実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第684回】ベタでもいいじゃん、の巻(泉里香『文学処女』第1話)

 

 

 MBSドラマイズム『マジで航海してます』第2シーズンが終了した。昨年の第1シーズンは全5話、第2シーズンは全6話という変則的スケジュール。しかも全国放送はなくて、各地方で放送開始時間はまちまちという、実に困ったドラマ枠である。

 

 

 商船大学で航海士を目指す二人の女の子。まりん(飯豊まりえ)は、伝説のヨットマンだった父の影響で、子どものころから海と船が大好きなハイテンションガール。一方つばめ(武田玲奈)はテンション低め。受験に失敗して道を見失っていた浪人時代、予備校でちょっと気になる男子に誘われて海洋学部に進学したものの、当の男の子は不合格で独りぼっち。やる気もなし。
 第1シーズンはそんな対照的な二人が海に出て、実習で一カ月の船上生活でいろいろなことを体験しながら成長するお話でした。

 

 

 メイン監督が変態の井口昇だったので心配したが、杞憂に終わった。いや正確に言えば、第2話だけは鬼畜の井口監督らしい話で、船が大嵐に見舞われ、実習生たちが片っぱしから船酔いになり、最後は武田玲奈まで吐くというゲロまみれの展開だったが、この回さえ飛ばせば、美少女二人の爽やかな青春ドラマだった。

 

 

 第2シーズンはそれから3年後、同じ海運会社に就職した2人の新しい船旅を描く。飯豊まりえは3等航海士、そして第1話では地上の本社勤務だった武田玲奈も、途中から3等機関士として同じ船に乗り込む。あとは他愛のない船旅のスケッチなんだけど、相変わらず楽しく観させてもらった。正直、第3シーズンが観たくなってしまった。

 

 

 飯豊まりえで思い出したけど、『獣電戦隊キョウリュウジャー』(2013年)のキョウリュウピンクを演じていた今野鮎莉が、7月いっぱいで芸能界を引退した。「自分の本当にやりたい事が見つかったから」だそうだ。引退は淋しいけど、まだ21歳。「本当にやりたい事」を実現すべくがんばってください。でも、もしも10周年記念Vシネが制作されることになったら、それには出演してね。

 

 

 というわけで、第2シーズン全6話も無事終了して、新しく始まった日曜深夜「ドラマイズム」の新作はこれ。『文学処女』第1話でございます。

 

 

 

 

 

 MBSでは2018年9月10日、TBSでは2018年9月12日に放送開始で、東海地区はまだか。でもネットで見逃し配信してくれるのでありがたい(制作:MBS/原作:中野まや/脚本:下田悠子/照明:渡辺良平/撮影:福留章介/監督:スミス)。

 

 

 

 LINEマンガからの初のドラマ化ということで、それがどういう意味かは分かりませんけど、確かにものすごくベタな少女マンガ。それも私のような年寄りが言っているんだから、昔の少女マンガ。だいたい主人公の相手役が城田優ってだけで少女マンガ的でしょう(笑)。こういうのが大好物な私は1話でハマってしまった。軽く流すつもりだったけど、今回はちょっと詳しく紹介しますね。

 


鹿 子(本以上に夢中になれる人なんていなかった。私にとって恋愛なんてファンタジーの世界の話)

 


 月白鹿子(つきしろ・かのこ、森川葵)は本が大好きで文芸出版社に就職した、リアル恋愛経験皆無の文学処女。あこがれの文芸編集部に異動を命じられて間もないある日、編集長(河原雅彦)に呼び出され、人気作家の加賀屋朔(かがや・さく、城田優)を担当するよう命じられる。

 

 

 なぜ鹿子のような新米編集者が抜擢されたのか。前任の編集者が「飛んだから」と編集長は説明し、前任者からの引き継ぎ資料ファイルを渡される。そこには「俺は奴隷じゃない」の不吉な文字がびっしりと。

 

 

 

 でも、いまの鹿子の目にそんな言葉は入らない。彼女は、単行本未収録のデビュー作も読んでいる加賀屋朔の愛読者なのである。

 


鹿 子(加賀屋朔。超人気ミステリ作家。作品の多くが映画化されており、その甘いマスクでメディア出演も多数)


鹿 子(好きな作家ランキングでは常に上位にランクイン。今年度、中野文学賞候補の一人だ)


鹿 子(月白鹿子26歳、入社4年目。夢だった文芸編集部、配属一ヵ月で加賀屋朔先生の担当に任命。これってまさかの大抜擢!?)


鹿 子(ようやくここまで来た。加賀屋先生と一緒に、抱きしめたくなるような、そんな一冊を作るんだ!)

 


 大好きな作家の、連載終盤の小説原稿を受け取り、さらに次回作の打合せもしてこいと命じられ、意気込んで加賀屋朔を初訪問する鹿子。

 

 

 後で出てくるけど、加賀屋はメールのやり取りを滅多にしないので、原稿はこうやって先生のお宅に直参しないと得られないらしい。

 

 

 緊張して呼び鈴を押す鹿子だが、なんにも返事がない。おそるおそるお宅の中に足を踏み入れる。だがそこで衝撃的な光景に出くわす。

 


鹿 子「月白でぇす」


鹿 子「加賀屋先生……」


鹿 子「いらっしゃいま」





光 稀「だれぇ?」



光 稀「加賀屋くんの担当さん?」


鹿 子「はい……すみません」


光 稀「加賀屋くん、担当さん来てるよ」


加賀屋「あ……と、誰だっけ?」
鹿 子「緑線社の月白と申します」


鹿 子「本日から先生の担当に……」




鹿 子(この人たち、こんな状況を見られて何でうろたえないの? 何ふつうに着替えてんの? わかんない……処女、わかんない!)

 


 可愛いなあ。「処女、わかんない」だって。ひょっとしたら森川葵って本当に処女なのかな。いやそういうアレはナニだけど。ともかく、この謎の女、有明光稀(泉里香)は、実は他社の編集者であった。

 


光 稀「じゃ」
加賀屋「ああ」


光 稀「おつかれさま」


                             

加賀屋「はい、お願いします」
鹿 子「ありがとうございます」


鹿 子「あっあの、さっきの方は奥さまですか?」
加賀屋「いや」


鹿 子「じゃ、彼女……恋人、ですか?」
加賀屋「赤文社の担当の人」


鹿 子「担当?」
加賀屋「おやすみなさい」


鹿 子「あ、あの先生!」


鹿 子「次回作の打合せについてなんですが……」


加賀屋「そういうのは大丈夫です。またこちらから連絡します。それだけ。お願いします」
鹿 子「え」


鹿 子(夢は作家さんと一緒に、抱きしめたくなるような一冊を作ること……だったのに)

 


 大好きだった作家は、想像していたのとぜんぜん違う人だった。気落ちして会社に戻った鹿子は、前任者からの引き継ぎ資料をチェックする。

 

 

 そこに箇条書きされた業務内容は「打ち合わせは嫌い。作品の内容には踏み込まなくてOK」「原稿受け取りではなく、週に1回、庭の草むしり」「木村家のあんぱんを常にストックしておく(締め切り前は最低10個)」などなど。編集者というよりはお手伝いさんのお仕事である。そこへ加賀屋からさっそく電話がある。

 


鹿 子「はいもしもし月白です」


加賀屋「あんパン食べたい。十分以内によろしく(ブチッ)」

 


 ちょっとキレそうになる鹿子だが、周囲になだめられて我慢。引き継ぎマニュアルどおり「木村家のあんぱん」を買って再び加賀屋邸へ。

 



鹿 子「先生、中野文学賞の待ち会なんですけれども、ソロモンズでよろしいでしょうか?」


加賀屋「待ち会?」


鹿 子「はい。関係者全員で、先生と一緒に受賞の一報を待たせていただく食事会、通称『待ち会』です」


加賀屋「知ってます」


鹿 子「すみません」
加賀屋「そういうのやんなくていいんだけどなあ」

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鹿 子「え?」
加賀屋「別にどこでもいいです」
鹿 子「承知いたしました。授賞式会場も車で直ぐですし……」


加賀屋「本気で獲れると思ってるの?」


鹿 子「え?」


加賀屋「ごちそうさま」


鹿 子「あ、先生、次回作についてなんですけれども、私いくつか企画案を……」


加賀屋「大丈夫です。そのへん、掃除しておいてください」

 


 心が折れかけた鹿子だが、ここはぐっとこらえる。良い作品を書いてもらうためだったら、心にもないお世辞でも何でも言ってやろう。だがそういう魂胆を見透かされたのか、逆に加賀屋から突き放される。

 




鹿 子(おだてましょう。先生がそれで気持ちよく書けるなら)


鹿 子「先生、これ読みました。カッコよかったです。モデルさんみたいで。あ、私の友だちも……」


加賀屋「お疲れ様でした」


加賀屋「次からはお宅で書きません。お帰りください」

 


 今度こそヘコむ鹿子。 絶体絶命であるが、編集長に報告できないのはもちろん、同僚にもなかなか相談できない。相談してもどうしていいか分からない。

 

 

 気落ちしたまま「待ち会」のレストランへ向かう。「待ち会」とはさっきの会話にあったとおり、受賞の知らせを待つ会である。

 

 

 今回、加賀屋は中野賞の候補になっている。で、各社の担当編集者や編集長たちがレストランに集い、当の加賀屋を囲んで受賞の一報を待つという会。受賞が決まればすぐに発表会場に移動して記者会見という段取りだ。要するに直木賞である。「中野賞」という名称はたぶん原作者の中野まやから来ている(ちなみにこの設定は原作にはない)。

 

 

 編集者でごったがえすレストラン。こういう場所が初めてで不得手な鹿子は、さっそく誰かとぶつかって白いジャケットとスエーターに赤ワインを浴びてしまう。

 

 

 

 そこへこの会の主役、加賀屋朔が登場。傍らに寄り添っていた有明光稀が鹿子の姿を認め、親しげに近づいてくる。

 

 

 

 

 赤い飛沫を浴びた純白の文学処女と、もうすでに真っ赤なワンピースの大人の泉里香。

 


光 稀「加賀屋くんの担当さん?」


光 稀「赤分社の有明です。先日は先生のお宅で」
鹿 子「あ、すみません、緑線社の月白です」


鹿 子「てっきり、奥さまかと」
光 稀「あんな人と結婚したら大変ね」


鹿 子「そうですよねえ!」


鹿 子「……すみません……」



光 稀「お互いがんばりましょうね」


 


 その艶やかさに呆然とする鹿子に寄り添うのは、同僚の校閲部勤務、七星(上遠野太洸)と、実は鹿子に密かに想いを寄せている同期の望月(中尾暢樹)。

 


七 星「エロい女ね」


鹿 子「七星くん!」
七 星「シミになるわよ」
鹿 子「ありがと」
望 月「大丈夫?」
鹿 子「うん」


望 月「なんか飲み物でも持って来ようか?」
鹿 子「大丈夫、私お酒弱いから」
望 月「そうか」


鹿 子(……はぁ……)


鹿 子(うるうるした瞳に濡れた唇)


鹿 子(細いのに出るとこ出てるパーフェクトボディ)


鹿 子(落ち着いた佇まいに美しい所作)


鹿 子(……エロい……なにあれ本当に編集者?)


鹿 子(てゆうか、さっきからずっと加賀屋先生の隣にいるけど、もしかしてつき……)


鹿 子(いや、彼女だとは言ってなかった)


鹿 子(も、もしかしていわゆる、そういう)


鹿 子(接待!?)


鹿 子(そ、そういうの、本当にあるの?)



望 月「月白」


鹿 子「はっ」

 


 鹿子が妄想に耽っているうちに、加賀屋のもとに審査結果の知らせが届く。結果は想像のとおり。

 


(着信音)


加賀屋「加賀屋です……ええ……分かりました、どうもありがとうございます」


加賀屋「残念でした。みなさんどうもありがとうございました」


 


 労をねぎらう拍手を受けつつ、加賀屋がいったんその場を離れると、中にはそれまでと態度を一変してゴシップを囁きあう編集者もいる。そしてそれを耳にした主人公にスイッチが入る。
 ここが第1話のクライマックスになるんだけど、セリフの区切りとかキャプチャのやり直しとか、ちょっとやってみたけど難しかったです。どういうことかというと、こういう場面の森川葵って、コロコロ表情が変わって行くことそれ自体が魅力で、何というかベースとなる「キメ顔」みたいなものがないので、静止画ではその魅力がちょっと伝えきれませんね。そう思ってご覧ください。

 


編集A「赤文社の女、相変わらず加賀屋の隣、べったりだな」
編集B「緑線社の担当が女になったのもマクラだろどうせ」


編集A「いいよなぁ、女は寝てれば原稿もらえて」
編集B「正直、加賀屋朔ももう限界でしょう」


編集A「名前だけ。写真集でも出した方が売れるんじゃねえの?」
編集B「あれならオレが書いてもバレねえよ、はははは」


鹿 子「あの……限界って、誰が?」
編集A「え?」
鹿 子「加賀屋先生のことですか?」
編集B「誰?」
編集A「あ、あれ、加賀屋の喜び組の一人?」


鹿 子「加賀屋先生の担当ですが、何か?」


鹿 子「そうですよ。はっきり言って、先生の今回のこの作品、最悪でした」


鹿 子「んなこた分かってますよ。こちとら先生の作品ぜんぶ読んでんですから。書籍化されてないデビュー作から。あんな美しくて熱い文章、初めて見て、ドキドキして」


鹿 子「次はどんな話なんだろう、って早く続きが読みたくて、発売日まで待ちきれなくて、こんなふうに思ったの初めてで」


鹿 子「でも、いつからか全然思わなくなりました」


鹿 子「凡庸なトリック、お決まりの展開、自己肯定しているだけの甘やかされた登場人物」


鹿 子「どっかで聞いたことのあるような薄っぺらいせりふの応酬」


鹿 子「何これ。何これ読者バカにしてんの?やる気あんのって」


編集A「いや俺たちはそこまでは……」
鹿 子「加賀屋朔は限界? 名前負け? 何それ」


鹿 子「私は加賀屋先生の名前だけが欲しいんじゃない」


鹿 子「加賀屋朔にしか描けない人間模様がある。加賀屋朔にしか書けないセリフがある」


鹿 子「私は先生に気に入られたいんじゃない。おだてて調子に乗らせたいんじゃない。先生と最高の一冊が創りたいんです」



鹿 子「加賀屋朔の名前に甘んじているのは、あなたたちなんじゃないですか? 編集者なら、つまんないこと言ってないで、面白い本つくることを考えたらどうですか?」


鹿 子「私は絶対に甘やかしませんから!」

 


 しかし、言いたいこと言い切って振り向けば、いつの間に戻ってきたのか、そこには加賀屋が立っていた。

 


鹿 子「先生……」




鹿 子(おおっと、飛ばされる。下手したらクビだ)


鹿 子(いや……消されるかも知れない……)

 


 思わず会場を出てゆく鹿子。ところが全力で走り去ろうとするその腕をしっかり掴む手が。

 





鹿 子「先生」


加賀屋「言い逃げ?」
鹿 子「あ、あの、先ほどは……本当に」


加賀屋「さっきのは、そそられた」


鹿 子「え?」

╳    ╳    ╳


鹿 子(これって、これって)


鹿 子「あのう、先生これって、どちらへ?」
加賀屋「45階のスイートルーム」


鹿 子「え」


鹿 子(うそでしょ!)

 


 以上で第1話終了。城田優がここまでベタベタに少女マンガの世界を演じたのは、ひょっとしてセラミュ以来ではないか。しかし彼はそういうのがよく似合うのである。
 そして森川葵(愛知県生まれ)。この夏は、突然降板した満島ひかりの代役として、宮藤官九郎の『ロミオとジュリエット』でジュリエットを演じ、若手実力派の名をさらに確固たるものにしたそうだが(補足:すみません、これは間違い。上演はまだこれからで、11月〜12月らしいです)ここではベタな少女マンガの主人公になりきって、これもこれですばらしい。このあと『賭ケグルイ』もあると思うととても嬉しい。
 それに較べると泉里香は、そもそも『海月姫』の稲荷からコメディ要素を引いたキャラみたいな感じで損している。でも番組サイトを見ると、城田優の過去を知っている唯一の人間として、物語の重要なポイントを担っているみたいなので、ぜひ今後の展開に期待したい。では今回はこのへんで。最後に北川さん新作のポスターが出来たみたいなので見てみよう。……そういえば『響 -HIBIKI-』の北川さんも、文芸編集者の役だったっけ。