実写版『美少女戦士セーラームーン』ファンブログ


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【第132回】Special Actの巻(4)


昨年ゴールデン・ウィークの名古屋を賑わした『ウルトラマンプレミアステージ』の「2」が、今年の5月の連休にも中日劇場にやって来るという。昨年の公演のカーテンコールで、モロボシ・ダンこと森次晃嗣が「来年もこの同じステージで!」と言っていたが、あれはただのリップ・サービスではなかったのだ。でもまだ詳しい内容やチケット発売の詳細が分かんないんだよね。
さらに秋になると、映画『大決戦!超ウルトラ8兄弟』が公開される。主演はティガの長野博で、共演がダイナのつるの剛士、ガイアの吉岡毅志、メビウスの五十嵐隼士という驚きのキャスティングである。最近、V6のバラエティ番組で、長野君が珍しくティガのネタを出したとか、つるの剛士も、お馬鹿キャラで売っているクイズ番組でウルトラマンの変身ポーズを披露したとか、伏線はあるにはあったが、本当にやるんですね。
中日劇場の話をもう少しだけすると、5月の連休がそのウルトラマンのステージで、その後、5月14日から25日までは東宝ミュージカル『イーストウィックの魔女たち』がやって来る。前にも書いたような気がするが、この舞台にセラミュの4代目セーラームーン、黒木マリナが出演する。さらに、5月27日から6月1日まで、志村けん一座の公演がかかるが、こっちには2代目セーラームーンの原史奈が出る。色々と大変である。いや名古屋ローカルの話題で済まない。

1. 最後までクライマックス


『Special Act』の話に入る前に、もう少し寄り道をさせていただきます。先週『仮面ライダー電王』が終わった。田崎竜太が最初の2話を監督したのはいつも通りだが、今回はなんと舞原賢三が参加、全部で8話を担当した。その情感あふれる演出は、やはり小林脚本との相性が抜群で、素晴らしかったです。とにかく、白倉伸一郎・小林靖子・舞原賢三のトリオ復活が嬉しかった。
ただ全体の完成度については、第47話あたりで「こりゃ残り2話で謎をすべて解明するのは無理だな」と、半ばあきらめかけてもいた。そもそも最近の仮面ライダーって、ヤリ逃げみたいなエンディングがホントに多いもんね。そして実際『電王』の場合も、作品にちりばめられた設定や人物の謎の多くは、最終回にいたっても解き明かされないまま終わってしまった。そういう意味では今回もヤリ逃げで、タイムトラベルテーマのSFとして観る場合、明らかに説明が足りない。
でも一方で、物語としての因果律はきちっと完結していて、観ている側の感情的な流れは、最終回で、すべて収まるべきところに収まる。だから尻切れトンボで終わったという印象は、実はほとんどない。むしろ、ライダーとしては近年まれなくらいきれいに話をまとめた、と言ってもいい。
ひとつだけ具体的な例を挙げると、第1話で、主人公の良太郎は、イマジンのモモタロスに会う。イマジンに会った人間はふつう「契約」しなければならないが、それをしないまま物語が始まり、最終回で、ようやく主人公はモモタロスと「契約」する。結局これは良太郎とモモタロスが出会ってから契約にいたるまでのお話だった、ということで物語は輪を閉じる。最初と最後をかっちり合わせるこういう構成は、ドラマ作りの基本じゃないかと思うんだが、最近はそのへんがわりと適当な脚本も少なくない。『電王』は4クール1年間という長丁場にもかかわらず、そういう部分をちゃんと整えてあるんです。
以上は決して、私ひとりの印象ではない。私が読ませていただいているブログでも、だいたい異口同音にそういうことが言われている。「まぁ、お決まりの矛盾だらけの話でしたが、久々にすっきりしたラストだったと思います」(万丈さんのmixi)、「ドラマとしてキャラや視聴者の気持ちに最大限によりそった、良い最終回」(quon913さんの『PARALLEL LINE』)、「整合的な状況説明をすべて因果地平の彼方にぶっ飛ばして、純粋にドラマとして着地させた好い最終回」(quon913さんのエントリーに対する黒猫亭さんの書き込み)。ね、だいたい一緒でしょ。
東映の『電王』公式ページをご覧になれば分かるように、放送終了後の現在もなお、電王のプロジェクトは動いているという。ビデオオリジナルの番外編的新作が作られるのではないだろうか。なんか『Special Act』みたいである。でも、おそらくそのビデオでも、本編で取り残された謎は解明されないだろう。それでもいいのだ。ドラマとしての電王は、テレビの本編で完結しているのだから。
しかし、こういう観方ができるようになったということは、ひょっとすると私は変わったのかも知れない。4年前にFinal Actを観たときにはこうじゃなかった。「えーっ、これだけ?後なんの説明もなし?」という感じだったのだ。だから『Special Act』で、前世の月で起こったことやプリンセス・ムーンなど、本編で分からなかった謎の一部が明らかになることを、ちょっと期待していたのである。
でも今にして思えば、実写版セーラームーンも、本編全49話で完結したドラマだったんだね(当たり前だが)。前世や月の王国に関する基本設定の説明不足は、シリーズ構成のミスではなくて、確信犯的にそうなっているのだろう。実際、そのような情報の補完がなくとも、5人の少女たちの心理というか、ドラマの中での感情的な流れは、Final Actでそれぞれたどり着くべき結末に、ちゃんとたどり着いているわけだし。

2. 卒業式の朝


さて、前回の最後の方で「『Special Act』はリリース当初、それほど評判が良かったわけではない」というようなことを書いた。何となく主観的な印象でそう断言してしまって、後でちょっと不安になったので、アマゾンのユーザーレビューを参照してみました。そしたら、わりと好意的な批評もあるにはあるが、やはり記憶どおり、不満が非常に多かった。特に目立ったのは以下の2点。

「セーラー戦士の活躍はほとんどないうえ、レイちゃんは変身もしない」
「亜美ちゃん役が浜千咲じゃなくて、そっくりな梨華である」

どちらも、確かにもっともな意見だ。オーロラさんなんか、「がっかり」というタイトルでかなり辛辣な感想を書かれているが、これはあのオーロラさんだろうか。とにかくこんなふうに言っている。

「各キャストも本編終了で気が抜けたのかなぁ・・全体に散漫とした演技にはがっかりさせられました。でも,エンディングを見て,ああ,実写版はもうこのメンバーでの続編はあり得ないんだな・・・全ては終わったんだなと確信しました。(涙)」

最後の方の泣きは措いておいて(笑)こういう「気が抜けた」とか「散漫な」、あるいは「緊張感がない」という評価も、わりと多かった。
さっき『電王』のチームが(まだ公式発表されていないが)本編終了の余韻をかみしめるヒマもなく「特別版」か何かの制作に突入している話をしたが、実写版セーラームーンの『Act ZERO』『Special Act』もおそらく同様に、テレビシリーズ本編の終了後、あるいは本編と同時進行で、ほとんど途切れなく制作に入ったのだと思う。だからふつうだったら緊張感は持続して、現場の空気は一緒のはずだ。スタッフ・キャストのメンバーもほとんど入れ替わっていないしね。ところが実際に作品を観較べると、まるで印象が違う。本編のテンションの高さに対して、『Special Act』の方は、なんだかゆる〜い空気が流れている。オーロラさんが指摘しているのは、そのことだ。
ちょっと不思議な気もするが、考えてみれば分からないでもない。第3クール後半くらいからの実写版は、作り手側の緊張感が画面にもみなぎっていた。物語が予断を許さない展開になるにつれて、スタッフ・キャストの「何だかよく分からないが、すごい作品になってきたぞ」という当惑と「とにかくこうなったら、このテンションで最後まで突っ走ろう」という昂揚感が、画面を通じてびんびん伝わってくるようだった。それがずーっとFinal Actまで続いて、お話はひとまず完結した。みんな一気にほーっとして、緊張が緩んだわけである。で、ほとんど間をおかずに「さあ次はSpecial Actです」と言われても、それはもう、燃え尽き症候群というか、モチベーションというものが、ねえ。
そういう理解もあって、私は『Special Act』の「気の抜け方」「散漫さ」については、最初から寛容だった。つまりこれはエキジビジョンである。うちの妻と娘はフィギュア・スケートの世界戦の中継をよく観るが、あれって、ショートプログラム、フリーと、緊張感あふれる演技が2日間続いて、勝敗というか順位が決まると、翌日には必ずエキジビジョンがありますね。そしてそれもだいたいテレビ中継される。選手たちのたたずまいには、もう前日までの、真剣勝負ならではの固唾を呑むような張り詰めた緊張感はない。でもエキジビジョンって、気が抜けて散漫でつまんないですか?私は『Special Act』を「散漫だからつまらない」とする意見に、そう反問したいわけだ。それはそういうものとして、観ている方も肩の力を抜いて、のんびり楽しもうじゃありませんか。ちょっと値段は高いけど。
さらに言えば、『Special Act』の沢井美優の芝居は、本編では味わえない微妙な陰翳に満ちていて、これはこれで貴重だ。ここには確かに、シリーズ終盤のあの息苦しいほどの緊迫感はみじんもない。が、だからといって、演技がおそろかになっているというわけでもなくて、沢井美優は丁寧に、誠実に、うさぎ役を務めている。そして、まるでカーテンコールに応えるように、本編でうさぎが見せたあのときの表情や、あのときのセリフといった名場面の数々を再現してくれている。それは、我々ファンへのエキジビジョン的なサービスである一方、自分が一年かけて作り上げた「月野うさぎ」というキャラクターを、みずからの手で封印する儀式でもあるようだ。
彼女は、これまで応援してくれた人たちのために、ここで最後のうさぎ役を演じつつ、名残を惜しみながら自分自身、うさぎに心からの別れを告げているのだ。だからよくよく観ると『Special Act』の沢井美優の演技は、初めから最後まで、卒業式に答辞を読み上げる卒業生代表の声みたいに、繊細にふるえている。そして作品全体を包んでいるのも、妙に白けて、ゆるみきっていて、なのに切ない、卒業式の日の朝の教室の空気なのだ。ギャグはいっぱい詰め込まれているし、うさぎは一見、初期の明るい元気娘にリセットされているように見えるけれども、『Special Act』というエピソードの基本トーンは、そういう哀切さにあると私は思う。

3. 出番を奪われた大阪なる


さて、オープニングタイトルだ。主題歌(と言うか「信じるチカラ」)が流れる間、うさぎと衛は、衣装合わせや結婚式の買い物を兼ねたデートで、あちこちの店を仲良くまわっている。いよいよ式を来週に控え、元気印のうさぎはいっそうハイになっている「結婚式ね、亜美ちゃんも美奈子ちゃんも間に合うって。仕事キャンセルしたりしてくれたみたい。レイちゃんとまこちゃんは大丈夫だし、みんな揃うの久しぶりですっごい楽しみ!早く会いたいなあ」。一方、衛の方は対照的に、適当に相づちをうちながら上の空。いやぁ分かりますねその気持ち。
主題歌が終わると、舞台はオープンカフェに移る。日比谷茶廊。Act.33で衛にマフラーをあげた思い出のカフェだ。うさぎはなおも結婚式の打ち合わせで、いろいろ語りかける。なのに、どうにも乗り気でない衛。

うさぎ「見てみてこのカード可愛くない?でね、これをね、つけて、それでね、来てくれた人、ひとりひとりにメッセージ書いて渡すの。あと、小さいプレゼントと、お花もつけたいかな。それを、ぜんぶ二人で準備したいから、明日からやらないと。人にやってもらったんじゃ心がこもってないし。あと、パーティーの時の音楽は…ねえ、聞いてる?」
 衛 「ん?ああ、全部おまえの好きにしていいよ」
うさぎ「そうじゃなくて、二人でやらなきゃ」
 衛 「…お前なあ、結婚式するために結婚するんじゃないぞ」
うさぎ「…そんなの分かってるよ」

「パーティーの時の音楽は…」というその「パーティー」とは、披露宴の話かな。でもうさぎと衛は、ラストでチャペルウエディングを終えると、そのままバイクに乗ってハネムーンに出発だ。式の後に披露宴をやった形跡はない。ひょっとすると前日にパーティーをやったのかなあ。それとも、この時点ではパーティーをやるつもりだったのが、喧嘩したり黒木ミオが現れたり、色々あったせいで、結局おじゃんになってしまった、と理解すればいいのか。これはよく分からない。
ともかく、この会話の続きは画面では映されないが、結局、衛があまりにも投げやりというか、やる気が感じられないので、腹を立てたうさぎは、おそらく一方的に、結婚式の延期を宣言してしまう。アメリカの亜美も京都のレイもロンドンの美奈子も、万障繰り合わせて出席してくれるというのに、はた迷惑な話である。で、その結婚延期宣言と、衛にたいするグチの聞き役をするのがまことだ。う〜ん、まことか。まあドラマの都合上しょうがないんだけど、個人的には、ここは大阪なるの出番だったと思う。
第26回】の「5. ハードボイルド、OKだ」とか、再放送中に何度か書いているはずだが、なるちゃんはAct.15で、まだうさぎ自身も自覚していなかった衛への恋心を見抜いて、衛とのデートをセッティングしている。この人の理解とサポートなしには、うさぎと衛がくっつくことはなかった。披露宴で新婦側の友人を代表してスピーチするのは、なるのはずだ。でもセーラー戦士でないばっかりに、Act.17あたりを境に、うさぎの恋の悩みの相談相手役をまことにゆずることになる。
いやまことも頑張った。うさぎのためなら行動を惜しまなかった。元基君から陽菜の情報を聞き出したり、大地君とひかりちゃん、衛とうさぎのダブルデートを、顔を隠して追跡したりもした。衛がロンドンに行っちゃう前に一目合わせようと、セーラースタータンバリンで空港へ行くタクシーを停めてうさぎを連れて行き、降りるときは領収書を取った。でも残念ながらこの子のやることは、いまいち実を結ばない。だから今回の「結婚式延期」ひいては「結婚やめる」宣言まで発展する騒動も、最初の段階で大阪なるが介入していれば、あるいはこれほどこじれなかったのではないだろうか。
なんてマジメに考えてもしょうがないやね。ともかくこの話、ここで衛との仲を取りもつ役割をなるちゃんに振れば、セーラームーンでも何でもない、普通のコメディドラマとして展開することもできるようになっているし、本当はその方が自然なんだよね。私としてはそういうのもちょっと見たかった気もする。あ、でもひょっとして小林先生が『Act. ZERO』をああいう話にしたのは、そのせいかも知れない。『Act. ZERO』は、もっと美奈子メインの展開にしても良かったのに、そうしなかったのは、うさぎを出すためというよりも、『Special Act』であまり出せなかったうさぎの親友のなるちゃんを、大々的に話に絡めるためだったのかな。なんてね。
というわけで、そろそろ寝ないと新番組『仮面ライダーキバ』を見そびれるので、今日はこのくらいで。『Special Act』レビューはまだまだ続く。いつまで続くんだろう。