかもしれない。
ただ銭湯はサウナやスーパー銭湯のように「タトゥー客禁止」を掲げることはできない。なぜなら公衆浴場は「公共性が高い施設」(地域住民の日常生活において保健衛生上必要なもの)なので、「伝染病にかかっていると認められる人」(公衆浴場法4条)や「浴槽内を著しく不潔にし、公衆衛生に害を及ぼす虞のある行為をする人」(公衆浴場法5条)といった理由がない限り、入浴を拒否できないからだ。
- 現実世界の例として「外国人の方の入場をお断りします。JAPANESE ONLY」と明記された銭湯に入ろうとして断られた外国人が訴えを起こした案件がある。この銭湯は北海道にあり、ロシア人の船乗りの入浴マナーがあまりにも悪くて、日本人入浴客が激減してしまい、経営のために外国人を一律に拒否していた。しかし裁判所は「外国人でも基本的人権は認められる」(当たり前だけど)という理由で、原告たちにそれぞれ200万円支払うよう、銭湯の店主に命じている。(小樽市外国人入浴拒否事件 札幌地裁平成14年11月)
なので法律的には、非は銭湯の店主にある。しかし治療代と慰謝料しめて1000万円というのはヤクザの言い掛かりなので、ぐっと減額して40万円程度の賠償で手を打つ。この結論は最初から分かっていて、ドラマのなかで学生たちは何度かディスカッションするが、結局、最後まで変わらない。ただ、これは実際の事件ではなくシミュレーションなので、刺青の男がヤクザなのかどうなのか、なぜ1000万円も請求したのか、学生たちは想像力を働かせて様々な状況を想定し、議論し、最も妥当な結論を模索する。そして答え合わせはない。最後に先生が「実は真相はこうなの」と種明かしをする展開にはならないのだ。あくまで仮定の話として終わる。
ほんとうは、人が人を裁くことはできないし、万人が公正と感じる判決など、出せるわけがない。でも世の中の秩序を保つために、無理を承知でそれをやるのが法律であり、裁判である。だからどんな平凡な事件で、決まりきった判決が最初から見えていても、検察、弁護士、裁判官は常にそれぞれの立場に立ち、被告と原告、そして関係者の心理と行動について、想像力を働かせ、あらゆる可能性を想定しなければならない。正しい判決はどっちか、刺青客を入浴させるべきかどうかというところに、お話の着地点はない。そこが普通のドラマと、ちょっと違うところだ。
普通だと、銭湯のやりとりの場面を再現ドラマ風に挿入して、「真相はこうだったんです」という北川さんのナレーションをかぶせたりするでしょうね。それがないところが、面白いです。(ただ、もうちょい会話をうまく組み立てられんかな、とは思ってしまうが。)
5. 藍井仁の過去?
そして、これは学園ものの基本だけれど、毎回の実技演習を通して個々の学生のバックグラウンド、この若者たちはなぜ法科大学院で司法試験合格を目ざしているのか、その背景事情が徐々に明らかにされてゆく。
ただ架空の法律談義だけでドラマをワンクール持たせることはやっぱり難しいよね。そこで全話を通してリアルなサスペンスもいくつか用意されているようだ。その全体像はまだ見えていないが、ひとつは学院長の守宮清正(及川博光)と、司法試験合格至上主義の研究科教員、藍井仁(山田裕貴)の関係。第1話の印象だと、学院長が雫を招聘した背景には、学生だけではなく藍井の意識改革という狙いがあるようだ。藍井にも何がしかの過去のトラウマがあって、柊木雫がそれを克服するきっかけとなっていく感じ。どうかな。
藍 井「お疲れ様です」
藍 井「柊木雫、学園長の教え子だったそうですね。彼女の経歴を拝見しました」守 宮「もう十年以上前の話です」
守 宮「ところで、私には、今回の模擬裁判の事案を、判例マニアの藍井先生が御存知なかったとは思えないのですが」藍 井「被告人Xは、法廷で証言を覆し無罪を主張した。しかし検察側は知人Bとの共謀を立証し、有罪を勝ち取った」守 宮「そう。その結果を知りながら、なぜあなたは?」
守 宮「この模擬裁判で勝つことに意義を見いだせなかった。あるいは、優秀な検察側の学生に、まだまだ考察が甘いと分からせたかった」
守 宮「……その両方かも知れませんね。いずれにせよ、今日の実務演習は学生にとって有意義であったと私は考えます。今後ともよろしくお願いしますよ」
藍 井「失礼します」
守 宮「ふん」
院長先生の謎の笑み。及川博光だけに、何を考えているのか分からないよね。
6. 松下隼人の犯罪?
最後にもうひとつ、これも院長先生との絡みで、と言っても関係性がまだよく分からないんだけど、女子高生暴行自殺事件にも触れておこう。
ある塾で17歳の少女が人気講師から暴行を受ける。少女は講師を訴えるが、相手は合意の上だったと罪を否認、女子高生にはめられたと冤罪を主張する。事件がニュースになると、被害者の顔画像と身元情報がネットに流出し、SNSには誹謗中傷が書き込まれて、彼女は公判で被害を証言する前日に自殺してしまう。その結果、塾講師は証拠不十分で無罪放免となる。
人気塾講師に無罪判決塾講師の松下隼人被告(30)に、東京地裁は19日、無罪判決を言い渡した。判決に対し被害者の証言を得ることが出来ず検察側は控訴を断念した。この事件は2021年8月に塾校内で塾講師として勤務していた松下隼人が、個室教室にて当時17歳の白石杏奈さんに対しカッターナイフを突きつけ「声を出したら殺す」などと脅した後、性交行為におよんだとして起訴されていた事件で、松下被告は、一貫して容疑を否認、塾側も松下被告の不当逮捕と訴えていた。松下被告は、塾校内では人気の講師であり、被害者である白石杏奈さんも当時は被告人に対して好意をもっていたとされている。このことから弁護側は、お互いの同意上での行為であったと主張、また、塾の常駐する清掃員の証言によると「事件当日に叫び声などの助けを求める声は一切聞こえなかった」と答えている。そのため、初公判から弁護側は一貫して無罪を主張してきた。白石杏奈さんはこの事件後、精神的に不安定な状況が続いていて、学校や塾には行かず引きこもりの状態が続いていたとされる。
検察側は、事件後の精神状態に鑑み、被告人に懲役6年を求刑していた。また、第3回公判では被害者である白石杏奈さんを証人として申請し、被害者である白石杏奈さん本人の法廷での証言を予定していた。しかし、証言をする公判日の前日に、自宅にて白石杏奈さんは自殺をした。そして被害者本人の証言を得られぬまま、裁判は判決の日を迎えることとなる。東京地方裁判所は「被害者が被告人に対して好意を持っていたとされることや、清掃員の証言などから強制性交をおこなったと認めるには証拠不十分である」として、松下隼人被告に無罪判決を下した。
被害者死亡で証拠揃わず検察側は白石杏奈さん本人の法廷での証言を決定的な重要証拠としていたが、彼女が亡くなったことにより、証言を得られず、このような結果となってしまった事が非常に残念でならないと語っている。この事件は、初公判から社会的にも注目を集め、インターネットニュースにも度々掲載された事件である。またSNS上では「自業自得だ」「逆恨みによる冤罪」などと、白石さんへの誹謗中傷が複数投稿され、白石杏奈さん本人の顔写真まで明かされてしまっていた。さらに、白石杏奈さん本人のSNSも特定されて、様々な意見、メッセージが送られていたという背景がある。ただでさえ言った、言わないになりがちな性犯罪における裁判を通し、我々もこのような疑惑が日常的にも存在していることを再度認識し、それぞれに配慮して行かなければならないと思わされる裁判であった。
守 宮「ふん」
風 見「どう思いますか、先生」
守 宮「……ふん……」
╳ ╳ ╳
風 見「では、ありがとうございました」守 宮「いえ、また何かあれば」
雫 「お疲れ様です」
雫 「あの、あちらは……」
守 宮「あ、警視庁の方です」雫 「警視庁?」
守 宮「それよりどうでしたか、藍井先生の講義は」
雫 「疲れました、こっちまで」
守 宮「ははは」
風見刑事(尾上松也)はなぜ守宮(及川博光)のもとを訪ねて、この事件についての感想を求めたのか。
そして、第2話。雫(北川景子)は学生時代の友人と食事をしていて、偶然この刑事と再会する。彼は同級生の検事、横溝(宮野真守)の知り合いだった。一方、もうひとりの友人、バツイチ子持ちの弁護士の麻理恵(佐藤仁美)は、イケメン刑事の登場に色めき立ち、雫を呆れさせる。
横 溝「あ、風見さん」
風 見「あ、横溝さん」
横 溝「あ、捜査一課の風見さん、何度か事件でお世話になって」
麻理恵(ブリッ子)「弁護士の、安藤麻理恵ですっ」
風 見「よろしくお願いします」
横 溝「あ、こちらは……」風 見「先日、お会いしましたよね、青南で」
雫 「はい。教員をしております、柊木です」
風 見「教員の方でしたか」麻理恵「彼女こう見えて元裁判官なんですよ」
風 見「元裁判官?」
雫 「元じゃないからぁ」
雫 「……すいません」
風 見「いえ、ではお邪魔しました」
横 溝「ああ、いえ」
そして第2話ラスト、風見は仕事終わりの柊を待ち受けていた。
風 見「柊先生」
雫 「風見さん」
風 見「このあと、少しお時間いただけないでしょうか?」
ということで、こっちの事件と学院、もしくは学院長の関係も気になるところですが、今回はここまで。第3話を待て。