実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第708回】そんなに出番はないけれどの巻(泉里香『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』第1話)


 私が最後に俳優・萩原健一を観たのは、映画『天使の牙 B.T.A.』だからずいぶん前だ(2003年)。大沢たかおと対峙する悪のボスで、松葉杖をついて暴れ回っていた。そういう設定かと思ったら、撮影前に、本当に足を骨折したんだそうだ。その後、映画『透光の樹』(2004年)主演降板後のギャラ支払いをめぐるトラブルで恐喝容疑で逮捕されて、しばらく活動を自粛していた。



 近年ではBSプレミアムの『鴨川食堂』(2016年)とか、土曜ドラマ『不惑のスクラム』(2018年)とかNHKのドラマで復活していたようだが、残念ながら観ていない。今年のNHK大河ドラマ『いだてん 〜東京オリムピック噺〜』(2019年)では、これから大蔵大臣の髙橋是清役で出演する予定で撮影も終えており、これが遺作となるらしい。



 しかし『いだてん』ってビートたけしも出てるし、そのうえ萩原健一って、かなり危険を顧みないキャスティングだね。実はNHKもけっこう腹をくくっていて、ピエール瀧の事件も想定の範囲内だったりして。でも平然としていたら、それはそれで却って世間の非難を浴びるから、それっぽく動揺してみせたりとか。危機管理というのは難しい。




 ということで、「危機管理のプロフェッショナル」が主人公のドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』が終了した。当ブログでは、結局『家売るオンナの逆襲』を追っかけていたこともあって、一度も取り上げることができなかった。この機会に(どんな機会だ)振り返ってみよう。まずは第1話だ(フジテレビ、2019年01月10日放送、脚本:倉光泰子/照明:渡辺良介/映像:足助学/撮影:矢部弘幸/撮影監督:福留章介/演出:関和亮)。

1. アイドルの森


【注意】以下、完全ネタばれレビューです。


 このドラマ、弁護士というからリーガル・サスペンスと思ったら、私が観た第1話と第10話には法廷シーンがなかった。主人公の竹内結子や水川あさみは「危機管理専門弁護士」とかいって、スキャンダルを起こした有名人やハラスメントで訴えられた企業とかから依頼を受け、メディアの炎上を速やかに鎮火し、世間のバッシングを最小限に留めるための方法を助言するコンサルタントみたいな仕事をやっているようだ。



 第1話のゲストは国民的美少女アイドルグループ「フォレスト」(中村ゆりかと馬場ふみか、それに『カメラを止めるな』のヒロインと登美丘高校ダンス部キャプテンの四人組)。番組で歌っている最中、一番人気の中村ゆりかに二番手の実力派、馬場ふみかが突っかかる様子が全国中継されてしまう。



人気もピークを過ぎ、ファンの間で二人の不仲説が囁かれていた折りも折りで、ネット上ではバッシングが一気に広がり、運営はレギュラー番組の冒頭で馬場ふみかに謝罪させようとする。彼女はそれを拒否して失踪するけど、街に出ればすぐに見つかってスマホで撮られる、という話である。昨今のアイドル事情や新潟方面の事件とか連想させて、タイムリーといえばタイムリーだ。



 馬場ふみかは失踪したまま番組オンエアの当日が近づき、事務所の社長はやきもき。竹内結子と水川あさみはあれこれ情報を駆使して馬場ふみかを連れ戻してくるが、大人たちの入らない場所で、メンバーだけで話しあう機会を持たせほしいと訴える。



 四人の不和の理由は憎しみ合いでく、むしろ気遣いにあった。中村ゆりかは長いこと、ある悩みを抱えていて、もうアイドルを続けられない精神状態になっていた。メンバーもみんなそのことを心配して、特に馬場ふみかは、あえて自分と不仲である様子を印象づけ、フォレストを解散に追い込み、彼女を自由にしてあげようとしていたのだ。



 そのことが分かってわだかまりが解け、お世話になっている方々のためにも、ちゃんと謝罪してもう一度グループをやり直そう、アイドルを続けよう、と話がまとまりかかったところで、竹内結子が「それでいいの?」と引き戻す。



 紅 「人はそれぞれ違ってていいはずなのに、常識とかいう固定観念に縛られて、自分を殺して生きてる人たちはいっぱいいる」



 紅 「あなたたちが勇気を出すことで、そういう人たちが一歩、踏み出せるかもしれない」



 紅 「ねえ、やってみない?」



 中村ゆりかの悩みは性同一性障害であった。彼女は幼いころから自分が女の子であることに違和感をいだいていて、女の子の格好が苦手で、いまや美少女アイドルを演じることのストレスで体調も崩していた。



 メンバーもそれを察して、一度はみんなで事務所に対して彼女の脱退を直訴したことがあったが、なにせ事務所の社長(小木茂光)のイチオシなので、取り合ってくれなかった。フォレスト自身も、もしここで一番人気の中村ゆりかが脱退なんかしたら、周囲にも多大な迷惑がかかるという想いがあるので、それ以上強くは出られなかった。でも竹内結子の提案で、フォレストは反逆を試みる。



 彼女たちのことを想う番組スタッフの協力を得て、社長には生中継で謝罪をすると弁明してスタジオに入りながら、実際にオンエアが始まると突如の解散宣言。そして最後のパフォーマンス。



 社長はカンカンだが、自分たちの言葉で行った解散宣言は視聴者に好評で迎えられ、ネットでも絶賛の嵐。馬場ふみかへのバッシングも、落ち目だのなんだのというグループに対するヘイトスピーチも消え、完全に潮目が変わる。こういう情報操作をして、バッシングのリスクを回避するのが「スピン・ドクター」こと危機管理弁護士なる職業らしい。



 というかたちで、竹内結子は仕事をみごとにはたしました。……という話なんだけど、どうかな。

2. 三人の脇役



 竹内結子は相変わらず綺麗で、Huluドラマ『ミス・シャーロック/Miss Sherlock』の時と同じくらいお洒落で、エキセントリックなキャラクターまでシャーロックっぽい。今回はもうちょっと人間味があって、変顔なども見せるが、それでもかわいい(個人の感想です)。



 でも私が第1話で気になったのは、次にあげる三人でした。この三人の理解もあって、アイドル・グループ「フォレスト」は有終の美を飾れたのである。



 フォレストの元マネージャー。中村ゆりかの悩みを知って、フォレストの解散を社長に直訴したせいでクビになる。



 演じている水野智則は『家売るオンナの逆襲』で仲村トオルに真っ赤なスーツを売っていた。



 フォレストの現マネージャー。演じている内田慈は自称「元アイドル役女優」で、「元アイドル」という役を五、六作は演じているという。そうか。失礼ながら私はその集大成という主演映画『ピンカートンに会いにいく』(2018年、坂下雄一郎監督、松竹ブロードキャスティング)くらいしか存じ上げません。



 20年前にブレイク直前で解散した5人組アイドルグループ「ピンカートン」のメンバーで唯一、芸能界に残って女優を続けていた内田慈のところに、なんと再結成の話が舞い込んで……という話。



 その20年前の「ピンカートン」のセンターで、再結成の鍵を握る葵(松本若菜)の過去のアイドル時代を、岡本夏美が演じていたのだよ。岡本夏美は昨年ピンカートン、今年はゴクドルズと、アイドル役が続いている。



 そして一番おもしろいのがこの人。フォレストの番組「フォレスタジアム」を放送しているミナトテレビのプロデューサー。



 演じている宇野祥平は、実は元・美少女アイドルである(笑)。これは2014年に放送された『リバースエッジ・大川端探偵社』第4話のことで、私はけっこう好きな話で当時も詳しくレビューしたけど、もう一回あらすじを紹介させてもらう(テレビ東京系、2014年5月10日放送、原作:ひじかた憂峰・たなか亜希夫/脚本:黒住光・大根仁/撮影:宮本亘/演出:大根仁)。



 浅草の大川端探偵社に、尋ね人の依頼人(マキタスポーツ)がやって来る。30年前に芸能界デビューしたけど、唯一のシングル「瞳にA級保存」だけを残して消えていったB級アイドル、いや誰も知らない幻のC級アイドル、桃ノ木マリンの行方を追って欲しい、という依頼だ。もちろん所長(石橋蓮司)も調査員の村木(オダギリジョー)もそんな名前は聞いたことがない。




 マキタスポーツは高校生の頃、田舎にやってきたマリン(小池里奈)のキャンペーンに出くわしてサインをもらって握手して以来、もうずーっと忘れられなくて、結婚も恋愛もできなくて、会社をリストラされてしまった。でもマリンにもし会えれば、それをきっかけに、人生を仕切り直しできるかも知れない。けっこう切ない願いである。



 で、オダギリジョーが捜し出してきた30年後のマリンが、宇野祥平。



水 野「私はゲイでもないし女装マニアでもないんですが、事務所の方針で女性のフリをしてアイドル歌手をやらされておりました」



水 野「アイドルにしてやるって新宿のディスコでスカウトされまして、郷ひろみみたいになれるかなと思ったら、松田聖子みたいになれって言われて」



水 野「これでも昔は女の子に間違われるくらい美少年だったんです。今だったらおネエキャラで売り出すんでしょうけど、女としてデビューさせられたんです。あの頃の芸能界は何でもありだったんです」



水 野「でもね、私が可愛かったのは成長期が遅れてたからなんですよ。デビューして半年も経ったら声変りもしてくるし、喉仏も出てくるし、ヒゲも濃くなって、デビュー曲も売れなかったし」



水 野「さすがに社長も、もういい、無理だよ、って」
村 木「失踪したわけじゃなかったんですね」



水 野「いや、元々いなかったんですよ、桃ノ木マリンなんて女の子は」


 そんなこと言われても納得できないマキタスポーツ。で元、桃ノ木マリンは唯一の持ち歌を歌ってみせる。するとその姿は(マキタスポーツの目には)往年のマリンちゃんそのものなのであった。





♪三日遅れのジュテーム すれ違いのクライング・ゲーム♪



♪二人で見た夏のサンセット・ムーン 想い出になってしまうの♪




♪出会った日の輝き 私の瞳は憶えてる♪




♪忘れないで 忘れないで 忘れないでね♪



♪きっとA級保存 私ずっと消さない 恋のラブセゾン♪



(マリンちゃん!)






 バカみたいに見えるだろうが、この後のオチも含めて、これはけっこう感動的な話であった。小池里奈の80年代アイドルファッションがまた、いいんだ。実写版セーラームーンの「キラリ☆スーパーライブ」でも歌と踊り、上手かったもんなあ。



 そういうわけで、性同一性障害に悩む「フォレスト」の中村ゆりかは、30年後は宇野祥平みたいになる、という話であった。

3. お待たせしました


 で、ここまでの話で肝心の泉里香が全然出ていない。すみません。このドラマのなかで泉里香が演じていたのは、東堂裕子という元ミナトテレビの記者。今回フォレストが出演していたのもミナトテレビの番組だけれども、まるでジャンルの違う報道番組の記者だった。けっこうな敏腕で社長賞も獲っている。






 この綺麗なお姉さんはすごくやり手で、自分が受けたセクハラをネタに、その相手の父親である総務大臣の林(山田明郷)にユスリをかけている。その時、東堂(泉里香)の相談を受けたのが、竹内結子が演じる危機管理弁護士、氷見江(ひみ・こう)だった。ドラマ第1話のアバン・タイトルはその話から始まる。



 紅 「ミナトテレビの東堂裕子さんという女性記者が、息子さんの林太一さんからセクハラ被害を受けたそうです」



 林 「公表すればいい。私のことじゃない。勝手にやってくれ」



 紅 「ワイドショーでもご覧になって、お勉強されたらいかがですか?」
 



 紅 「子供の不祥事は親の責任、ネットで過去をほじくられ、不正疑惑が飛び出し、議員辞職まで追い込まれて、親子で終わり」



 紅 「でも 林さん総務大臣になるだけあって運がいいですよ。東堂さんってもめ事が嫌いなんですって。公表しない代わりに」



 林 「金か?」



 紅 「違います。おいしいネタ」


 林は、自分以外の(たぶんライバルの)議員の不正疑惑を東堂にリーク。東堂はこのネタをニュースに流して他局を抜く。



東 堂「新たな政治と金の疑惑が浮上です」



東 堂「東京万博推進議員連盟幹事長、山川浩二議員の、不正献金問題が発覚しました」



東 堂「調べによると、昨年4月ごろから複数回に分け、山川氏の資金管理団体に大手ゼネコン 斑目建設から……」


 このスクープで東堂は月間社長賞を受けたわけだが、でもセクハラ問題に関して何も守ってくれなかった会社の対応に嫌気がさし、ミナトテレビを退職。そんな東堂に紅が接触し、この「山川議員の不正献金問題」に関する資料の一部を譲り受ける。



 紅 「わざわざ こっちまで ありがとう」



東 堂「社内通信の監視が厳しいんで」



 紅 「ホントは、何か探りに来たんでしょ?」



東 堂「えっ?」



 紅 「山川議員のネタ、まだ追ってる?とか」


 テレビ局を退職した東堂は、いまは『週刊文新』(文春の「文」と新潮の「新」ね)の記者に転職して、そこで山川議員の不正献金疑惑をさらに追及しようとしていた。



 データを渡してしばらく後、今度は氷見の相方の与田知恵(水川あさみ)が東堂にアプローチしてきた。不正献金疑惑のデータの一部を改竄して欲しい、という依頼だ。



 まあ、あり得ない話だが、でもちゃんとおいしいネタが用意されているので、功名心と上昇志向の強い東堂は、結果的にこれに乗る。



知 恵「東堂さん」



知 恵「山川議員への不正献金者リストから、公表してほしくない名前があるんですよ」



東 堂「そんなことできませんよ(苦笑)」



知 恵「もちろんタダとは言いません」



知 恵「これで 転職先でも一目置かれると思いますよ」



 実は山川議員に不正献金した人物リストのうちに、アイドルグループ「フォレスト」の事務所の社長、森尾(小木茂光)の名前も入っていた。森尾社長は「フォレスト」を東京万博(ってドラマのなかでは言っているけど明らかにオリンピック)に絡めるべく、大臣に相当な額を貢いでいたのである。謝罪会見の後の「ラストステージ」中継を睨みつけながら、まだフォレスト解散を認めようとしない社長に、紅はこのネタをぶつける。



森 尾「いい気分か?」



 紅 「国民的アイドルのステージを間近で見ることなんて、めったにできないですからね」



森 尾「俺があいつらにどれだけのことをやってきたか、分かってんのか?」



 紅 「ええ 知ってますよ。万博の件とか」



森 尾「あぁ?」



 紅 「お幾らお渡しになったんです? 山川議員に」



森 尾「何言ってるんだ? お前」



知 恵「他にもいろいろと、 彼女たちのためにお金を使われてたみたいですけど。脱税、横領、不正献金。ひとつアラが見つかると、次々と出てくるんですよねぇ」



森 尾「あいつらを成功させるためにはな、ありとあらゆる手を使うしかねえんだよ」



 紅 「親心ですね」



森 尾「人の苦労も知らねえで、勝手に解散させやがって」



 紅 「でも、彼女たちが解散すれば、万博の件は公にはなりませんよ。最小限のダメージで済むと思います」



森 尾(溜息)



 紅 「ねっ? 悪いことばっかりじゃないでしょ。私は人を不幸にはしたくないんです。みんなを笑顔にしたいだけ」



 紅 「ほら、笑って見送ってあげましょう」


 献金者リストから森尾の名前を削っておく代わりに、解散宣言したフォレストを気持ちよく送り出してやれ、という取引である。で、その代わりに、水川あさみから泉里香にUSBフラッシュメモリが渡されて、そのメモリのなかにあったネタで、泉里香は大手広告代理店のセクハラ疑惑を『週刊文新』に取り上げる。そうするとその広告代理店から竹内結子と水川あさみにリスクマネジメントの依頼が来て、というふうに話は第2話に続く。



 いや、初めてきちんと観たけど、けっこうややこしいな。泉里香の出番も少なそうだし、第1話と第10話だけ見ておいて、ざっとダイジェストで紹介しようと思ったけどなかなかどうして。話の構造が複雑で、でもそのなかで泉里香は、初回のアバン・タイトルで(本人は出ていないが)話題になって、竹内結子の作戦が成功するためのカナメとなる情報を握っていて、しかもシリーズの各エピソードをつなぐジョイント役でもある。出番は少ないけどエピソードのディティールにかかわっていて、そこを説明しないと出てくる必然性が分からない。泉里香の仕事ぶりを紹介したいだけなのに、非常に燃費が悪い。しかもすでに放送終わっちゃっているので、がんばって紹介しても、視聴率の挽回に貢献できない(ではリアルタイムで書いていた『家売るオンナの逆襲』が視聴率ふたけたキープに貢献していたのか、といわれそうだが)。



 次回ちょっとどうするか。泉里香の出番だけはもうちょっと紹介したいと思うけど、来週末も予定が詰まってるなあ。とぼやくのは後にして、ひとまず今回はこれまで。